勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2026年06月

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    (4)「6月に成立した今年度補正予算にも「工夫」があった。長引く中東情勢の悪化を受けた物価高騰対策のため3兆円強を計上したものの、財源の特例公債(赤字国債)は前年度分の未発行となる範囲にとどめるというロジックを採用。前出の政府関係者は「赤字国債を財源とすることに変わりはないが、市場はそこまで乱れなかった」とし、政府の説明に一定の効果があったとの認識を示した」

     

    高市政権は、きめ細かい政策を行っている。イラン戦争中でも、日本の石油市場は平穏であった。世界で稀な現象である。こういうプラス面は、評価されず「当たり前」と見過ごしている。

     

    (5)「市場を気遣うこうした姿勢は、高市氏が念頭に置く二つの「影」を浮き彫りにする。一つは2022年に英国で国債・通貨が急落した「トラス・ショック」だ。日本の財政見通しへの懸念が大きく高まれば、自身の政策を推し進めるどころかトラス英元首相のように退陣にすら追い込まれかねない。政府関係者は高市氏がトラス氏と重ねられることに神経をとがらせていると説明。市場との対話姿勢を強調することで、同じ轍を踏まないよう意識しているとも語った」

     

    英国は2022年に、女性宰相トラス氏が闇雲な減税を行い、国債・通貨が急落する「トラス・ショック」が起った。高市氏が、自民党総裁選で立候補した際、本欄はトラス・ショックの再来危険性を指摘した。「積極財政」という言葉には、こういうリスクがつきまとっている。政治家は、言葉の使い方に注意すべきであろう。

     

    (6)「もう一つの「影」は財務省だ。財政規律に重きを置く同省は、政権発足前から高市氏にとって「抵抗勢力」と位置付けられていたとされる。前出の関係者は骨太の方針に盛り込まれる積極財政的な政策を念頭に、「高市氏は財務省が政策をつぶそうとしてくるのではないかと疑っている。『そんな攻撃には屈しない』という思いが市場の信認を重視する姿勢にもつながっている」と分析した」

     

    高市氏は、「安倍二代目」を名乗っている。安倍元首相は、財務省の財政均衡主義に悩まされたとしている。野放図な財政拡大は、極めて危険であるだけに財政均衡は必要である。ただ、財政支出がいかなる「見返り」を生むかという視点を欠いた、財政均衡主義は否定されなければならない。財務省には、その目利きがいないのだ。経産省と密接に協力すべきにも関わらず、「省益」に拘った。財務省と経産省は、定期的な人事交流を行い、お互いの主張を理解し合う努力が不可欠であろう。

     

    (7)「ただし、今後も継続的に「市場の信認」を確保できるのかは不透明だ。目の前には肝いりの重要分野への投資に加え、防衛費の増額、消費減税など巨額の財源を必要とする政策が待ち受ける。投資の一部を政府債務残高とは別枠の「つなぎ国債」で賄うにしても、その妥当性を市場がどう判断するかは見通せない。高市政権は財政運営の目標に「債務残高対GDP比の安定的低下」を掲げたが、前出の関係者は「金利上昇によって国債の利払い費がかさめばかさむほど、数値は悪化し自身の首を絞めることになる」と指摘した。「高市氏は結局、ずっと『市場の信認』に縛られることになる」

     

    名目成長率が、市場金利を上回っている限り、対GDP比の国債残高は減少する。高市氏が、名目GDP成長率3%を維持すると強調している裏には、この「対GDP比の国債残高」問題の意識がある。名目GDP成長率は、市場機能の復活にともない健全に推移している。

     

    25年の名目GDPは、663兆円である。IMF(国際通貨基金)予測によれば、27年には700兆円になる。さらに、32年には800兆円だ。この「100兆円台」の刻みでみた日本の名目GDP額成長の増加幅は、かつての高度経済成長期と同等で推移している。日本経済の成長軌道は順調である。願わくば、高市氏が発言トーンを落として、市場重視を公の場で繰返し発言する以外に、かつての失言をカバーできないであろう。

     

    テイカカズラ
       

    円相場は、6月30日に一時、1ドル=162円台に下落した。1986年12月以来およそ39年半ぶりの円安・ドル高水準だ。この底流には、高市首相が先の衆院選中に「円安も良いところがある」と発言し、市場は円安歓迎論者の烙印を押している。この「失言」に今、当の高市氏が苦しんでいる。

