勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年04月

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    日本政府が、外国人に対する経営・管理ビザ発給条件を引上げることになった。新たな要件では、経営する企業の資本金が従来の500万円から、一挙に3000万円へ引き上げられた。これに伴い、廃業を希望する向きは、4割強になることが東京商工リサーチのアンケート調査で判明した。

     

    『レコードチャイナ』(4月26日付)は、「在日資格厳格化、外国人経営の企業の20社に1社が「廃業検討」在日華字メディア」と題する記事を掲載した。

     

    在日華字メディア『中文導報』はこのほど、東京商工リサーチの発表に基づく、経営・管理のビザ発給(在留資格)の厳格化による外国人が経営する企業への影響を紹介する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府が、在留資格の厳格化を実施したのは2025年10月。東京商工リサーチが外国人の経営する企業に対してのアンケートを実施したのは26年3月末から4月初めにかけてで、299社から回答を得たという。経営・管理のビザ発給についての新たな要件では、経営する企業の資本金が従来の500万円から3000万円に引き上げられた。また、「少なくとも1人の常勤職員を雇用」「経営者または従業員のいずれかが、公的な日本語能力試験や日本の学校卒業などで日本語能力を有することを確認できること」「公認会計士などの専門家による事業計画書の確認」その他の条件も追加された」

     

    企業の資本金が、従来の500万円から3000万円に引き上げた理由は、ビジネス実態のない「幽霊会社」の排除にある。資本金500万円で、日本滞在ビザを買う形の「不法在留」は、問題を引き起している。日本政府は、これを排除する目的だ。

     

    (2)「在留資格の厳格化の目的は、日本に長期滞在することを目的に実体のないダミー会社を設立することを防止することとされる。しかし、日本で実際に事業を展開する外国人経営の会社にも、影響が出始めている。回答した企業の45.2%が、経営にすでに何らかの影響が出ていると表明した。その内訳は、27.4%の企業が「増員などで新たな要件を満たすよう努力する」と回答。11.7%は「事業の売却または他社との合併を検討」、6.3%は「日本国籍または永住資格を持つ人への経営権の譲渡を計画」、さらに回答した企業の5.3%が「廃業を検討中」とした」

     

    実態調査で、本社とされる場所へ出向くと、誰もいないケースが報道されている。日本へ治療目的で入国し、挙げ句に治療費を払わず出国する例も出ている。こういう「不法在留」はやはり取り締まるべきだろう。

     

    (3)「規模別では、回答した企業の中で20社あった大企業のうち14社、すなわち70.0%が「影響なし」とした。回答した中小企業は279社で、「影響なし」と回答したのはその53.7%の150社だった。産業別では、小売業企業の37.5%が「影響なし」と回答した。一方で、通信業企業の16.6%、小売業企業では12.5%、サービス業企業では10.1%が、「廃業を検討」せざるを得ない厳しい選択を迫られていることが分かった」

     

    回答した中小企業は279社のうち、「影響なし」は53.7%の150社だった。通信業企業の16.6%、小売業企業では12.5%、サービス業企業では10.1%が、「廃業を検討」せざるを得ないという。

     

    (4)「経営・管理ビザの発給要件の厳格化については、資本金の3000万円への引き上げで「影響を受けた」と回答した企業が44.4%で、最も多かった。一方で、24年に日本で新たに設立された会社のうち、95%以上で資本金が1000万円未満で、3000万円を超えた企業はわずかに1%だった。要求する資本金を一気に6倍に引き上げたことが、外国人が日本で起業するにあたっての、きわめて厳しい「ハードル」になったことは間違いない。その他の厳格化については、「日本語能力」関連で影響が出たと回答した企業は全体の28.8%、「事業計画書」関連では24.4%だった」

     

    資本金以外の面では、「日本語能力」と「事業計画書」で53.2%も影響が出たという。これは、日本人相手でないビジネスを示唆している。母国人相手のビジネスで、日本を腰掛けに利用しているだけであろう。

     

