勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年03月

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    トランプ米大統領の訪中を控え、ベッセント財務長官は中国側との今後の協議において、手腕が問われる要求を交渉のテーブルに乗せることを検討している。それは、中国に対し、ロシアのような米国の敵対国からの石油購入の削減を迫ることだ。ロシアのイラク侵攻を停戦させたい米国にとって、中国がロシア産原油を輸入していることは極めて遺憾だ。それだけに、なんとかして止めさせたいという要求である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月7日付)は、「米、石油購入が対中外交カード 『ロシア脱却』要求か」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領の訪中を控え、ベッセント財務長官は中国側との今後の協議において、手腕が問われる要求を交渉のテーブルに乗せることを検討している。それは中国に対し、ロシアのような米国の敵対国からの石油購入の削減を迫ることだ。

     

    1)「事情に詳しい関係者らによると、ベッセント氏はここ数日、米政府の元高官や企業幹部、政策アナリストと非公式会合を重ね、中国に(ロシア産の代替として)米国産の石油・天然ガス製品を購入させるべく継続している取り組みについて説明した。同氏は3月中旬にパリで予定されている中国の何立峰副首相との会談で、エネルギー問題を提起することを検討しているという。両氏はパリでの協議で、トランプ氏と中国の習近平国家主席による4月の首脳会談に向けた枠組みを固める計画だ」

     

    米国は、中国に対してロシア産の代替として、米国産の石油・天然ガス製品を購入する用に求めるという。これは、中国経済にとってコスト高を意味する、

     

    2)「米国が、ロシア産石油の購入削減を迫ることは、中国にとって過大な要求だ。中国は戦略的パートナーシップを結ぶ国から大幅な割引価格で石油を調達しているからだ。米国産石油ははるかに高価である上、中国が調達先からロシアを排除すれば、対ロシア関係を損なうと同時に、ウクライナ戦争におけるロシアの立場を弱めることにつながる。さらに、ベッセント氏は中国に対し、イラン産石油の購入削減を求めることも検討しているという。現在、イラン産石油の大部分は米国とイスラエルの攻撃を受けて供給が停止している。だが、米政府は供給が再開された場合に備え、中国側にイラン産石油への長期的な依存度を低減させるよう求める構えだ」

    米国のベネズエラとイラン攻撃の共通点は、中国の原油購入先である。中国は、人民元で安く購入してきた。米国は、ここへ照準を合わせている。中国は、果たして米国産原油を買うかどうか。

     

    3)「習氏もまた、トランプ氏との会談で独自の重要な要求を提示する見通しだ。習氏はトランプ氏に対し、台湾独立への反対姿勢をより鮮明にするよう迫る可能性がある。中国が自国領土の一部とみなす台湾の民主主義体制への信認を揺るがすことが狙いだ。関係者によると、ベッセント氏は一連の非公式会合で、米政府が米国産大豆やボーイング機の購入拡大に加え、レアアース(希土類)の輸出規制の緩和も中国側に求めていることをにじませ。レアアースは幅広い電子機器の製造に不可欠な素材だ」。

     

    中国は、米国へ台湾独立阻止を巡って何か狙っている。台湾孤立への布石である。トランプ氏から何を引出すか。日本へも影響する。

     

    4)「トランプ氏の新たな関税発動に対抗し、レアアースの流通を支配する中国は昨年、その供給を遮断した。自動車から戦闘機に至るあらゆる製品の製造でレアアースに依存する米メーカーは打撃を受けた。複数の米政府高官によると、米国が次回の交渉に臨むにあたり、昨年後半に韓国で合意した米中貿易戦争の「停戦協定」の順守状況が最大の関心事となっている。この協定で、中国は重要鉱物に対する世界的な輸出規制を1年間停止することに合意した」

     

    レアアースは、米国が重要鉱物特恵市場を8月稼働予定で進んでいる。WSJは、この動くについて十分に理解していないようだ。

     

    5)「中国は長年、米国の敵対国から供給される安価なエネルギーに依存してきた。2026年初めの時点で、中国の石油輸入総量の3分の1以上を、ロシアとイラン、および現在は供給が途絶えているベネズエラからの輸入が占めていた。一部の米企業トップは、米中首脳会談で達成すべき具体的な目標の特定が進んでいないことに懸念を表明している。また、第1次政権での首脳会談のように、トランプ氏に同行する経済使節団も準備していない」