     

    『ロイター』(6月30日付)は、「骨太に浮かぶトラスと財務省の影 『市場の信認』こだわる高市首相」と題する記事を掲載した。

     

    高市早苗首相が就任後初めて取りまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案が明らかになった。毎年、時の政権の意向を色濃く映す方針だけに、その内容はマーケットからも注目を集める。今回、特に目立ったのが「市場の信認」への言及だ。複数の政府関係者への取材から骨太の方針ににじむ政権の思惑を読み解くと、高市氏が首相就任以来、念頭に置く二つの「影」が見えてくる。

     

    (1)「ロイターが入手した原案には、「市場の信認」との表現が10回ほど登場する。昨年、石破茂前首相が取りまとめた同方針が1回しか触れなかったことを考えると、いかに高市氏がこの表現にこだわったのかが分かる。方針の決定過程を知る日本政府関係者は、高市氏が最もこだわった点を三つ挙げた。一つは自身の金看板である「成長投資」と「危機管理投資」を最重要政策に位置付けること。もう一つは2月の衆院選で掲げた消費減税に触れること。最後に、「市場の信認を確保する姿勢」を強調することだ」

     

    市場の信認とは、財政規律に対する市場評価である。これは、「債券自警団」と呼ばれるものである。国債市場は、長期保有が前提になるだけに、政策がインフレ容認傾向を見せた途端に売られて、市場金利が高騰する。あのトランプ氏すら、この動向に音を上げて政策変更を余儀なくされたほどだ。時の権力者も、この債券自警団には勝てないのである。高市氏が、市場の信認を気にするのは当然だ。

     

    (2)「首相官邸関係者は、高市氏が積極財政的な政策を前面に掲げる一方で、為替や国債市場の動向に気を揉んできたと語った。「政権発足時に定着した積極派のイメージはなかなか取り除けない」としつつ、市場との対話を重視するメッセージの発信に注力してきたと説明。別の政府関係者は「市場の混乱は政権批判にもつながる。首相は自身への批判を最も恐れているのではないか」と述べた」

     

    高市政権が、神経を払うのは国債市場と為替市場である。異常円安は、物価高騰に繋がるので国債市場へ影響する。高市氏が、衆院選中に「円安にも良いところある」と発言したことは致命傷になっている。この失言が、高市氏を積極財政論者=円安支持者=金利引上げ反対論者というイメージで括っている。身から出たサビとはいえ、首相発言の重みが響いている。

     

    (3)「確かに高市政権下の予算編成を振り返ると、市場の信認を得ようとした「形跡」が見て取れる。2026年度一般会計当初予算は122兆円超と過去最大に膨み、新規国債の発行予定額は29兆円余りと前年度を上回る一方、公債依存度を24.2%と1998年度以来の水準に抑えた。予算案を審議する2月の特別国会冒頭でも、「財政規律にも十分配慮した財政政策こそが、高市内閣の『責任ある積極財政』だ」とも強調して見せた」

     

    責任ある積極財政は、財政収支を配慮した上での積極財政という意味だ。しかし、市場はそう受け取っていない。物価が値上がりしている状況下で、積極財政は逆という受け取り方だ。しかし、高市政権は積極的な産業政策を行っている。これは、正しい政策である。仮に、「責任ある産業政策」と言葉を換えていれば、イメージは極めて良かったはずだ。言葉一つで、同じ政策でも市場はがらりと変った受け取り方をしたであろう。

     

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    中国は、台湾侵攻作戦に当たり米軍は米本土からかけつけるとの想定で作戦計画を立てているとされる。この間、約1週間の間に戦いに決着をつける「短期決戦」を意図してきた。だが、この中国に都合の良い前提は、在韓米軍の即時出動で「効果なし」となりそうだ。

     

    『中央日報』(6月30日付)は、「米太平洋陸軍司令官、在韓米軍参加の作戦に『中国の台湾侵攻に備えたもの』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米太平洋陸軍司令部(USARPAC)のクラーク司令官が、在韓米軍も参加する域内駐留米兵力の合同訓練「パスウェイズ作戦」について、「中国の台湾侵攻作戦」に対応するためのものだと明らかにした。パスウェイズ作戦は、インド太平洋地域で米兵力と資源が同盟国・友好国を足がかりとして絶えず機動するという概念と結びついている。この作戦が、中国の軍事的脅威に対応するための性格である点を明確にした形だ。在韓米軍が、すでに対中牽制軍事作戦のひとつの軸としての役割をしているという意味にもなる」