    (5)「世界の国や地域は、優秀な人材を獲得する競争に直面している。高すぎるハードルは、真に起業の志を持ちながらも初期資金が限られている外国人人材を「門前払い」する可能性がある。日本にとっては、不法滞在の撲滅と起業の活力維持との間でいかにバランスを模索するか、いかに「水増しを排除」すると同時に「無実の者を傷つける」ことを避けるかが、世界の人材獲得競争の中で直面せねばならない新たな課題だ。一方で、日本在住の、あるいは日本に赴いての起業を望む外国人にとっては、日本で事業を行うことにともなうリスクを再評価し、未来を慎重に計画する必要が強まったと言える」

     

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    米国のベセント財務長官は、中国による輸出規制が問題になっているレアアース関連製品の問題について、「4年以内に完全に解決できるだろう」述べた。具体的には、この8月に稼働する「重要鉱物特恵市場」を指している。精錬国は、ESG基準により日本の化学的精錬法を採用することが義務づけられる。米国は、中国のレアアース輸出規制に対して、強い中国不信に陥っており、100%の脱中国を目指している。

     

    『レコードチャイナ』(4月27日付)は、「米ベセント長官、中国と交渉中のレアアース問題「4年内に完全解決」仏メディア」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「フランスメディア『RFI』はこのほど、米メディアの『ウォール・ストリート・ジャーナル』が発表した、ベセント米財務長官に対するインタビュー記事を引用して、貿易問題での米中の交渉を紹介する記事を発表した。同長官は中国による輸出規制が問題になっているレアアース関連製品の問題について、「4年以内に完全に解決できるだろう」と自信を示したという」

     

    ベセント米財務長官は、レアアースは4年以内に完全に解決できるだろうと自信のほどをみせている。これは、西側諸国がESG基準によって重要鉱物の生産見通しが付いたことを語ったものだ。中国のレアアース排除である。

     

    (2)「米国と中国との経済関係は、途絶えたわけではない。米国企業は依然として中国で事業を展開しており、米国は中国に農産物、エネルギー、金融サービス、ソフトウェアを輸出し続けている。しかし米国政府は、重要な鉱物、医薬品、半導体3分野については、中国を「切り離したい」と考えているとされる。同長官は取材に対して、レアアース関連について「われわれは極めて大きな進展を遂げた」「私は、9カ月ごとに段階的に進展し、4年以内に完全に解決できるだろうと考えている」と述べた」

     

    米国政府は、重要鉱物、医薬品、半導体の3分野について、中国を「切り離したい」と考えている。この中で、レアアース排除が確実に進んでいることを明らかになった。

     

    (3)「同長官はインタビューで、自らの「中国観」も披露した。まず清朝について言及し、「彼らは自らについて、かつては(世界の)中央にある帝国だったと考えている」「私は、彼らがすべての国が朝貢にやって来るような(国際)バランスを取り戻したいと願っていると考える」「同盟国があったことはかつてない。あるのは属国だけだった」などと語った」

     

    中国は、歴史的に同盟国を持たず、「一匹狼」で地域を支配する構図を作ってきたとしている。中国はまた、同盟国を持たず、属国だけを従える国である。極めて、協調性がない国だ。現代中国を浮き彫りにしている。

     

    (4)「同長官は、米国がかつて創設にあたって中心的な役割を果たした世界銀行と国際通貨基金について「中国は参加して、最終的にコントロールすることだけを考えている」と述べた。さらに、米国はこれらの国際組織にかかわった際に、ソフトパワーの面を考慮したが、中国は自らが立ち上げた「一帯一路」構想とアジアインフラ投資銀行について、「ハードパワーの面での考慮」がより大きいと主張した」

     

    中国は、世界銀行と国際通貨基金について「参加しても、最終的にコントロールすることだけを考えている」としている。要するに、一匹狼的行動を好むのだ。

     

    (5)「同長官は、「ソフトパワー」の語に「国際社会全体にとって、自由でよりよい枠組み」の意を、「ハードパワー」の語には「経済力や軍事力による露骨な強要が可能な構造」の意を込めたと考えられる。同長官はトランプ大統領と習近平主席の会談で「世界の2大強国」の指導者が初めて、人工知能(AI)について触れると説明し、安全保障や「非国家組織による脅威に共同で対応する方法を模索すると述べた。一方で、AI分野で(中国)に敗れれば「ゲームオーバーだ」とも述べた。またAIによる脅威として「例えば、誰かが単に生物データを利用するだけで、新型コロナウイルスの感染拡大よりも10倍も深刻な事態を引き起こす可能性がある」と述べた」

