勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年04月

    a0960_008527_m
       

    イラン国営プレスTVは4月29日(現地時間)、イラン高官級安全保障筋が「米国のホルムズ海峡周辺での違法な海上封鎖を維持する場合、断固たる報復が不可欠」と述べた。これは、米国のホルムズ海峡逆封鎖によって、イランの原油在庫がタンク満杯になってきたことの危機感を示している。「満タン」になると、油井を閉鎖しなければならず、再開までに莫大な損失を被り、イラン財政は破綻する結果となろう。イランは、米国へ強硬策を示すことで、妥協への道を模索し始めていることを示唆している。

     

    『中央日報』(4月30日付)は、「イラン高官筋『米海上封鎖への忍耐は限界前例のない軍事措置を取る』」と題する記事を掲載した。

     

    イラン側が、米国の海上封鎖を海賊行為および強盗行為と規定し、これに対する前例のない軍事的措置が近く取られると警告した。


    (1)「イランの高官級安全保障筋は29日(現地時間)、「米国がホルムズ海峡周辺で違法な海上封鎖を維持する場合、断固たる報復が不可欠だとの立場だ」と述べとイラン国営プレスTVが報じた。この関係者は続けて、「イラン軍は今や海上封鎖に対する忍耐の限界に達した」とし、「イランは最近の強いられた戦争を通じ、米国がもはや受け身で予測しやすい相手と向き合っているわけではないことを示した」と強調した」

     

    イラン高官の発言は一見すると強硬だが、現実は逆のことを言っている。 イランの「忍耐の限界」とは、イランにとってこれ以上の軍事的消耗が不可能という点だ。米国の海上封鎖が、イラン経済に致命的な影響を与えている。イラン革命防衛隊は、イラン経済の3割見当を掌握しており、自らの利益が損なわれてきたことで危機感を募らせている。率直に言えば、革命防衛隊が経済的損害を被ってまで米国へ抵抗しないということだ。こういう自己認識の表明と読むべきであろう。

     

    (2)「この関係者は、これまでイラン軍が示してきた自制は、外交に機会を与えるためであり、同時にドナルド・トランプ米大統領に現在の泥沼から抜け出す機会を与えるためのものだったとも主張した。そのうえで、「米国の頑迷さと妄想が続き、イランの条件を拒否するなら、敵は海上封鎖をめぐり、これまでとはまったく異なる対応に直面するだろう」と付け加えた」

     

    イランは、「これまでとはまったく異なる対応」としている。これは、「前例のない軍事措置」= 実際には脅しとしての言語である。本当に軍事行動を取る国は、事前にここまで大声で言わないものだ。 イランはこれまでの局面でも、軍事行動を示唆するものの、実際には限定的行動にとどめるというパターンを繰り返してきた。今回も同じで、 「軍事措置を取るぞ」と言いながら、実際には交渉カードを増やすための発言 と読むべきであろう。

     

    こうみてくると、今が交渉の動きやすい瞬間となる。 その理由は、次の通りだ。

    1)イランは海上封鎖に耐えられない(経済・財政の限界)

    ホルムズ海峡の封鎖は、イラン自身の石油輸出を止める自傷行為になる。 米国の逆封鎖で、イランはこのカードを完全に失った。

     

    2)米国は「短期決着」を望む構造

    長期戦は、米国にとってもコストが高くなる。 しかし、イランが譲歩するなら、米国は軍事行動を拡大せずに成果を得られる。

     

    3)イラン国内の強硬派も勝利宣言の形さえあれば妥協可能

    「前例のない軍事措置を取る」と言っているのは、 国内向けの面子維持のための言語 であり、実際の行動とは別である。

     

    4)国際社会(特に中国)が、イランに「これ以上は困る」と圧力

    中国は、自国タンカーの通行確保を最優先しており、イランに対しても「自制」を求めている。原油価格の高騰が、国内経済や海外経済に悪影響を及ぼすので、これを強く警戒している。

     

    米国が、交渉で絶対に譲らない条件は、 ホルムズ海峡の完全な自由航行維持であろう。米国にとって最重要である。 ここが脅かされると、世界石油市場、同盟国の安全保障、米海軍の威信 のすべてが崩れることになる。