     

    在韓米軍は、台湾有事で出動することが明白になった。これまでは、韓国政府の「消極姿勢」で、この種の発言は「大問題」になってきた。今回は、ごく自然に受入れている形である。中国は多分、衝撃を受けているであろう。

     

    (2)「クラーク司令官は23日、米陸主管の朝食懇談会に参加し「前方で戦力を維持するのに必要な要求条件と地形的特性に対する理解を基に、韓国、日本、フィリピン、オーストラリアに事前配備物資を確保することになった」と明らかにした。事前配備物資は、有事の際に米本土から兵力だけ迅速に移動し戦えるよう海外拠点に配備した弾薬、戦車などの装備を意味する」

     

    米軍は、すでに海外拠点に弾薬、戦車などの装備を配備済みとしている。フィリピンが、相当の「備蓄基地」になっているであろう。

     

    (3)「彼は続けて「われわれが望む時間と場所に戦闘能力を投じられるよう戦場戦略を集中させることが最優先課題」としながら具体的にパスウェイズ作戦を例に挙げた。パスウェイズ作戦は、米太平洋陸軍司令部がインド太平洋地域で実施する大規模多国籍合同訓練体系だ。クラーク司令官は、パスウェイズ作戦が年間53回の訓練で構成され、5~6月と9~10月の2つの期間に集中的に実施される点を説明した。その上で、「その理由はまさにその時期が中国本土から台湾に海を渡って侵攻する海上の状態が有利なため」と強調した」

     

    パスウェイズ作戦が、年間53回の訓練で構成され、5~6月と9~10月の2つの期間に集中している。前記の期間は、台湾海峡が季節的に「鎮まる」時期で、中国軍が侵攻作戦を始める時期と想定しているからだ。しかも、年53回(毎週1回ペース)もの「迎撃作戦」を準備している。中国軍の動向は、すでに米軍の作戦に織り込まれている。

     

    (4)「彼はまた、「われわれの最も崇高な任務が戦争を抑止することならば、われわれはパートナーと同盟国に招かれ戦争を抑止するのに有利な位置を先取りできるようにする訓練プログラムを通じて前方に信頼できる戦闘力を維持しなければならない。それがわれわれの最初の任務」と話した。パスウェイズ作戦に対してこれまで米太平洋陸軍司令部は「合同準備態勢を確立すると同時に同盟とパートナー国との信頼を構築し、相互運用性を強化」するための訓練だと説明してきた。クラーク司令官の今回の発言は作戦の性格が対中牽制にある点をより明確にしたものと見る余地がある」

     

    パスウェイズ作戦は、同盟国とパートナー国との信頼を構築し、相互運用性を強化しているという。つまり、米国を軸に多国展開による作戦を準備していることだ。

     

    (5)「パスウェイズ作戦は、韓米合同演習であるフリーダムシールド、フィリピンのバリカタン合同演習など大規模定例演習と連係して米太平洋陸軍司令部配下の兵力が柔軟に移動し演習に参加する方式だ。この戦略の一環で在韓米軍の一部部隊もバリカタン演習などに参加している。パスウェイズ作戦自体は在韓米軍が主導するものではないが、米軍当局次元で海外駐留兵力と物資を効率的に活用する概念と結びついている。台湾海峡有事の際に在韓米軍の兵力または物資が投入される可能性も一層大きくなるほかない」

     

    米軍兵力は、日本・韓国・フィリピン・豪州に常時駐留で約13〜15万人規模に達している。 「インド太平洋の前方展開戦力」としては、世界最大の規模だ。武器弾薬が、すでに台湾に近いフィリピン基地へストックされていれば、瞬時に戦線投入可能である。

     

    (6)「いまは、抑止力強化の役割だが、在韓米軍が含まれたパスウェイズ作戦を米太平洋陸軍司令部が中国の急襲に備えた常時的な対備態勢次元と明確にしたとみる余地があるためだ。在韓米軍公式SNSアカウントがクラーク司令官の対談をリポストした点もこうした脈絡であるとみられる」

     

    韓国は、これまで在韓米軍の台湾有事に出動することに消極的であった。だが、現実問題として中国が北朝鮮と組んで韓国へ侵攻することも想定できる以上、在韓米軍の足を縛る行動が不利益をもたらすという判断に傾いたとみられる。

