NY市場のドル円相場は、28日午前1時過ぎ(日本時間)152円台に下落した。日本時間0時に公表された1月調査の米消費者信頼感指数が、予想を大きく下回ったことでドル売りを誘発したもの。3年余りにわたり行き過ぎた円安に苦しんできた日本政府が、ようやく米国との協調対応を通じて打開策を模索し始めた可能性がある。
複数の報道によると、ニューヨーク連銀は先週、米財務省の代理として円安阻止に向けたレートチェックを実施したとされる。円安が、政治問題へと発展している現在、日米当局の連携があったとしても不思議はない状況だ。
一方、円相場には「5年周期説」という経験則がある。年間の騰落で見た場合、上昇・下落が4~5年おきに入れ替わるというものだ。例えば2016~20年は5年連続上げた後、21~24年は4年連続で下げた。相場は4~5年かけてトレンドが続き、行き過ぎたところで反転する――。円相場を俯瞰すると、大きく蛇行している。25年は5年ぶりに上昇した。経験則を踏まえると、25年から5年程度の円高局面が始まったのでないか、という見方もある。
『ブルームバーグ』(1月27日付)は、「円安対応で新時代の幕開け、ようやく創造的になった日本」と題する記事を掲載した。
日本が少なくともメッセージの発信において、円高誘導のために米国と政策協調を図っているとすれば、より創造的な新時代の幕開けと言える。長年、全ての責任は日本銀行にあるかのように扱われてきた。
(1)「景気全体への影響を度外視してでも、円を上昇軌道に乗せるためには利上げが必要だという論理だった。しかし現実には、円は日本の金利がマイナスだったころよりも弱く、一連の利上げも効果を発揮していない。日米金利差と為替の相関は、一時的な現象に過ぎなかったようだ。一方、単独介入は効果的ではあるものの、限界のある手段だ。急激な変動に歯止めをかける一定の役割は果たすが、恒久的な流れの転換には新たなストーリーが必要となる。米国との協調対応はその契機となり得るが、それ以外に日本が円高を実現する方法はあるのだろうか」
日米金利差と為替の関係は、日本の実質金利がマイナス状況で、円相場への利上げ効果は無視されている。こうなると、米国との協調対応が神通力を発揮することになるが、それ以外に、日本が円高を実現する方法を模索しなければならない。
(2)「明白な選択肢の一つは、かつて円安を招いた手法を巻き戻すことだ。巨大な年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2010年代に進めた海外資産へのシフトは、日銀の大規模緩和とともに円安を加速させた。高市早苗首相は、長期国債利回りが魅力を増している現状を踏まえ、GPIFが国内投資を拡大すべきだと示唆することもできるだろう。他の年金基金や投資家はGPIFに追随する傾向があり、そのような示唆だけでも円高要因となり得る」
日本の年金資産の海外運用から、日本へ戻すことも有力な手段だ。首相が、その旨を語るだけで投機筋を震え上がらせるからだ。
(3)「あるいは、日本の債務削減という手もある。米財務省の元エコノミストで、現在は米外交問題評議会(CFR)のシニアフェロー(国際経済政策担当)であるブラッド・セッツァー氏は、日本が外貨準備のドルを一部売却することで利益を確定し、その資金で割安な超長期国債を買い戻すという案を提示している(ただし米国は、自国の長期金利上昇につながりかねないこの動きを警戒するだろう)。企業が多額の海外収益を本国に還流させるための一時的な税制優遇措置はどうだろうか。その資金が賃上げや国内投資に充てられることを条件とすれば、なおさら効果的だ」
日本が外貨準備のドルを一部売却して、その資金で割安な超長期国債を買い戻す案も投機筋を追詰める手段になる。円安は、日本の富を海外へ垂れ流しているに等しいからだ。正確に言えば、交易条件悪化による実質所得の海外流出である。円安歓迎論者は、ある意味「肩身が狭い」はずだ。
(4)「サプライズの要素も強力な武器となる。今年まで日本の介入示唆は慎重で予告的なものだった。しかし、1998年に円の防衛に米国の力を貸した当時のルービン米財務長官は、衝撃の価値を重視していた。同氏は、この介入を成功と評価したが、それは日本経済や銀行危機への対応が一夜にして変わったからではなく、シグナルの効果によるものだった。2003年の著書『ルービン回顧録(原題:不確実な世界の中で)』で同氏は、「外国為替市場の心理は明らかに影響を受けた。この種の行動を成功させるには、市場を驚かせることが鍵となり得る」と記している」
投機集団を懲らしめるには、驚かすことだ。今の日銀には、そういう芸当ができないのだ。総裁の記者会見は、余りにも学会発表のトーンであり、「海千山千」の投機筋につけ込まれている。惜しいことだ。
(5)「トレーダーらが一国の見通しを根本から見直すと期待されているわけではない。しかし当局は、彼らの思考様式を変えることならできるかもしれない。日本がもはや単独で行動していないという見通しは、市場心理の転換に影響を与え得る。米国の関与をちらつかせるだけで、当局は目的を達成した可能性もある。本稿執筆時点の東京時間26日、トレーダーらは円売りに慎重な姿勢を見せていた。サプライズ効果は功を奏したのかもしれない。しかし、今後さらに創造的な解決策が求められる局面が訪れる可能性は十分にある」
これだけ、円安相場に手こずっているのは、先に掲げた円相場「5年周期説」が、いよいよ始まる前の投機筋の「抵抗」とも読めるのだ。慣性の法則で、「円安が当然」という思い込みに陥っているのであろう。