     

    米国は、次に核兵器化の停止(特に高濃縮ウランの凍結)を要求する。米国の最低ラインは、60%以上の濃縮停止、監視カメラの再設置、IAEA査察の受け入れだ。完全な核放棄までは求めないが、核兵器化の「不可逆的進行」だけは止めさせるであろう。

     

    これらの米国の要求に対して、イランはどう応えるのか。イランは、経済破綻回避という重荷を背負って、時間との勝負にも勝たなければない。

     

    a0960_008527_m
       


    出光興産が連日、中東産原油輸送で活躍している。先に、イランの了解を得て出光丸のタンカーがホルムズ海峡を通過した。これは、日本政府が中に入って決めたものだ。一方、TBSによれば、出光興産がホルムズ海峡以外の場所から、ベトナムへ400万バレルの原油を輸送中である。この二つの流れは、偶然とは思われない。日本政府が中に入って、ベトナムへの「原油救済」に動き出しているとみられるからだ。

     

    TBSニュースでは、ベトナムへ輸送中である400万バレルの生産国名が伏せられている。ただ、ホルムズ海峡外が積み出し港としている。これは、UAE(アラブ首長国連邦)のフジャイラ港であろう。出光興産は、これまでUAEと安定的取引を続けていることと、ベトナム製油所がUAE産原油と最も相性がいいことから、UAE産原油がベトナムへ輸送されているとみて良い。

     

    もう一つ、UAEは5月1日からOPEC脱退を決めた。UAEが、減産枠を強いられてきたことへの不満から脱退を決めた。これは今後、増産意思を明らかにしたものである。この場合、どこの国が増産分を引き受けるのか。日本は、UAE産原油輸入が1位の国である。UAEは、日本が無理な購入条件を付けず、支払も遅延したこともない「最優良ユーザー」と位置づけている。こうしたことから、日本が増産分の一定割合を引き受けるという内々の約束があっても不思議はない。UAE側からは、日本へ打診したであろう。

     

    UAEの増産分は、こうしてベトナムやフィリピンへ向けられるという予測が可能だ。それは、ベトナムとフィリピンは3月下旬に、原油窮迫から日本へ緊急支援を求めてきたが、日本は備蓄原油が法的に海外へ出せないことを説明した。その際、ベトナム・フィリピンに対して代替案を出したであろう。

     

    日本政府は今回、この線にそって出光興産ルートを使い、ベトナムへ原油を調達したとみられるのだ。さらに、日本・ベトナム・フィリピン三カ国で、共同備蓄するという事案が立ち上がっても驚くことはないだろう。その原油調達先が、UAEである。ベトナムもフィリピンもUAE産原油比率を増やすことになろう。

     

    『TBS』(4月29日付)は、「出光、原油約400万バレルをベトナムに供給へ 製油所で精製した石油製品は自動車部品や家電として日本へ輸出か  サプライチェーンを支える狙い」と題する記事を掲載した。

     

    石油元売り大手の出光興産は、調達した原油の一部をベトナムに供給する方針を固めたことが分かりました。

     

    (1)「関係者によりますと、ベトナムに供給されるのはホルムズ海峡を通らないルートで調達した中東産の原油およそ400万バレルです。出光が、出資するベトナム北部の製油所などに供給する方針で、製油所で作られた石油製品から自動車部品や家電などが製造され、日本に輸出されるとみられます。ベトナムは石油の備蓄量が少なく、日本などに原油確保の支援を求めていて、日本にとってもアジアからの部品の調達を維持する必要があり、対応が検討されていました」

     

    出光が、「400万バレル」をベトナムに送るのは、出光がベトナムの製油所(ニソン製油所)を所有しており、原油を供給しなければならないというのが理由だ。これによって、ベトナム側の燃料不足を回避し、同時に製油された石油製品は日本の自動車部品・家電のサプライチェーンにも還流するとしている。これは 商取引の形をした戦略的支援」である。

     