     

    中国が、「AI+生物学」研究に強い興味を持っている。これは、方向性として「危険」な面もある。新型コロナウイルスの感染拡大より、10倍も深刻な事態を引き起こす可能性があるからだ。中国が、ソフトパワーよりもハードパワーを好むという特性の国家である以上、「AI+生物学」と結び付くと意外な危険性をもつことになりかねない。

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    中国は、宣伝上手な国である。政府が、先頭に立って旗を振るから効果抜群である。メルツ独首相は、2月末に訪中した際、多忙な日程を繰り合わせて、浙江省杭州市のロボット企業「宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)」視察を組み込んだほど。人型ロボットは、中国の至る所に登場する。食傷気味であるが、実際に労働現場で使われている例はわずか。それでも、飽きもせずに人型ロボット「ショー」を繰り広げている。

     

    『レコードチャイナ)』(4月27日付け)は、「中国は『ロボット時代』を切り開いたのか独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独メディア『ドイチェ・ヴェレ』(DW)中国語版(4月23日付)は、独紙『フランクフルター・アルゲマイネ』(FAZ)が中国のロボット技術の発展現状を分析した記事を紹介した。

     

    (1)「FAZ紙は2月末のメルツ独首相訪中に当たって中国が浙江省杭州市のロボット企業「宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)」視察を組み込んだことに言及しつつ、「中国のロボットはドイツ首相に武術を披露したほか、最近ではハーフマラソンの人類世界記録を上回るタイムでゴールしたが、こうした映像は選択的で時に意図的に演出されたものだ」と指摘した。また、中国ではロボットが「うんざりするほど」至るところに現れ、展示会はもちろんのこと、北京マラソンから中国中央テレビ(CCTV)の春節特番まであらゆる場面に登場すると紹介し、「春節特番がロボットの見本市になった」と不満を漏らす中国人もいるほどだと伝えた」

     

    ドイツ首相は、訪中の際に杭州市のロボット企業を訪問した。中国政府が、人型ロボットを宣伝したい証拠であろう。だが、技術的には「未熟」なのだ。飛んだり跳ねたりはできても、筋肉部分が弱いので労働には向かないとされる。人型ロボットは、産業用ロボットで世界一の日本が最も進んでいる。「能ある鷹は爪を隠す」で、中国のように技術を見せびらかすことはない。ラピダスのフィジカルAIが量産化され次第、日本製人型ロボットが登場するであろう。

     

    (2)「さらに、「人型ロボットは中国に世界で最も多く存在するが、実は日常生活でほとんど目にすることはなく、展示会、ショールーム、SNSライブ配信、テレビ番組の中でしか頻繁に登場しない」と論じたほか、業界で最も知名度の高い宇樹科技のデータでも、生産現場の第一線に投入されている人型ロボットは極めて少ないと説明した。そして、現状では中国に「未来の世界」「ロボット時代」がやって来たわけではなく、中国のロボット技術は依然として発展段階にあり、日常生活で最も一般的な実用例はホテルの配膳ロボットという低次元なレベルにとどまっていると評した」

     

    人型ロボットは、派手な宣伝戦を繰り広げている裏に、中国政府の存在がある。EV(電気自動車)に続いて、人型ロボットを売出そうという魂胆である。ともかく、輸出してドルを稼ぎたいのだ。

     

    (3)「その一方で、中国が持っている真の強みは技術力の高さではないことに言及。「常に最高端の技術を最初に打ち出すことではなく、品質がほどほどで良く価格も手頃な製品をどこよりも早く提供する点にある」と指摘。特にそのスピード感は目を見張るものがあり、ドイツをはじめとする欧州よりも、中国の方が工場のロボット配置密度が高いほか、自動運転車両の普及も早いと紹介した」

     

    中国文明は、「質」を追求するのでなく「量」を求める文明だ。始皇帝の農本主義による量の拡大策を踏襲している。人型ロボットも質の高さを求めることなく、量をこなして満足する文明である。

     

    (4)「FAZ紙はまた、人手不足が深刻なドイツではなく、労働力があふれている中国でロボットの導入が進んでいる現状を皮肉交じりに伝えた上で、「ドイツのロボット技術普及を阻んでいるのは経済理論ではなく、増幅された『恐怖心』だ」と論じた。その上で、現実のロボットを目にすればその恐怖はたちまち解消されるとし、増幅された恐怖心を払拭するにも、自ら中国に足を運び街で活動するロボットの現状を正しく認識する必要があるかもしれないと結論づけた」

