勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年02月

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    外交は、タヌキとキツネの化かし合いという説がある。相手を欺いて国益を守るという見方である。米国トランプ大統領が3月、訪中する際に秋の中間選挙を有利に取り運ぶべく、日本を裏切るという懸念が表明されている。この説に従えば、日米関係は米国産大豆などを大量に中国へ輸出する「身代わり」となるという話であろう。

     

    日米関係は、そんな薄っぺらなものなのか。米国は、日本の協力なしに製造業=国防力を維持できない瀬戸際にある。次世代技術は、すべて日本が握っているだけに、日本を裏切れない事情がある。日本の協力なしに、米国の覇権は成り立たないのだ。この現実を直視すべきであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月28日付)は、「『高市外交』の急所、米国がハシゴを外すとき ベネズエラ攻撃の含意」と題する記事を掲載した。

     

    対中外交を考える際、日本の外交当局は米国にハシゴを外されるリスクを常に警戒する。「2026年は特に注意が要る」という。トランプ米大統領が11月の中間選挙に向けて中国と何らかの取引をする可能性が高いためだ。

     

    (1)「米国外交の歴史を踏まえれば、問題の大きさがわかる。米国はかつて欧州の紛争と距離を置き、自らが位置する西半球の安定を守ればよいという「モンロー主義」をとってきた。第2次世界大戦後に「世界の警察官」となったのはなぜか。日本にハワイの真珠湾を攻撃されたためだ。西半球だけでは不十分で、東半球も守らなければ危ないとの認識になった」

     

    米国が、モンロー主義を捨てたのは19世紀に入ってからだ。「大陸国家」から「海洋国家」として発展すべく、太平洋へも進出した。これが、世界覇権樹立へつながったのである。このパラグラフの記述は、米国の歴史を正確に捉えていない。

     

    (2)「米国に警察官を務める国力がなくなり、トランプ氏は「ドンロー主義」を掲げて再び西半球を重視するようになった。1月のベネズエラ攻撃は、その最たるものだ。石油利権や麻薬対策が理由に挙がるが、西半球の反米勢力を排除する狙いがあったのは間違いない。10年代半ば、ベネズエラが債務返済のためカリブ海の小島を中国に譲渡するとの説が流れた。隣の島にはベネズエラ軍の基地がある軍事的に重要な地域だった。14年に中国外務省の報道官が記者会見で否定したが、その後も噂は流れた」

     

    ドンロー主義は、言葉の綾である。足下の西半球から中ロ勢力を一掃するという宣言であって、東半球を捨てるという意味ではない。米国は、世界覇権の「味」を十分に堪能している。この地位を捨てて、西半球に閉じ籠もる意思など100%ゼロである。米国の国力不足は、日本の技術力が補う形になっている。レアアースの「重要鉱物特恵市場」のアイデアや資金・技術・資源(南鳥島のレアアース採掘)は、すべて日本がお膳立てしているのだ。この日本を裏切ることは、米国の世界覇権コストを極めて高くするに違いない。

     

    (3)「米国が西半球重視に戻るなら、東半球はどうなるか。最大の競争相手である中国との接近をめざすのではとの疑念が強まる。トランプ氏は3月末からの訪中を手始めに、年内に習近平国家主席と最大4回会談するとされる。商談と引き換えに何をディール(取引)するか。習氏は台湾への支援を控えるよう要求するだろう。トランプ氏が、経済だけでなく安全保障にも踏み込んで譲歩するとの懸念は多い」

     

    中国経済は現在、気息奄々の状態である。米国経済は、AI(人工知能)による生産性向上で、スタッグフレーションにならず予想外に健闘している。この状態で、米中どちらが経済的に譲歩するのか。トランプ氏が、安全保障という世界覇権に関わる問題で妥協するとは考えがたい。

     