    なぜ、日本はベトナムに特別配慮するのか。

    1)ベトナムの燃料不足は、「日本のサプライチェーン危機」になる。ベトナムは、日本企業の製造拠点が集中しており、 燃料不足=工場停止=日本の輸出産業を直撃する。そこで、出光が原油を送ることにより、ベトナムの製油所は操業を続けられる。日本企業の工場も止まらないので、日本の輸出が維持できる。つまり 、日本自身を守るための支援 でもある。

     

    2)南シナ海で中国に対抗する「静かな連携強化」になる。ベトナムは、南シナ海で中国と最前線で対峙している国である。日本が原油を送ることは、ベトナムの経済基盤を安定させるのだ。中国の経済圧力を無効化する。日本・ベトナムの戦略的信頼を強化することにもなるのだ。これは 、「エネルギー外交」による対中抑止 だ。

     

    こうして、商業と国家戦略が完全に一致するであろう。日本政府には、「フィリピンやベトナムへ原油斡旋をして安保につなげたい」という別の意図が働いている。今回の出光の動きは、UAE日本(調達)、日本ベトナム(供給)、ベトナム日本(部品・家電として還流)という 角サプライチェーンの安定化 を意味する。この角サプライチェーンは、フィリピンにも適用できるであろう。

     

    a0070_000030_m
       


    米はイラン戦で弾薬消耗

    日本製武器の高評価理由

    日本が平和の「守護神」

    比の武器導入で中国牽制

     

    日本は、これまでの武器輸出禁止を解禁し、17ヶ国へ輸出を認めることになった。殺傷力のある武器弾薬の輸出について、国内で賛否両論が聞かれる。だが、西側諸国の「軍事力バランス回復」という視点の議論も必要であろう。現在、喫緊の課題になっているのは、米国がイラン攻撃で大量の弾薬・ミサイルを消耗した結果、ミサイル在庫が手薄という事態に陥っている。仮に中国が、現時点で台湾侵攻に踏み切れば、米軍は手薄な在庫のミサイルで応戦しなければならなくなるという状況だ。

     

    これは、日本の安全保障リスクを著しく高める事態である。台湾有事が、さらに東南アジア全体へも波及しかねないであろう。こうなると、日本が武器輸出を禁止したままでは、世界全体へ危機を波及させかねない事態となる。これを回避するには、日本が同盟国や友好国への武器輸出を解禁するほかない。東南アジアの平和は、世界全体の安寧を守る上で不可欠な条件となっている。

     

    ここで、日本の武器輸出解禁の意味を整理しておきたい。日本が、単なる「武器供給国」になるのではなく、西側の「安全保障インフラ」 になるという認識だ。具体的に言えば、日本のレーダーがフィリピンやベトナムに設置されれば、南シナ海を占拠して台湾侵攻を狙う 中国軍の行動を静かに制約することになろう。日本の武器輸出は戦争助長でなく、軍事バランスそのものを変える意味で戦争抑止力になるのだ。日本の武器輸出解禁は、中国の軍事進出が活発な現在、これを抑止する点で大きな意味が与えられよう。

     

    欧州では、ロシアがウクライナ侵攻を行っている。すでに開戦4年を経ても依然として、停戦にならない不毛な長期戦を続いている。NATO(北大西洋条約機構)は、後方支援で武器弾薬を供給しているが、すでに限界状況にある。これを放置すれば、ロシア勝利に終わりかねない切迫した状態だ。こうなると、日本が弾薬を支援する大義は、「民主主義防衛」にとって不可避となろう。

     

    NATOが、日本と提携することで将来の中国による台湾侵攻を抑制する上で、大きな「重石」になる。戦争抑止には、多層の協力関係の構築が不可欠だ。中国は、歴史的に「合従連衡」策を重視する。合従(同盟)を嫌い、連衡(一対一の関係)を好む戦術である。NATOと日本の連携は、まさに中国の忌避する「大合従」となる。すでに、NATO加盟の30ヶ国大使が、4月中旬に訪日した。詳細な目的や日程も発表されない「隠密行動」であった。日本の武器メーカーを訪問したはずである。

     