     

    人型ロボットの普及を阻んでいるのは、技術の壁である。本当の意味でのフィジカルAIが製造されていないからだ。現在のフィジカルAIは、クラウド型の情報処理である。これは、「まやかし」である。作業現場で、独自の判断で作業できるフィジカルAI(現場AI)が登場しない限り不可能である。クラウド型と分散型の情報処理の違いを理解しなければ、中国の人型ロボットが最も進んでいると誤解するに違いない。

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    北京市は5月、民生用ドローン(無人機)の新規販売を全面的に禁止する。軍事施設の位置など機密情報を守り、国家安全を確保するためだ。これまで、高度1000メートル以下の低空域を活用した「低空経済」を打出していたが突然の「禁止令」だ。中国に何か差し迫った危険が忍び寄っているのか。

     

    ドローンの販売・貸与・運搬を全面禁止(北京市内への持ち込みも禁止)だけでない。17種類の核心部品も販売禁止(バッテリー、通信モジュール等)になる。区域は、北京市全域がドローン管制空域に指定(屋外飛行はすべて事前承認制) された。1カ所に3機以上の保管禁止(核心部品は10個まで) である。未登録機は、技術的に離陸不可(実名登録+リアルタイム追跡) となる。これは、世界主要都市でも例のないレベルの規制だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月26日付)は、「北京市がドローン販売を全面禁止 首都防衛徹底、「低空経済」に逆風」と題する記事を掲載した。

     

    香港紙によると中国でドローン販売を全面禁止する都市は初めて。ドローンには軍事用のほか、測量や配送に使う商業用、治安維持に用いる政府・法執行機関用がある。一般消費者向けの民生用は空からの写真撮影などに使うことが多い。

     

    (1)「北京が、51日に施行する「無人航空機管理規定」は市内で民生用ドローンを新たに販売・貸与したり、輸送したりするのを禁じる。サプライチェーン(供給網)を断つため、機体フレームや飛行制御システムといった主要部品17品目も禁止対象にした。市全域をドローンの管制空域に指定し、屋外で飛行させる場合は申請を義務づける。承認なしに飛ばせば無許可飛行とみなし、機体や主要部品を没収する。個人は5000元(およそ12万円)以下、法人は1万元以下の罰金を科す」

     

    北京市は、中国最高幹部の住宅がある。ドローンで攻撃されたら、一大事である。そういう危機感が迫っているのだろう。

     

    (2)「保有者は、法施行から3カ月以内に公安機関へ実名などを登録しなければならない。市中心部から半径25キロメートルほどの環状道路「6環」内で機体と主な部品を保管するのを禁じる。6環外でも保管場所を設けるには公安の承認が要る。購入や輸送の例外はテロ対策や災害救助、農業、学校教育、スポーツなどで必要な場合に限定した」

     

    市中心部から半径25キロメートルほどの環状道路「6環」内では、機体と主な部品を保管するのを禁じるという。保有することすら禁じられる。

     

    (3)「北京がドローンの飛行制限を強めるのは首都の治安維持を徹底するためだ。北京には要人の執務地である中南海や人民解放軍の重要施設、中国外務省など中央省庁が集中する。慶応大の古谷知之教授は、「民生用などの積載量の小さいドローンでも重要施設内に落下させたり、火器を搭載したりすればテロに使えてしまう」と指摘する。実際、ウクライナやイスラエルでは軍が小型ドローンを戦闘に活用している」

     

    北京が、ドローンの飛行制限を強めるのは首都の治安維持である。2025年末から2026年にかけて、 中国国内では次のような動きが増えています。

    地方政府の財政破綻、公務員給与の遅配、若年失業率の急上昇、住宅ローンのデフォルト増加、SNSでの不満投稿の急増(削除が追いつかない)などだ。北京が、ドローンを恐れるのは、 外部攻撃だけでなく「内部の不安定化」を警戒している結果だ。

     