     

    米国は、イラン問題で神経を集中させている。対中国問題は、やや準備不足という面がないか。日米首脳会談では、その点を補強する必要があろう。

     

     

     

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    日本政府は、国内で生産される半導体の売上高を2040年に40兆円まで増やす目標を立てる方針だ。人工知能(AI)やデータセンターの需要拡大に備え、最先端半導体の研究・開発拠点を整備する。国が方向性を示し、民間企業が投資しやすい環境をつくるものだ。

     

    英調査会社グローバルデータによると、世界のEV販売は30年に2776万台と25年に比べほぼ倍増する。米IDCによれば、半導体市場は30年に1兆2000億ドルと、25年の1.5倍になる見通しだ。EVの販売台数の伸びが、半導体市場の成長を上回る予測も出ており、将来は半導体の調達競争が激しくなると見込まれている。日本政府は、こうした急激な半導体需要増に備えて、日本企業が後手に回らないように、企業の設備投資を後押しする。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月7日付)は、「国産半導体の売上高目標『2040年に40兆円』 政府、最先端研究へ拠点」と題する記事を掲載した。

     

    政府は、10日にも日本成長戦略会議(議長・高市早苗首相)を開き、官民連携した「危機管理・成長投資」の行程表の素案を示す。半導体の売上高目標も盛り込む。今夏にまとめる日本成長戦略に反映する。20年時点で国産の半導体関連の売上高は5兆円だった。これまで30年に15兆円超の目標を掲げていた。今回はその10年後に25兆円ほど増やすと定める。

     

    (1)「世界の半導体市場は、20年の50兆円から35年には190兆円規模に拡大する見込みだ。AIの普及で膨大なデータを高速で処理できる半導体の需要が急増している。政府が重点支援するのはAIでロボットや機械を動かす「フィジカルAI」の基盤となる半導体だ。フィジカルAIは日本が強みを持つ。40年に世界市場で米中両国に並ぶ3割超のシェアを想定する」

     

    フィジカルAIは、ラピダスが開発途上である。生成AIは、クラウドAIによる中央処理だが、次世代は分散処理AI(フィジカルAI=現場AI)へ進化する見込みである。ラピダスが、この分野で最先端の位置にある。40年に世界市場で米中両国に並ぶ3割超のシェアを想定する、としている。これは、控え目のもので世界制覇の可能性が指摘されているほどだ。

     

    (2)「素案には、「最先端の半導体研究開発・設計拠点を整備していく」と記す。次世代の自動運転車などに使う半導体を安価で供給できるようにする構想がある。半導体工場の新設・拡張に必要な産業用地の取得支援や、水・電力などのインフラ整備も盛り込む。補助金を積むほか規制改革を想定する。今国会には産業競争力強化法などの改正案を提出した。半導体を置くデータセンターを誘致しやすくするための工業用水に関する規制を緩和する」

     

    ラピダスの強みは,世界の半導体研究機関と提携していることだ。その意味では、世界最先端の研究成果を取り入れられるメリットを享受している。この事実は、意外に知られていない点だ。次世代の自動運転車などに使う半導体が、安価で供給できるようになるのは、ラピダスがフィジカルAIをCPU(中央演算装置)にアクセラレーターを接続するという技術開発の成果を土台にしている。これは、エヌヴィディアのGPU(画像処理装置)を使用するフィジカルAIよりも100分の1のコストで生産可能とされている。日本が、絶対優位とされる理由だ。

     

    (3)「岸田文雄政権下で、熊本県の台湾積体電路製造(TSMC)や北海道のラピダスを中心に国内半導体への投資が進んできた。政府は24年11月に「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定した。7年間で10兆円超の公的支援を決めた。高市政権では40年まで見据えた政策パッケージを示し、企業の投資計画を立てやすくする。首相は会議で官民投資による経済効果を可視化するよう城内実経済財政相ら関係閣僚に指示する意向だ。高市政権は「危機管理・成長投資」でAI・半導体や量子、造船、創薬・先端医療などを戦略17分野と決めた。素案ではこれを細分化し、61の製品・技術に整理する」