    米はイラン戦で弾薬消耗

    『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(4月24日付)によると、米国は2月28日のイランとの開戦以降、長距離トマホークミサイルを1000発以上発射した。ほかに、地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」、防空システム「パトリオット」、迎撃用のスタンダードミサイル(SM)を含む重要な防空ミサイルを1500~2000発発射した。

     

    WSJによると、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、ミサイル備蓄の減少について懸念を示す報告書を発表した。イラン開戦前の在庫に基づき、CSISはイランで消費された弾薬がトマホーク備蓄の約27%、統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)の約36%、SM-6の3分の1、SM-3のほぼ半分、パトリオット迎撃ミサイルの3分の2以上、そしてTHAAD迎撃ミサイルの80%以上に相当すると推定した。迎撃ミサイルのような防御兵器に関して、在庫不足が深刻な状況にあることを意味するという。

     

    これら在庫減を補充するには、「数年を要する」という。これは、米軍に大変な「空白期」を生む事態となる。それだけに、日本のミサイル生産でカバーして、早期に在庫を回復させなければならないであろう。一刻たりとも、在庫減という空白を生んではならない喫緊の事態と言える。

     

    日本製武器の高評価理由

    ここで日本の武器弾薬生産が、いかに世界最先端にあるかを説明しておきたい。

    日本の武器生産は、自動車・半導体・精密機械・材料工学など「精密工業の延長」先に位置する。この結果、国際的には次のように評価されている。精度・信頼性は、世界最高水準である。例えば、センサー、レーダー、火器管制、駆動系、材料(特に金属・複合材)は、日本の民生産業の強みがそのまま反映される。 工業製品と同じで、「壊れない・誤差が少ない・整備性が高い」という評価へ繋がっているのだ。

     

    弾薬・火薬・推進剤・電子部品などは、 軍事だけでなく、以下の産業に直結している。半導体製造、宇宙産業、エネルギー安全保障、重要インフラの防衛、サイバー・通信の保護などである。 弾薬インフラは、民主主義国家の「産業文明」そのものを守る基盤にもなっている。日本が、この分野で強い足がかりを持っていることは、日本の産業構造からみて当然という結論になろう。日本の産業構造自体が、高度の武器弾薬を製造可能な構造になっているのだ。

     

    日本の武器が、長い耐用年数であるとの評価は、日本の精密工業の延長にある結果である。ただ、価格が高めとされてきた。これは、日本が武器弾薬輸出を禁止してきたので、国内需要を満たすだけの生産量に絞ってきた結果である。当初は、40社近くもあった武器弾薬製造企業が、自衛隊からの発注量が少なく採算が取れない理由で多くが撤退した。こうした事情から、武器弾薬の輸出は長年にわたり要望されてきた。昨今、にわかに浮上してきた問題ではないのだ。(つづく)

     

     この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。

    https://www.mag2.com/m/0001684526



    a0005_000022_m
       


    中国は、5月1日からアフリカ53カ国の輸入品関税をゼロにする。原油やレアアース(希土類)などの資源を多く輸入する中国が、関税撤廃によってアフリカの資源囲い込み策に出た。これは、日本・米国・EUが進めているレアアースなど「重要鉱物特恵市場」(8月稼働)へ対抗する狙いだ。重要鉱物特恵市場は、日本の化学的精錬法をベースにしたESG基準によって精錬された鉱産物の関税をゼロにするもの。

     

    重要鉱物特恵市場は、28年以降に軌道に乗りはじめる見通である。中国は、化学的精錬法技術がないので、劣勢に立たされることが確実視されている。それだけに、アフリカ53カ国の輸入品関税をゼロにして早めの防衛策に出たものだ。日本・米国・EUなどが、重要鉱物特恵市場でESG基準の鉱物のみ購入すると宣言すると、中国産鉱物は主要販売先を失い、「恐慌状態」へ陥るものと予測されている。今回のアフリカ53カ国の輸入品関税をゼロ効果は、それまでの「寿命」となろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「中国、アフリカ53カ国にゼロ関税 資源調達に追い風」と題する記事を掲載した。

     