    (4)「ドローンの規制強化は中国全土に広がる。1月に施行した「改正治安管理処罰法」は初めてドローンを取り締まりの対象に定めた。無許可飛行に対する罰則を強め、従来の罰金刑から最長15日間の行政拘留を科せるようにした。中国では、ドローンの事故や事件が相次ぐ。中国メディア「財経」によると、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内の天山国際空港で2025年2月、ドローンが無許可で飛行したことで旅客機の運航に支障が生じ、一部の便が遅延した」

     

    ドローンの規制強化は中国全土に広がっている。だが、今回の北京市の全面禁止は突出している。

     

    (5)「中国で、スパイ摘発を担う国家安全省もドローンを警戒する。同省は26年3月、SNSの公式アカウントで無許可飛行が公共の安全を脅かし、重大な結果を招く場合は「10年以上の懲役、無期懲役または死刑に処される」と投稿した。中国では地上1000メートル以下の空域で使うドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)を使った経済活動を低空経済と呼び、関連産業の育成が進んできた。調査会社のグローバルインフォメーションとマーケッツアンドマーケッツによると、中国の25年の民生用ドローン市場規模は推定値で2500万ドル(約40億円)だった。操縦や撮影を楽しむ利用者が増え、前年から6%伸びた」

     

    ドローンが、重大な結果を招く場合は「10年以上の懲役、無期懲役または死刑に処される」という。無期懲役または死刑とは、治安問題がいかに深刻になってきたかを示している。

     

    (6)「中国政府がドローンの販売や保有への規制を強めることで、こうした低空経済の成長に水を差す可能性がある。財経は2月、ドローン規制の強化をにらんで保有している機体を売却するユーザーが急増したと伝えた。中国ドローン大手DJIの一部販売店では、1月の改正治安管理処罰法施行後の2カ月ほどでドローン販売量が半減したという」

     

    中国は、2023〜2025年に「低空経済」を国家戦略として推進してきた。今回の北京市規制は、この流れに真っ向から逆行する。保安上で、相当の危機感を強めている証拠だ。すでに、DJI販売が2カ月で50%減少(北京の販売店) 、中古市場で棄機が急増(規制リスクで使用不能) 、申請の9割が不許可(事実上の飛行不能)などの事態が起こっている。これは、産業育成よりも 首都防衛を優先した結果である。

     

    こうした「急旋回」をもたらした背景は、中国経済への急速な危機感の出現である。人民元相場は、アジア通貨が軒並み安値を付けている中で、人民元だけが高値を維持している。当局の買い支えであろう。買い支えなければ、急落するリスクが増えているのだ。中国危機が確実に忍び寄っている。その恐怖感が、今回の北京市全域のドローン規制と理解すべきだろう。

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    中国を襲う「三大病」

    長期衰退の覚悟固める

    政策転換できない矛盾

    28年「年金破綻」へ

    補助金が支える経済に

     

    中国は、歴史的に「物語国家」である。習近平国家主席が今、中華再興という物語を掲げてこれに向っている。ことの始まりは、秦の始皇帝である。中国が、世界の中心になるという「物語」によって国名を付けた。習氏は、この物語に従って中華再興を掲げているのだろう。

     

    習氏の中華再興目標とは、清国時代の再現である。強い武力と経済力が中華の繁栄を象徴した。18~19世紀は、世界最大の人口(3~4億人)と農業によって経済が繁栄した。ただ、産業革命を達成した英国が、一人当たり人口の経済レベルで中国を上回った。この時代から、「量の中国」という明確な特色に彩られてきた。中国は、その量を武器に朝貢貿易によって、周辺国へ中国の恵みを与え支配権を確立した。この中で唯一、日本は圏外であった。ただ、琉球の朝貢貿易により中国産物を手に入れる迂回方式をとった。

     

    習氏は、当時の清国が世界最大の経済規模と、朝貢貿易によって地域覇権を握っていたことへ強い憧憬を抱いている。さらに、習氏の夢は世界覇権へと大きく膨らんだ。この「物語」を国民に示すことによって、国家主席2期10年の憲法規定を改定させ、終身国家主席へのパスポートを手に入れた。だが、習氏は今や自ら唱えた物語国家によって、経済が急変しても政策変更ができない状態へ追い込まれている。物語国家の悲劇性が、ここに現れているのだ。

     