     

    戦略17分野は、これを細分化して61の製品・技術に整理するとう。計画が、より具体化する結果である。

     

    (4)「このうち27製品・技術について、先行して行程表を策定する。フィジカルAIやその基盤となる半導体も含む。ほかにアンモニアや水素などを燃料にする次世代造船、製造過程で二酸化炭素の排出量を大幅削減したグリーン鉄、永久磁石、ゲームなどが並ぶ。量子分野ではスーパーコンピューターを組み合わせた日本独自の量子コンピューターの開発を目指す。核融合発電は国が主導して30年代までに発電に向けた研究開発を進める」

     

    量子コンピューターも核融合発電も、日本の素材や部品精密工業が実用化に当って,大きな力を発揮しているという。日本が、一番乗りできる分野とも期待されている。

     

    (5)「海洋無人機(ドローン)は、30年に世界市場の規模が100億ドル(1兆5700億円)を超えると見込み、その3割の獲得を目標に据えた。レアアースなどの資源開発や安全保障で重要性が高まっている。危機管理・成長投資は首相が掲げる「責任ある積極財政」を支える成長戦略の肝だ。供給力を強化し、潜在成長力を向上させる。成長によって国内総生産(GDP)比の債務残高を引き下げる流れを想定する」

     

    南鳥島の深海6000メートルのレアアース採掘では、海洋無人機が活躍している。この技術をさらに発展させていくのであろう。こうして、技術開発が新しい産業活動に貢献する。技術が新し時代を開くのだ。

     

     

     

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    中国は目下、開催中の全人代で26年GDP目標を「4.5~5%」へ引下げた。5%目標の線が、昨年下半期から崩れているからだ。「内巻」という新語が生まれるほど、過剰生産による値下げ競争の結果でもある。こうした状況で、企業収益は一段と悪化している。最高裁は2025年9月、労働者と雇用主が年金である社会保険料を支払わないことを違法と判断した。社会保険料も支払えないほど、疲弊しているのだ。この中国経済は、これからどうなるのか。超高齢社会で、年金空洞化によって路頭に迷うことは確実である。

     

    『ロイター』(3月7日付)は、「道半ばの中国『社会保険改革』、企業にも個人にも負担重く」と題する記事を掲載した。

     

    中国南部・東莞の自動車部品工場に勤めるジョン・チャオさん(37)とチャーリー・ウェイさん(23)はともに、中国政府が近年進めた社会保険制度改革を巡る最高人民法院(最高裁)の画期的な判決への勤務先の対応に不満を抱いている。しかし、両者の不満は全く異なる。

     

    (1)「最高裁は2025年9月、労働者と雇用主が社会保険料を支払わないことを違法と判断。これにより、社会保障制度を通じて生産者から消費者に対する長期的な資源再分配の基盤を整えた。すると、チャオさんとウェイさんの勤務先はコスト削減のために給与体系を改定し、1万2000元(約1747米ドル)の月収のうち約3分の1の基本給だけを社会保険料算定の対象にした。現在では従業員側も社会保険料の一部を自己負担しなければならない」

     

    中国の経済政策と同じで、企業も労働者もその場しのぎである。年金という老後保障の要を、適当にあしらっているからだ。今が良ければ、老後はどうでも良いという刹那主義に驚くほかない。

     

    (2)「最高裁判決から約半年が経過したが、労働者も雇用主もエコノミストも、順守の状況は完全ではないと指摘する。人事社会保障省と国務院(内閣に相当)はコメントの要請に応じなかった。人事社会保障省の報道官は今年1月、社会保険制度改革が「着実に推進されている」と主張した。ロイターが10人を超える労働者と工場経営者に取材したところ、企業は判決に対して自社負担を最小限に抑える形で対応しており、場合によっては賃金を引き下げるケースさえあった。大半の企業は給与全額ではなく、より低い基本給で社会保険料を算定しており、残りを賞与(ボーナス)や福利厚生として補っている。一部の労働者と1人の工場経営者は、社会保険料を支払う余裕がないため、依然として全く支払っていないと明らかにした」

