イラン国営プレスTVは4月29日(現地時間)、イラン高官級安全保障筋が「米国のホルムズ海峡周辺での違法な海上封鎖を維持する場合、断固たる報復が不可欠」と述べた。これは、米国のホルムズ海峡逆封鎖によって、イランの原油在庫がタンク満杯になってきたことの危機感を示している。「満タン」になると、油井を閉鎖しなければならず、再開までに莫大な損失を被り、イラン財政は破綻する結果となろう。イランは、米国へ強硬策を示すことで、妥協への道を模索し始めていることを示唆している。
『中央日報』(4月30日付)は、「イラン高官筋『米海上封鎖への忍耐は限界…前例のない軍事措置を取る』」と題する記事を掲載した。
イラン側が、米国の海上封鎖を海賊行為および強盗行為と規定し、これに対する前例のない軍事的措置が近く取られると警告した。
(1)「イランの高官級安全保障筋は29日(現地時間)、「米国がホルムズ海峡周辺で違法な海上封鎖を維持する場合、断固たる報復が不可欠だとの立場だ」と述べとイラン国営プレスTVが報じた。この関係者は続けて、「イラン軍は今や海上封鎖に対する忍耐の限界に達した」とし、「イランは最近の強いられた戦争を通じ、米国がもはや受け身で予測しやすい相手と向き合っているわけではないことを示した」と強調した」
イラン高官の発言は一見すると強硬だが、現実は逆のことを言っている。 イランの「忍耐の限界」とは、イランにとってこれ以上の軍事的消耗が不可能という点だ。米国の海上封鎖が、イラン経済に致命的な影響を与えている。イラン革命防衛隊は、イラン経済の3割見当を掌握しており、自らの利益が損なわれてきたことで危機感を募らせている。率直に言えば、革命防衛隊が経済的損害を被ってまで米国へ抵抗しないということだ。こういう自己認識の表明と読むべきであろう。
(2)「この関係者は、これまでイラン軍が示してきた自制は、外交に機会を与えるためであり、同時にドナルド・トランプ米大統領に現在の泥沼から抜け出す機会を与えるためのものだったとも主張した。そのうえで、「米国の頑迷さと妄想が続き、イランの条件を拒否するなら、敵は海上封鎖をめぐり、これまでとはまったく異なる対応に直面するだろう」と付け加えた」
イランは、「これまでとはまったく異なる対応」としている。これは、「前例のない軍事措置」= 実際には“脅しとしての言語”である。本当に軍事行動を取る国は、事前にここまで大声で言わないものだ。
イランはこれまでの局面でも、軍事行動を示唆するものの、実際には限定的行動にとどめるというパターンを繰り返してきた。今回も同じで、 「軍事措置を取るぞ」と言いながら、実際には交渉カードを増やすための発言
と読むべきであろう。
こうみてくると、今が交渉の動きやすい瞬間となる。
その理由は、次の通りだ。
1)イランは海上封鎖に耐えられない(経済・財政の限界)
ホルムズ海峡の封鎖は、イラン自身の石油輸出を止める“自傷行為”になる。 米国の逆封鎖で、イランはこのカードを完全に失った。
2)米国は「短期決着」を望む構造
長期戦は、米国にとってもコストが高くなる。 しかし、イランが譲歩するなら、米国は軍事行動を拡大せずに成果を得られる。
3)イラン国内の強硬派も“勝利宣言の形”さえあれば妥協可能
「前例のない軍事措置を取る」と言っているのは、 国内向けの面子維持のための言語 であり、実際の行動とは別である。
4)国際社会(特に中国)が、イランに「これ以上は困る」と圧力
中国は、自国タンカーの通行確保を最優先しており、イランに対しても「自制」を求めている。原油価格の高騰が、国内経済や海外経済に悪影響を及ぼすので、これを強く警戒している。
米国が、交渉で絶対に譲らない条件は、 ホルムズ海峡の完全な自由航行維持であろう。米国にとって最重要である。 ここが脅かされると、世界石油市場、同盟国の安全保障、米海軍の威信
のすべてが崩れることになる。
米国は、次に核兵器化の停止(特に高濃縮ウランの凍結)を要求する。米国の最低ラインは、60%以上の濃縮停止、監視カメラの再設置、IAEA査察の受け入れだ。完全な核放棄までは求めないが、核兵器化の「不可逆的進行」だけは止めさせるであろう。
これらの米国の要求に対して、イランはどう応えるのか。イランは、経済破綻回避という重荷を背負って、時間との勝負にも勝たなければない。