    (4)「米国がアジアの安保から手を引いたとき、日本の選択肢は限られる。極論として安保の専門家が挙げるのは日本も核武装する中国の勢力圏に入る――の二択だ。その間に韓国やフィリピンなどと集団安全保障の枠組みをつくる第3の道がある。いずれも実現のハードルは高い。米国が1月に発表した国家防衛戦略は台湾への明示的な言及を避けた。一方で沖縄から台湾を結ぶ「第1列島線」の防衛という表現で中国抑止も掲げた。アジアから直ちに撤退するわけではない。トランプ氏は西半球ではないイランへの攻撃もちらつかせる」

     

    米国が、アジアの安保から手を引くことは、世界覇権の座を降りることだ。基軸通貨ドルの持つ醍醐味も手放すことになる。日米関係は今後、双方の事情から一層の密着が進まざるを得ない客観情勢が醸成されている。この事実を見落とした「日本切り捨て論」は、余りにも皮相的と言うほかない。

     

    (5)「社会不安を抱える中国の国力が、伸び続けるとは限らない。それでも安保の要諦は楽観論よりワーストシナリオに備えることだ。高市早苗首相は3月19日にトランプ氏と会談する。主目的は米国をつなぎとめること。日中対立に巻き込まれたくないのが、米国の本音だ。過去の日中対立局面でも日本を支持しつつ「これ以上の対立は望まない」と水面下で伝えていた」

     

    外交上、ワーストシナリオを持つことは必要である。しかし、中国経済が不動産バブル崩壊後遺症で、これから「失われた40年」へ突入するであろうという冷静な視点も必要だ。中国を過大評価することは避けるべきで、「等身大」の中国を見定める必要があろう。習氏による人民解放軍最高幹部粛清は、中国弱体化のシグナルとも読めるのだ。米国は、こういう中国を見透かしている。

     

     

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    中国商務省は24日、三菱造船など日本の20企業・団体に対する軍民両用(デュアルユース)品の輸出を禁止した。対象には、中国との取引がほとんどない企業や団体も含まれている。今後、対象が拡大する余地はあるものの、現時点で範囲は限定的だ。専門家は、通常の貿易や経済交流への影響が大きくないとみている。線香花火程度か。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月27日付)は、「中国の対日輸出規制『苦し紛れの威圧』 神田外語大学・興梠一郎教授」と題する記事を掲載した。中国側の狙いや今後の日本経済への影響などについて、神田外語大の興梠一郎教授へのインタビューである。

     

    中国は1月にデュアルユース品の対日輸出規制を強化すると発表した。そこではあえて対象企業を明示せず、思うような甚大な影響は与えることができなかった。そこで春節(旧正月)休暇明けに新たな対抗措置として対象リストを公表したのだろう。

     

    (1)「中国商務省が発表した輸出規制の対象は、20企業・団体に限られた。中国との取引がほとんどない企業や団体も含まれる。今後、対象が拡大する余地はあるものの、現時点で範囲は限定的だ。通常の貿易や経済交流への影響は大きくないとみる。中国には自国経済への打撃が大きい措置は避けたいという思惑がある。国内経済の低迷が続くなか、日本との経済関係は欠かせない。中国商務省は少数の日本企業のみが対象だと強調していたが、他の日本企業に過度な心配を与えたくないとの考えがにじむ。今回の措置は苦し紛れの威圧とみるべきだ」

     

    中国は、国内経済が低迷している中で、日本との経済関係は欠かせない。それだけに、自国のメンツが立つ程度の「弾」を打っている感じだ。国内で、反日デモを組織できないのは、反政府デモへ切り替わることを恐れているからであろう。

     

    (2)「習近平国家主席は、もともと人権問題や台湾問題を巡って発言してきた高市早苗首相を警戒していた。それでも、2025年10月に高市氏との首脳会談に踏み切った。今回の対立の発端は、中国の薛剣・駐大阪総領事による過激なSNSへの投稿だが、高市氏の台湾を巡る発言が習氏に伝わると事態収拾は困難となった。台湾統一を目標にする習氏の警戒感を決定づける形となり、中国指導部は強硬姿勢を強めた。高市氏の発言の撤回を求め続け、歯止めが利かなくなっている」

     