     

    国家として、職場で社会保険料がどう扱われているか常にチェックしておかなければならないはずであろう。日本との実情と比べて雲泥の差である。

     

    (3)「雇用主が収入の約25%、従業員が収入の約10%をそれぞれ拠出することを義務付けた決定は、社会保障網の強化を目的としている。これは労働者が将来の備えとして個人貯蓄に回すのではなく、現在より多く消費するよう促すための重要な一歩となる。同時に、この施策は労働コストを上昇させる。このような拠出を回避してきたことが、中国の競争力を強化し、輸出を主要な成長エンジンに変えられた経緯がある」

     

    雇用主が、収入の約25%、従業員は収入の約10%をそれぞれ拠出する。こうして社会保険財政は成立する。現状は、雇用主が不況で払えないので、月収を切下げる形で積立額を減らしている。これが、中国の現場で起こっている実態だ。中国経済は、完全に「左前」になっている。

     

    (4)「ハーバード大ケネディスクールのモサバー・ラマーニ・センター・フォー・ビジネス・アンド・ガバメント研究員のリチャード・ヤロー氏は、「競合他社が社会保険料の支払いを回避しているなら、なおさら順守しない理由がある」と語った。ある産業用バルブメーカーの経営者は、当局から順守するよう圧力を受ける事態にはならないと予想する。なぜならば、その場合には自社のような工場を「つぶす」ことになるからだと指摘した」

     

    当局は、社会保険料の徴収を順守するように企業へ圧力を掛けないと予想されている。なぜならば、企業が潰れるからだという。ここまで、追い込まれているのだ。

     

    (5)「人材サービス企業の中和集団が2025年8月、6689社を対象に実施した調査によると「完全に順守」していたのは34.1%にとどまった。社会保険制度の最大の収入源となっている都市部年金は、25年に前年比5.77%増の7兆8000億元の収入があった。ただ、増加率は24年の5.61%とほとんど変わらなかった。労働問題が専門のある弁護士は、企業が低い基本給を使うことで支払額を過少申告する傾向があると指摘する。これは違法行為となり得るが、「企業はリスクを認識しながらも、可能性の問題として扱っている」と語った」

     

    社会保険料徴収ルールが、「完全順守」されているのは全体の3分の1にすぎない。残りは、守られていないのだ。中国の「老後破産予備軍」は、確実に増えている。

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    ロシアのプーチン大統領は6日、イランのペゼシュキアン大統領と電話協議した。プーチン氏は米国やイスラエルによるイランへの攻撃を巡って、ペゼシュキアン氏に即時停戦や政治・外交的解決への早期再開が必要とのロシアの立場を訴えた。イランでの軍事衝突発生後、両氏が電話したのは初めて。『日本経済新聞 電子版』(3月7日付)が報じた。

     

    米中央軍のクーパー司令官は2月28日の作戦開始から24時間で実行した攻撃は、2003年のイラク戦争開始時の「ほぼ2倍の規模」だと説明した。クーパー氏は5日の記者会見で、一連の攻撃の結果、イランの抵抗は大幅に減ったと強調。初日と比較してイランによる弾道ミサイル攻撃は90%減少、ドローンによる攻撃は83%減少していると強調した。イランの艦船は5日時点で30隻以上沈没したと明かした。『日本経済新聞 電子版』(3月7日付)が報じた。

     

    プーチン氏が、イランへ「即時停戦」を申入れた背景には、イランの軍事施設がほとんど破壊されている厳しい現実を踏まえたものとみられる。あとは、陸上戦となれば悲劇の拡大が予想されるだけに、イランへ停戦仲介を申入れたのであろう。

     

    『中央日報』(3月7日付)は、「イラン大統領「終戦仲裁の動きある」…トランプ大統領「降伏以外に合意ない」と題する記事を掲載した。

     

    米国とイスラエルの先制攻撃で始まったイランとの戦争が1週間続く中、イランのペゼシュキアン大統領が終戦のための仲裁に動く国があると明らかにした。


    (1)「ペゼシュキアン大統領は6日(現地時間)、ソーシャルメディアXに「一部の国が仲裁に動き出した」と投稿した。先月28日の開戦以降、終戦のための仲裁の動きが公式的に言及されたのは今回が初めて。その一方で「しかしこれだけは明確にしておく」とし「我々は域内の平和のために努力するべきだが、同時に国家の威厳と主権を守ることをためらわない」と強調した」