    中国は、2024年12月から後発発展途上国(LDC)の33カ国への関税をゼロにしてきたが、28年4月末まで新たに20カ国にも適用する。経済規模の大きいナイジェリアや南アフリカなども加わり、台湾と外交関係のあるエスワティニを除くすべてのアフリカ諸国が対象となる。

     

    (1)「中国は、25年6月に湖南省で開いたアフリカ53カ国との会議で輸入関税をゼロにする方針を打ち出していた。中国商務省は関税ゼロ政策が「アフリカ諸国に発展の機会を提供する」と訴える。アフリカは豊富な資源を持ち、中国にとって輸入拡大は利点がある。南部の産油国アンゴラから原油を多く輸入していて、3月は輸入全体の5%を占めた。南西部のナミビアはジスプロシウムなどレアアースの産地だ」

     

    ナミビアは、中国への鉱石売りを断って日本との関係を深めている。UNCTAD (国連貿易開発会議)や 日本との協力方針を明確にした。経済産業省が、新たな資源探査に乗り出すなど、中国とは一線を引いているのだ。ナミビアの他に、ザンビア、マダガスカル、タンザニア、南アフリカもESG基準に基づく自国での製品化によって、重要鉱物特恵市場へ参加するものとみられている。

     

    (2)「アフリカ側の期待も大きい。ケニアのキンディキ副大統領は3月下旬、中国の韓正(ハン・ジョン)国家副主席とともにナイロビ駅で中国への「関税ゼロ第1便」の出荷を見守った。アボカドやコーヒー、豆類が積み込まれたコンテナは鉄路で主要港湾モンバサ港まで行き、船で中国に送られる。キンディキ氏は、「富を生み出す最も確実な方法は貿易だ」と強調する。「中国への無関税アクセスは同国市場でのケニア産品の競争力を高め、農家や貿易業者、輸出企業の収入を増やす」と期待を寄せる」

     

    ケニアは、いずれESG基準によって中国が世界市場から排除されることも知らないのであろう。今は感激しているが、自国の売った鉱石は製品化しても市場を失う事態となろう。

     

    (3)「マンガンやアルミなどの鉱石や原油といった主力輸出品を持つガーナのマハマ大統領も、「輸出障壁だった関税の撤廃は特にカカオ加工品や繊維など、付加価値の高いガーナ製品の競争力を高める」と語った。もっとも実際の輸出拡大にはアフリカ諸国のインフラの未熟さが障壁となる。国連貿易開発会議(UNCTAD)は24年の報告書で「輸送やエネルギー、ICT(情報通信技術)のインフラ不足により、アフリカの貿易コストは世界平均を約50%上回る」と指摘した」

     

    ガーナは、マンガンやアルミなどの鉱石を生産している。野口英世の黄熱病研究の地としても知られ、日本との関係が今も深く続いている。いずれ、日本の化学的精錬法を広める役割を果すかも知れない。

     

    (4)「中国は近年、アフリカ諸国を含む広域経済圏構想「一帯一路」への投資を増やしている。オーストラリアのグリフィス大と中国の復旦大の研究機関の調査によると、25年の投資額と建設契約額の合計は2135億ドル(約33兆円)で、地域別ではアフリカ向けが最大だった。貿易拡大と並行してグローバルサウス(新興・途上国)への投資も増やして影響力を高めようとしている。米国は、アフリカを含む各国に高関税措置をとるなど、自由貿易に背を向けている。中国は、これに対抗する意味合いもある」

     

    中国が、ESG基準によって西側諸国から排除されるであろう28年以降は、アフリカにおける支配圏が大きく後退するであろう。

     

     

    a0070_000030_m
       

    イラン軍事衝突以降、ペルシャ湾で約2カ月にわたって足止めされていた出光興産の大型タンカー「出光丸」が28日、ホルムズ海峡を通過してオマーン湾の公海へ出た。原油200万トンを満載しているとみられる。日本政府高官は、「日本政府が交渉していた成果だ」と語ったという。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「出光丸がホルムズ通過、イラン衝突後初 日本政府高官『通航料払わず』」と題する記事を掲載した。

     