    中国は、日本へ威圧を掛けることで、確実に信頼度を落としている。日本は、この裏でレアアース対策を鉱山国と進めているのだ。製錬技術(化学的精錬法)を日本が提供するもの。日本の政府開発援助の実行機関、国際協力機構(JICA)は2月25日、マレーシアに対し重要鉱物の資源開発で、技術支援を開始すると発表した。中国が騒げば騒ぐほど、日本へは「同情」が集まるという「好循環」である。

     

    (3)「中国に残された対抗手段は限られる。国内不況もあり、レアアース(希土類)の全面的な輸出規制に踏み切るハードルは高い。中国産レアアースをサプライチェーン(供給網)から切り離す動きが各国で広がれば、中国の優位性が揺らぐ可能性がある。日本のこれまでの対応は適切だったといえる。報復措置などで過度に反応することなく、冷静さを保ちながら反論を重ねてきた。その結果、中国が威圧措置をとっていると見なされている。日本が冷静な対応を維持すれば中国は態度を軟化させざるを得なくなり、時間の経過とともに関係が元に戻っていく可能性がある」

     

    米国を軸とする「重要鉱物特恵市場」(8月稼働)は、中国から離反した鉱山国が参加している。レアアース生産(製品換算)では、約半分が前記の特恵市場へ参加する。中国の「レアアース覇権」は揺れるはずだ。さらに、30年には南鳥島のレアアースが、本格的商業生産へ入る。中国の独占状態は完全に崩れるに違いない。こういう事態の到来を忘れて、日本叩きに狂奔している姿は、なんとも言えない「哀れみ」を感じさせるのだ。 

     

     

     

     

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    中国企業の業績不振が長引いている。2025年12月期は約5500社の上場企業のうち、過去最多の1443社が最終赤字となった模様だ。4社に1社にあたる。バブル崩壊後の調整が続く不動産に加え、家具やスーパー、旅行など個人消費関連が不振だった。一方、中国政府の後押しを受ける半導体、レアアース(希土類)など一部業種は好調で、二極化が鮮明だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月27日付)は、「中国の赤字4社に1社 25年過去最多、個人消費関連が不振」と題する記事を掲載した。

     

    中国の情報会社DZHのデータをもとに、上海や深圳など中国本土市場に上場する約2900社が開示した業績見込みを日本経済新聞が集計した。赤字企業の数は24年12月期実績(1364社)から6%増えた。上場企業全体に占める比率は26%と2000年以降でもっとも高い。日本企業(東証プライム、親子上場の子会社など除く)の25412月期実績では最終赤字の比率は2%台にとどまる。

     

    (1)「中国の赤字企業の比率は20年以降、右肩上がりで上昇している。不動産への融資規制に加え、消費喚起よりも製造業の技術蓄積と増産を優先する習近平指導部の政策が背景にあり、景気が好転する兆しはなおうかがえない。マンション大手の万科企業は最終損益が820億元(約1兆8000億円)の赤字になった。不動産は、上場100社の5割を超す58社が最終赤字のもようだ。販売価格の下落が続き底入れが見通せる状況からは遠い」

     

    不動産バブル崩壊後遺症は、短期間で終息するはずがない。日本のバブル崩壊後遺症が、その適例である。バブル後遺症対策は、ほとんど手つかず状態である。これが、個人消費を押し下げている。

     

    (2)「個人消費関連の収益力も総じて落ち込んでいる。家具販売の紅星美凱龍家居集団は、運営するモールの減損処理が響き、最終損益が200億元規模の赤字になった。スーパーの永輝超市も380店舗の閉鎖に伴う一時費用がかさみ20億元超の最終赤字を計上した。菓子の上海来伊份や観光の西安旅遊も振るわない。中国は23日まで春節(旧正月)の大型休暇だった。中国政府は景気刺激のため法定休日を9日間と前年より1日延ばし、春節前後の期間を含めて延べ95億人が移動するとみられた。もっとも、所得が伸び悩むなか節約志向は根強く、景気浮揚には力不足との見方が多い」