     

    ペゼシュキアン氏は、最高指導者の任務と権限を代行する臨時指導者委員会に参加している。それだけに、投稿の持つ意味合いは大きい。

     

    (2)「また、「いかなる仲裁努力も、イラン国民を過小評価して紛争を触発させた者を明示しなければいけない」とし、米国とイスラエルが自国を先に攻撃した事実を明確にしてこそ仲裁に応じるという立場を表した。イランの政治構造上、大統領は最高指導者に従属する地位だが、最高指導者のハメネイ師が死去した後、ペゼシュキアン大統領は最高指導者の任務と権限を代行する臨時指導者委員会に参加していて、その発言に関心が集まる」

     

    米国とイスラエルが、自国を先に攻撃した事実を明確にしてこそ仲裁に応じるという立場を表した。これは、停戦へ向けた大きな一歩である。

     

    (3)「トランプ大統領はこの日、ソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルに「イランとの合意は『無条件降伏』以外にない」と改めて強調した。ただ、「その後、受け入れられる立派な指導者が選択されれば、我々と我々の立派で勇敢な多くの同盟およびパートナーはイランが破滅の崖っぷちから抜け出せるよう絶えず努力するだろう」と明らかにした。また、「イランを経済的にいつよりもはるかに大きく、より良く、より強くさせる」とし「イランを再び偉大に(MIGA)」と表記した。自身の代表的な政治スローガン「米国を再び偉大に(MAGA)にちなんだ表現だ」

     

    トランプ氏は、イランの無条件降伏を主張している。これは、「ディール」であろう。米国の強い立場を示している。

     

    (4)「このようにトランプ大統領が「無条件降伏」を主張し、イランの次期指導者任命にまで関与するという意志を明らかにするなど強硬な立場を固守しているため、今回の戦争がいつ交渉局面に入るかは不透明だ。トランプ大統領は5日、米メディアのアクシオスとインタビューで、イラン政権がハメネイ師の次男モジュタバ師を後継者とする可能性が言及されていることについて「ハメネイ師の息子は受け入れることができない。我々はイランに調和と平和をもたらす人物を望む」と述べた。また、イランがハメネイ師の基調を受け継ぐ指導者を出す場合、米国は「5年以内」にまたイランを相手に戦争をするしかないと警告した」

     

    停戦の実現には、イランのメンツと米国の「強者」の立場をどう折り合いを付けるかだ。世界的な原油価格の急騰は、今秋の中間選挙を控える米国にも不利である。


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    イランは、イスラエルと米国の攻撃によって、最高指導者のハメネイ師が殺害され、今やほぼ孤立無援の状態にある。長年の親密国であるロシアと中国は、攻撃に対する外交的な非難と懸念表明しか提供していない。これまでの密接な関係は、紙のごとく薄いものであったことを示した。イランは、追詰められている。

     

    『ロイター』(3月6日付)は、「孤立イランが報復、ロシア・中国が静観する理由」と題する記事を掲載した。

     

    イランは、中東を越えて報復攻撃をすることで応酬した。ミサイルやドローン(無人機)の攻撃は世界のエネルギー市場に衝撃を与え、米国から中国に至るまでの各国政府を震撼させ、世界の石油供給量のうち2割を担うホルムズ海峡経由の海上輸送をまひさせている。イランのミサイルはキプロスやアゼルバイジャン、トルコ、湾岸諸国にまで到達し、極めて重要な企業やエネルギーインフラ、米軍基地を標的とした。石油施設や製油所、石油の主要供給ルートが攻撃を受け、原油と天然ガスの供給に深刻な混乱が生じた。

     