    中国襲う「三大病」

    現在の中国は、不動産バブル崩壊・人口急減・内需不足という致命的欠陥を抱えている。習氏が唱えた中華再興は、中国がこれらの「不治の病」に冒される前に唱えたものだ。当然、客観的な情勢が変わった現在、中華再興による世界覇権の獲得などあり得ない状況である。だが、習氏はこの目標を変えること自体が、不可能という状況に遭遇している。目標の変更・取下げが、習氏の政策的誤りを自ら認めることになるからだ。日本帝国陸軍が、開戦の失敗を認めず、「一億玉砕」を唱えた心境と全く同じであろう。

     

    中国の政策当局は、中国が前記のような「三大急変」に見舞われている事態をどこまで認識しているのか疑問に思うことが多々ある。習近平氏の発言からは、そのような素振りは一切感じられないからだ。ただ、中国政府の未公開資料では、異常事態へ遭遇しているという認識がハッキリと指摘されているという。OECD(経済協力開発機構)は、中国経済が急速に悪化して「長期衰退」に陥るとの推計を発表しているほどだ。中国の未公開資料でも「避けられない構造」として、次の項目が上がっている。

     

    1)人口減少が、世界最速で進んでいる。合計特殊出生率は、「1.0以下」に定着するので、2070年の人口は8億人台へ落込む。この結果、 労働力が半減する。

     

    2)不動産バブル崩壊の影響は深刻である。不動産は、二度と回復することはなく、余剰住宅が3億戸 も存在しており、 住宅価格は長期下落が避けられない。

     

    3)地方政府の債務危機は、一段と深刻化する。住宅価格が長期下落見通しだけに、土地売却益は減り続ける。土地売却益が、担保である借入金の返済メドは立たない。

     

    4)国有企業の非効率性は、明白である。専門経営者がいない以上、生産性の向上は望めない。こうして、生産性が上がらないことから、 国有企業中心の中国経済は成長しない。

     

    5)米中対立による技術封鎖は、解除されない。 半導体・AI・軍事での技術的遅れが固定化される。これは、中国経済の発展にとっては手痛い打撃である。

     

    6)ESG基準による輸出排除は、中国が力を入れてきた「新質生産力」に決定的なハンディキャップをもたらす。これによって、サプライチェーンの脱中国化が促進される。

     

    長期衰退の覚悟固める

    以上の諸点が、 中国政府自身の内部報告書に書かれている。こうして、中国政府は「長期衰退」を完全に理解していると言えよう。中でも、ESG基準による輸出排除は致命的な影響を与えるとの認識だ。

     

    ESG基準は、Eが環境、Sが人権、Gが非国有企業を意味する。Eの技術は、中国の物理的精錬法を化学的精錬法に置き換えねばならないが、中国には肝心の技術がないのだ。通常は、「技術導入」で済まされるケースである。だが、化学的精錬法は日本の開発した独自技術である。日本の「繊細な文明」が反映されている。従来、等閑視されてきた「文明と技術」の相関性が、見事に結晶化したものだ。技術の中味は、「ブラックボックス」であり、模倣は困難とされる。こうなると、中国は完全にお手上げだ。

     

    文明と技術の関係は、これまで取り上げられることはなかった。日本が、化学的精錬法を開発したことで、欧米の「規格化された文明」では、達し得ない製造過程における微妙な変化を見事に解決した。具体的には、製造過程における微妙な「揺れ」が、AI(人工知能)でいち早く察知して、補正処理するプロセスを完成させた。これは、芸術的とまで評価されている。まさに、ノウハウの領域である。日本の文明は、「揺れの文明」なのだ。

     

    日本は、これまで「暗黙知」に優れているが「形式知」で脆弱とされてきた。だが、この暗黙知をAIによって形式知まで昇華させた。揺れの文明が、形式知になったことにより化学的精錬法を確立した。この延長には、ラピダスの半導体における製造革命もある。前工程と後工程の全自動化という世界初の技術体系を実現したのである。これも、揺れの文明が形式知になった現れだ。日本は、AIを製造業で見事に使いこなしている。

     

    中国の文明は、一つの形が決まれば全てこれに倣って量産化する「支配型文明」である。そこには、工夫もなくただ量を増やすというだけだ。日本が、あくなき「質」を求める文明であるのに対して、中国は単純に「量」を求める文明である。(つづく)

     

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