     

    春節前後の期間を含め、延べ95億人が移動したというが、一人当たり消費額は減っているという。根本問題(過剰住宅在庫)が、未解決である以上、景気浮揚はなり得ない。

     

    (3)「ソーラーパネル大手の隆基緑能科技(ロンジソーラー)、晶科能源(ジンコソーラー)はともに60億元前後の最終赤字になった。供給過剰は明らかだが、再生可能エネルギーの普及を目指す習指導部の意向もあり、設備廃棄は進んでいないようだ。太陽光と同様、過当競争に陥った自動車は競争力格差が広がっている。広州汽車集団が最終赤字となった一方、上海汽車集団は純利益が100億元程度と前の期比で6倍になった。電気自動車(EV)の比亜迪(BYD)は業績見通しを示していない」

     

    BYDは、これまで長期支払手形で資金繰りを助けてきた。昨年6月以降は、当局の「60日限度令」で苦しんでいる。過去の手形短縮で汲々になっているからだ。それでも、海外では積極的な設備投資を続けている。業績見通しを発表できないほど、資金繰りが窮迫しているのであろう。

     

    (4)「活況なのは半導体とレアアースだ。半導体製造装置の中微半導体設備(AMEC)の純利益が20億元超と前の期に比べ3割増えたほか、人工知能(AI)半導体の中科寒武紀科技(カンブリコン)は最終黒字に転換したようだ。「中国版エヌビディア」とはやされる摩爾線程智能科技(ムーア・スレッド)は最終赤字が4割縮小した。レアアースでは、最大手の中国北方稀土集団高科技の純利益が少なくとも21億元と2.2倍になった。中国の輸出規制を背景にレアアースの国際価格は大きく上昇しており、関連企業の業績を後押ししているもようだ。習指導部の注力分野の濃淡がそのまま業種別の勢いとなって表れている」

     

    半導体とレアアースは、数少ない好況部門だ。補助金をたっぷりと受けているが、これもいずれ過剰生産で停滞局面へ落込むであろう。補助金で支えられる景況は、本物でないのだ。過去は、この繰返しである。

     

     

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    政府は27日、最先端半導体の量産をめざすラピダスへの1000億円の出資を発表した。議決権は筆頭株主となる最低限度の11.%とした。経営への関与は最小限に抑え、民間主導で経営できるようにする。外資からの買収リスクに備え、重要事項に拒否権を持つ「黄金株」も持つ。民間32社から計1676億円の出資を受けたと発表した。調達額は計画した1300億円を上回った。2025年の試作成功に続いて関門をクリアし、官民挙げての支援が一歩前進した。

     

    ラピダスは、技術開発が国際的にも「異例の速さ」として注目されている。米国商務省や欧州の技術系メディアからも、前向きな評価が出ているほどだ。「灯台下暗し」で、日本国内では、まだまだ正当な評価がされていない。一般メディア報道でも最後は、「リスクを伴う」と締めくくっているほど。必ず、逃げ場を作る記事になっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月27日付)は、「ラピダス、官民支援前進も『まだ1合目』 民間32社から1676億円出資」と題する記事を掲載した。

     

    ラピダスの小池淳義社長は、27日都内で開いた記者会見で「経営のスピード感を理解いただき、期待していた以上の出資をいただけた」と語った。進捗については「2ナノ量産は非常に難しく、まだ1合目の気持ちだ」と話した。

     

    (1)「ラピダスに出資する企業は既存の8社から32社に増えた。個別企業の出資額は開示しなかったものの、民間では計210億円出資するソフトバンクとソニーグループが最大の株主となったもようだ。富士通も新規で200億円出資した。NTTは計110億円、トヨタ自動車は計50億円規模とみられる。新規出資はホンダキヤノン古河電気工業など24社。富士フイルムホールディングスは同日、50億円出資したと公表した。ラピダスの物流業務などを担う日本通運や長瀬産業のほか、北海道電力北洋銀行も出資する。ラピダスに2ナノの設計技術を提供する米IBMも日本法人を通じて出資した」