    (1)「アナリストらによると、ロシアと中国の事態を静観する姿勢は、冷徹な計算に基づいている。ワシントン研究所のロシア専門家、アンナ・ボルシェフスカヤ氏は「ロシアのプーチン大統領には他の優先事項があり、その最たるものが(侵攻した)ウクライナだ」とし、「ロシアが米国との直接的な軍事衝突に踏み込むのは愚かな行為だろう」と指摘した。ロシアの高官筋は、「イランとその周辺およびペルシャ湾での情勢悪化は、既にウクライナでの戦闘からの関心をそらしている。これは紛れもない事実だ。他には『失った同盟国』への感情論があるに過ぎない」と語った」

     

    ロシアには、冷酷な計算がある。世界でのウクライナ侵攻への関心が薄くなることだ。もはや、イランへの同情を示す余裕もなくなっている。

     

    (2)「紛争が激化する中で中国、ロシアの両国は制約を受けた。中国は湾岸諸国へのエネルギーと貿易への依存やアジアの安全保障上の優先課題に、ロシアはウクライナでの消耗戦にそれぞれ縛られた。その結果、明白な逆説が生じている。それは、イランが両国にとって戦略的に有益であり続けているものの、戦って守るほどには有益ではないということだ」

     

    ロシアと中国にとって、イランは米国と戦ってまで守る価値がないということだ。これまでの両国は、国際連帯を「ポーズ」として見せつけてきた。そうとも知らずに、心底から中ロを「頼りになる存在」と位置づけてきた国々には、冷水を浴びせられた思いであろう。中国は、台湾と国交を結んでいる国々へ甘言を弄して接近し断交させてきた。その甘言は、イランが例のように、いざというときの「保険」にはならないであろう。

     

    (3)「中国の抑制的な対応は、長年の戦略を反映している。それは中核的な利益を守るため、遠く離れた地域での拘束力のある安全保障上の約束を避けるという戦略だ。カーネギー国際平和財団のエバン・フェイゲンバウム氏は、米国の同盟が相互防衛義務に基づいているのとは異なり、中国は貿易・投資・武器販売を基盤とする連携を好むと指摘。こうした関係は、東アジアを越えた高コストな紛争に中国が巻き込まれることを防いでいると説明した」

     

    中国は、東アジアを越えた高コストな紛争に巻き込まれないという壁を立てている。それ以外の地域では、張り子の虎にすぎない。一帯一路は、ビジネス用で「中国利益」のために存在するワンウエイ(一方通行)だ。

     

    (4)「中国は、貿易およびエネルギー購入で世界最大級の国である。イランや、イランのライバルであるイスラム教スンニ派の湾岸諸国との関係を維持している。中南米でも、トランプ米大統領が今年1月に当時のマドゥロ大統領を拘束させたベネズエラだけに全力を注ぐことは決してなかった。これに対し、ワシントン研究所のヘンリー・トゥーゲンンダット氏は、「中国がさらに何かを行いたいと思ったとしても、戦略的関心や軍事資産を中核的な安全保障から移すことはないだろう」と指摘。その上で「中国が関心を持っているのは、外国での自国の評判だけだ。中国が関心を持っているのは台湾と南シナ海、そして米国と日本からの脅威と認識されているものだけだ」との見方を示した」

     

    これまで、中国は中東外交に乗り出したとして注目を集めてきた。だが、肝心の時には、姿を見せず、見当違いの「新日本軍国主義論」とやらを吹聴して回っている。外交戦略がズレているのだ。

     

    (5)「イランを巡る紛争は、中国にとって有利に働く可能性さえある。中国は、米軍が東アジアから遠く離れた場所で足止めされ、兵器の備蓄が枯渇する様子を傍観しながら、米国の能力や作戦をリアルタイムで観察することができる。培った知見は、将来の台湾に対するシナリオを考えるのに役立つだろう。中国の大きな弱点は、ホルムズ海峡を通るエネルギーの流通にある。中国の石油輸入のうち約45%はホルムズ海峡を経由している。しかし、専門家によると中国は戦略的な備蓄を既に構築し、タンカーや貯蔵施設に相当量のイラン産原油を確保している」

     

    中国が、米国へ一目置いた腰の引けた姿勢の背景には、深刻な自国経済の停滞がある。米国の機嫌を損ねたら、輸出に大きな影響が出るという危惧だ。3月から4月にかけてのトランプ訪中を実現させて、中国国内での権威立直しに利用したいという目先の利益だけだろう。

     

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