8日の衆院選は、自民党が圧勝する勢いである。日本初の女性首相という「新鮮さ」も加わり、特に働く女性からの支持が圧倒的という。高市氏が出席する集会は、どこでも超満員だ。高市氏は、握手攻めになって指を痛めたと報じられているが、それほど高い人気を得ている。問題は、「積極的財政政策」が円安の引き金にならないかという、懸念である。そうなると、せっかくの「高市人気」が萎んで批判の対象になる。選挙後の経済政策によって、長期政権かどうかが決まるであろう。
『ロイター』(2月6日付)は、「高市首相人気の要因と課題 選挙後に待つ『ジレンマ』」と題する記事を掲載した。
高市早苗首相(自民党総裁)が8日投開票の衆議院選で大勝する公算が高まっている。報道各社は終盤情勢調査で自民の勢いが維持され、議席を大きく積み増す見通しだと伝えた。一昨年から大型選挙で連敗を喫してきた自民が支持を急回復している最大の要因は高市氏の人気によるものと言えそうだ。複数の関係者への取材から、高市氏が有権者に受け入れられる要因と今後の課題を探った。
(1)「衆院選が公示された1月27日、東京都のJR秋葉原駅前でマイクを握った高市氏の第一声は、「日本列島を強く豊かに」から始まった。奈良県のサラリーマン家庭で育ったこと、地盤や知名度もない中で32年前に国政に打って出たこと、3回目の挑戦でようやく首相の座をつかんだことなど、演説は自身の生い立ちをたどるように続く。歴代首相の訴えに比べれば、個人的な内容が前面に出過ぎていると感じられるかもしれない。
そこから高市氏は政策を畳みかける。「責任ある積極財政の肝は危機管理投資と成長投資だ」と口火を切り、「完全閉鎖型の植物工場」「次世代革新炉」「フュージョン(核融合)エネルギー」「サイバーセキュリティー」「特定の国に頼らないサプライチェーン(供給網)の構築」など、規模の大小を問わず具体策を列挙した。一国の首相の演説にしては各論に入り過ぎているとも見られかねない」
現場で、高市氏の演説が聞こえるような感じだ。
(2)「ただ、この演説に聴衆は熱狂した。「挑戦しない国に未来はありません」「皆様と一緒に未来をつくります。どうか力を貸してください。一緒に戦ってください」。高市氏が叫ぶと、演説会場は拍手に包まれた。「前回の衆院選と聴衆の反応が全然違う」と声を弾ませた候補者もいた。高市氏の政策に精通する政権幹部の一人は、「演説ではストーリーを伝えることを非常に重視している」と明かす。自身の政治家としての原点や抱いた問題意識を紹介した上で、自らの政策を実現するため挑戦を重ねて首相になり、議会で多数を獲得するため党幹部にも相談せず解散総選挙に打って出た「強い思い」につなげる。このストーリーが高市氏の演説に一貫して裏打ちされている。わかりやすいストーリーと、将来への希望を抱かせる言い回しが有権者に響いているという」
高石市は、聴衆の反応を得るツボを心得ている。元ニュースキャスターの経験が生きているのであろう。
(3)「ソーシャルメディア(SNS)での発信も力の源泉の一つになっているようだ。高市氏によるXでの配信の特徴は、その文面の長さにある。候補者の応援演説を紹介する投稿にも、細かい政策を長文で書き加える。最初は文章が長すぎて本当に読まれるのかと思ったが、これが若者を中心に響いている」と、前出の政権幹部は手ごたえをつかむ。政治家本人による発信に重きが置かれる時代背景もあり、「有権者はテレビや新聞ではなくSNSで情報を得る。国民民主党の玉木雄一郎代表も自身で政策を発信して支持を拡大した。高市氏も同じ手法だ」と指摘する」
SNSで、若者の心を掴んでいる。新しい時代の選挙戦術を身につけている。
(4)「実際、NHKの年代別政党支持率でも自民は全世代で1位を獲得し、18―29歳の31.8%、30代の32.5%が支持している。こうした若者層はこれまで国民民主や参政党を支持していた層とも重なる。政府関係者は「高市氏が自身を前面に出し『私でいいのかを決める選挙』にしたことで自民党から離れた保守層と現役世代を中心とした無党派層の支持が一気に集まった」と解説した」
高市氏は、自民党から離れた人たちを引き戻している。多党化といわれ始めた世評を覆している。
(5)「ただ、高市氏の本当の戦いはむしろ選挙後に始まるのかもしれない。自民が大勝すれば高市氏が掲げる政策への期待感はより高まることになる。実際、高市氏が消費減税を選挙公約に掲げたことをきっかけに、財政見通しへの懸念から円安・債券安が続いている。こうした地合いが長期化し、物価高や金利上昇による生活への悪影響がさらに深刻化すれば、有権者の熱狂に冷や水を浴びせかねない」
金融市場が、積極的財政政策をどう評価するかがポイントである。円安へシフトすれば、物価高へ拍車を掛けるからだ。
(6)「自民にとっては、「高市人気」を背景に選挙で大勝することは吉報だろう。ただ、政策実現への期待が高まれば高まるほど、高市氏は市場と米国のプレッシャーをより強く受けることになる、と前出の政府関係者は語った。「選挙後、高市氏は壮大なジレンマと戦うことになるだろう」と危惧する」
このまま円安が進めば、米国との間で摩擦が起る。高市氏は、米国との関係も目配りせざるをえなくなろう。高市氏の鬼門は、金融市場にありそうだ。