     

    民間企業の出資は当初、出足が鈍かった。経産省の係官まで動員して説得に当ったという。メディアが悪い情報ばかり流すから、企業は慎重になったのだろう。

     

    (2)「出資額が目標を超えたのは、ラピダスが着実に技術的な成果を示してきたことが大きい。25年4月に工場を稼働させ、同年7月には2ナノの半導体素子の動作を確認した。12月には人工知能(AI)半導体の組み立て工程で使う主要部材を開発し公表した。新規出資を決めたある素材メーカーの幹部は「現時点ではおおむね目標を順調にクリアし成果を示している」と評価する」

     

    ラピダスは、相次いで技術開発に成功したニュースが流れるようになって、ようやく「認知」されるようになった。財務省筋の悪宣伝も足を引っ張っていた。

     

    (3)「ラピダスは26日までに政府からも情報処理推進機構(IPA)を通じて1000億円の出資を受けた。ラピダスは2ナノ半導体の量産や次世代の1.4ナノ品の開発のために31年度までに7兆円超の資金が必要と試算している。経済産業省は補助金や出資によって累計3兆円規模の支援を決めている。残る約4兆円の調達目標のうち2兆円を政府の債務保証の下でメガバンク3行から融資を受ける方針だ。今後も残る8000億円強の民間出資に加え、自己資金などで1兆円にめどをつける必要がある。

     

    政府出資も累計3兆円規模の支援を決めている。政府出資は、ラピダスの株式公開後に回収も可能だ。

     

    (4)「ラピダスの村上敦子最高財務責任者(CFO)は、26年度以降の資金調達について「国内外の投資家などからの調達を考えていく」と述べた。投資ファンドなどを念頭に置いているとみられる。「(事業戦略上の提携などを目的とするような)外資企業からの出資受け入れは考えていない」とも話した」

     

    株式公開は、31年頃とされている。「外資企業からの出資受け入れない」とは、IBMの立場を守る理由であろう。

     

    (5)「27年度とする量産開始目標まで1年あまりに迫り、量産技術の確立と並ぶ課題は顧客獲得だ。ラピダスは顧客が設計した半導体を受託生産するビジネスモデルを取る。今回出資を決めた株主の間でも2ナノを必要とする企業は限られ、温度差がある。小池社長は海外を中心にAI半導体メーカーやデータセンター企業など60社以上と交渉中だと明らかにした。このうち10社程度とは量産に向け概算金額の見積もりを出しているという」

     

    小池社長は、「60社以上と議論し、試作を繰り返している。2026年後半になれば顧客側から何かしら発表が出てくるだろう。27年以降はさらに顧客数が増えると見ている。大半を占めているのが海外企業で、高性能コンピューティング(HPC)や人工知能(AI)半導体、さらにロボティクス関連が多い」としている。


    国内企業は様子見だが、海外企業が発注するようになれば、慌て出すに違いない。ロボティクスは、人型ロボットが有力候補である。内閣府は、2026年春に人型ロボット研究新設を構想しており、国家レベルでの集中投資が始まる見込みだ。日本の強みは、人型ロボットの「心臓部」を握ることである。

     

    人型ロボットの市場規模は、2030年までに2.3兆円、出荷台数は460万台に達すると予測されている。テスラの「Optimus」や中国の「Unitree G1」などが先行する中、日本は「高性能・高信頼の身体部品」と「人との共生設計」で差別化を図っている。世界覇権へ挑戦する。

     

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    ASEAN(東南アジア諸国連合)経済は、急速に停滞感を強めている。米国の高関税で対米輸出に陰りが出る一方、中国からは安値の工業製品が洪水のごとく流入し、ASEANの産業基盤へ打撃を与えている。

     

    こういう手詰まり感の中で、日本が2023年に始めた「重要資源25ヶ国」事業に、インドネシア・ベトナム・マレーシア・フィリピン・タイの5ヶ国が入っているのだ。これら諸国は、この2月に米国が音頭を取る「重要鉱物特恵市場」(8月稼働)へ参加した。日本の化学的精錬法によって自前の精錬から製品までの道が開けた。さらに、関連産業においては米国内で事業展開できるメリットも約束されているので今後、大きく展望が開けてきた。