    出光丸は米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まる直前の2月下旬にペルシャ湾に入った後、足止めされていた。軍事衝突後、日本の元売り大手が所有する船舶がペルシャ湾から出たのは初めてとみられ、実に62日ぶりの「脱出」になる。出光はタンカー輸送の状況について「安全上の観点から回答できない」とコメントしている。

     

    (1)「船舶情報サイト「マリントラフィック」によると、出光丸は28日午前7時(世界標準時)ごろ、イランがオマーン湾への航路として指定するララク島の南側を通ってホルムズ海峡を通過した。28日午後7時時点でオマーンの首都マスカットの北方の公海上をインド洋方向へ航行している。船舶自動識別装置(AIS)の情報によると、行き先は日本の名古屋港となっている。喫水は20メートルとなっており、約200万バレルの原油を満載しているとみられる。日本政府高官は日本時間28日夜、「日本政府が交渉していた成果だ。通航料は払っていない」と明らかにした」

     

    出光興産のタンカーが、日本政府の交渉によって通航料を払わずにホルムズ海峡を通過した。これが前例になれば、日本関係の船舶が通航できる可能性が強まるであろう。吉兆である。

     

    (2)「イラン国営テレビも28日、出光丸がイラン当局との調整の上でホルムズ海峡を通過したと報じた。駐日イラン大使館は28日、出光興産がイラン産石油を秘密裏に運んだ「日章丸」事件を引きながら「この遺産は今なお大きな意義を有している」とX(旧ツイッター)の公式アカウントで投稿した」

     

    出光の「日章丸」は、かつてイランが石油国有化宣言後の危機を突破できた意味で、大きな恩義がある。その出光興産のタンカーだけに特別配慮をしたのか。

     

    (3)「出光丸は2月上旬に日本を出た。2月25日にペルシャ湾に入った後、同28日にイラン攻撃が始まった。3月上旬にサウジアラビアのダンマンの沖合で原油を積み込んだとみられるが、その後イランがホルムズ海峡の事実上の封鎖に踏み切った。同船は、イランのアラグチ外相がホルムズ海峡を開放すると表明した4月17日、いったんペルシャ湾の中央付近の海域まで移動した。だが、直後にイラン側が「再封鎖」を宣言したことで、再び停滞を余儀なくされていた」

     

    出光丸は、4月17日にペルシャ湾の中央付近の海域まで移動したが、ストップさせられていた。公海で出てホッとしているであろう。

     

    (4)「欧州調査会社ケプラーのアナリスト、鳥潟ゆうい氏は「今回の(出光丸の)航行は現在の封鎖のもとで、日本の石油精製大手が完全所有する超大型原油タンカーが初めて同海峡を通過した点で意義深い。日本の船主はこれまで、地域の安全保障リスクに対して極めて慎重な姿勢をとってきた」と指摘した」

     

    出光丸に続いて、日本のタンカーは公海へ出られるかだ。日本政府は、引き続き交渉しているであろう。

     

    (5)「28日にはアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)が所有する液化天然ガス(LNG)運搬船がインド洋を航行中であることも明らかになった。同船は3月下旬にはペルシャ湾にいた。行き先は中国とみられる。LNGを積載した船舶がホルムズ海峡を通過したのは初めてとみられる。ペルシャ湾には依然として多くの日本関係の船舶が取り残されているが、他の船も同様に出られるかは不透明だ」

     

    28日には、UAEのLNG運搬船も公海へ出ている。イランが、譲歩し始めたのかも知れない。

     

    (6)「イランの革命防衛隊はホルムズ海峡の通航について、許可を得た船舶のみが指定の航路で通航できるなどとしている。また、イラン側は通航料の徴収を恒久的な制度として導入しようとしている。イラン国営テレビは28日、国防省高官の話として「戦争終結後、商船の円滑な航行を許可することが議題になる。ただし、イランの安全保障が脅かされないことが条件だ」と伝えた」

     

    イランは、建前(承認・通航料)を崩さずにいるが、現実は妥協を始めている。イランは、米軍による逆封鎖でイラン油井が満杯になりつつあることで、少しずつ「現実」へ引き戻されているのか、要注目になってきた。

     

    このページのトップヘ