     

    『日本経済新聞』(2月27日付)は、「ASEANは自らを改革せよ」と題する投稿を掲載した。筆者は、IDEASマレーシアエコノミストのドリス・リュー氏である。

     

    東南アジアは重要な岐路に立っている。同地域の経済は低・中コストの輸出志向型製造業を基盤に世界的な需要を支えながら成長してきた。しかしそのエンジンは今、失速しつつある。保護主義の高まり、繰り返される貿易戦争、分断化する地政学的秩序が、東南アジア諸国連合(ASEAN)の構造的な脆弱性を露呈させている。

     

    (1)「ASEANの二大市場である米国と中国が輸出の見通しを鈍らせている。米国は高関税により障壁が高まり、中国の産業過剰生産能力が安価な製品を地域市場にあふれさせ、現地産業を脅かしている。ASEANは変化する国際情勢に適応するため、産業政策の再考と経済基盤の再構築が急務だ」

     

    ASEAN経済は、25年に入って状況が急変している。米国の高関税による対米輸出減と中国からのダンピングよる輸出攻勢である。このままでは、「中所得国の罠」は確実で、戦前の評価であった「停滞するアジア」へ逆戻りしかねない状況である。

     

    (2)「第一に、ASEANはすべての産業において低付加価値生産から高付加価値生産へ移行しなければならない。製造業の多くは低、中程度の付加価値の組み立て作業に集中している。半導体産業は集積回路設計、高度なパッケージング、研究開発といった上流工程へ移行しなければ、収益が減少する構造に閉じ込められてしまう」

     

    ASEANは、レアアースなど重要鉱物の産出国である。これまでは、中国へ鉱石を売ってきたが、日本の化学的精錬法提供で「売鉱」から一転して、自前での精錬が可能になった。上記5ヶ国が、製品までの一貫生産体制を築けることは朗報である。レアアース生産国になれば、半導体などの産業高度化も夢ではなくなるだけに、日本への期待感が強まっている。日本は、レアアース供給国が増えるというメリットを受けられる。

     

    85年前、日本は「南方資源」占領目的で太平洋戦争を始める愚を犯した。現在は、科学力(化学的精錬法)によって、ウイン・ウインの関係で双方が利益を得られる時代になった。改めて、科学の力が平和を切り開くことへの認識を深まるであろう。

     

    (3)「農業はより高い所得と長期的な食料安全保障を確保するために、バイオテクノロジー、農業技術、スマート農業への転換が不可欠だ。ハイテク農業は小規模農家を高所得層へと変革させる。サービス業は観光、小売、ホスピタリティといった低生産性活動に依存している。次の成長をけん引するためには、知識集約型のサービスへ軸足を移す必要がある。労働者を高度な役割へ再訓練し、地域的なデジタル統合と越境サービスの深化も図らねばならない」

     

    工業化は一点突破で道が開ければ、それに付随して産業高度化が進むものである。バイオテクノロジー、農業技術、スマート農業への転換が可能になろう。

     

    (4)「第二に、ASEANは技術導入を加速させる必要がある。中小企業や国有企業も自動化、デジタルツール、人工知能(AI)アプリケーションを導入し効率性を高めなければならない。企業がサプライチェーン、金融取引、物流を同時にデジタル化すると、生産性は相乗効果で飛躍的に向上する。第三に、ASEANの長期的な競争力は人的資本への投資と地域イノベーション・エコシステムの構築にかかっている。大規模なスキル向上・再教育プログラム、デジタル・グリーン経済のニーズに沿ったカリキュラム改革、国境を越えた研究開発協力が必要だ」

     

    このパラグラフは、ASEANの向かうべき理想図が説かれている。これらが現実化する道は、日本の提供する化学的精錬法によって切り拓かれるであろう。

     

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