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    ドイツの開放的経済は、これまで最大の強みだった。今、その開放性が最大の弱点となっている。かつてドイツ製品を大量に買い求めていた中国が、ドイツと同様の製品の多くを、はるかに安い価格で生産している。ドイツは、かつての「上得意先」であった中国の輸入品に溢れかえるだけでなく、他国市場でもドイツ製品を圧迫している。

     

    これは、ドイツ政府にも責任がある。ドイツ企業の中国投資には、投資保証保険を付与していたからだ。投資に失敗してもドイツ政府の保証が得られた。さらに、中国では補助金も給付されるという「おんぶに抱っこ」という甘えがつきまとっていた。こうして、安易な対中投資が大量に行われた。いまそれが、逆転したのだ。ドイツ経済回復の手立ては、中国製品の輸入抑制と労働市場の流動化とされている。いずれも、簡単な問題ではない。

     

    『ウォールストリート・ジャーナル』(6月29日付)は、「ドイツ支えた開放経済、今や最大の弱点に」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツは、同国企業を重要な資源や技術から切り離す保護主義的な措置に対して脆弱(ぜいじゃく)であることを思い知らされた。さらに、イラン戦争によるエネルギー価格高騰からドナルド・トランプ大統領の関税に至るまで、自国の力では制御不能な外部ショックに翻弄(ほんろう)されている。

     

    1)「国営ドイツ復興金融公庫(KfW)のチーフエコノミスト、ディルク・シューマッハ氏は、「ドイツは確かにグローバル化の勝者だった」と述べた上で、「しかし相互依存関係は武器として利用される可能性がある。ルールに基づく秩序がもはや保証されない世界では、グローバル経済に高度に統合されていることが、かえって脆弱性を高めることになる」と指摘した」

     

    ドイツの弱点を見事に言い当てている。余りにも中国市場へ特化し過ぎたことだ。それが、結果として中国に振り回される結果になった。その点、日本は深入りを避けて傷が浅くて済んだ。ドイツは、中国社会の特質を理解していなかったのであろう。

     

    2)「メルツ首相率いるドイツ政府は、企業への減税やエネルギー価格の引き下げ、国防費やインフラ投資の拡大などで成長を後押ししようとしたが、世界的な逆風の中でこれらの取り組みはいまだ実を結んでいない。同国政府は最近、定年を67歳から70歳に段階的に引き上げると発表した。雇用主と従業員が負担する制度を見直すことで、最終的には競争力の向上につながる可能性がある」

     

    定年が、2030年代半ばまでに延長することで労働供給を増やして、 企業の人材不足を緩和し、競争力を維持する狙いだ。ただ、労働供給増は微々たるもので2~3%増と見積もられている。最大の産業政策は、日独共同で「合成燃料」(二炭化酸素ゼロ)の商品化である。EV(電気自動車)によって数十万人の雇用が失われると予測されるだけに、現在の内燃機をそのまま使える合成燃料開発に邁進することだ。一刻の猶予もできない。

     

    3)「比較的低水準にとどまっている失業率や公的債務を除けば、ドイツ経済の主要指標は明らかに不健全な状態にある。大半のエコノミストと政府は、今年の国内総生産(GDP)成長率が1%以下にとどまると予想している。GDP成長率は2019年以降、ユーロ圏全体の成長率を下回っている。投資はフランス、イタリア、スペインで増加する一方、ドイツでは2020年以降減少している。シンクタンクのドイツ経済研究所が今月発表した調査によると、製造業の雇用者数は660万人まで減少し、10年ぶりの低水準となった」

     

    雇用事態は、窮迫している。インフラ投資増も必要だが、産業政策が、企業の活性化を実現する上で最善の政策である。

     

    4)「ドイツ経済が、これほどの深刻な低迷に陥ったのは2000年代初頭以来のことだ。当時は東西ドイツ統一に伴うコストの吸収に苦慮し、厳格な労働法と世界で2番目に高い人件費によって失業率は現在のほぼ2倍にまで上昇していた。2003年、当時のシュレーダー首相率いる政府は失業給付を大幅に削減し、賃金設定における雇用主の発言権を拡大し、減税を実施した。 その結果、わずか2年で失業率は低下し、輸出は急増し、財政は潤った。ドイツは6年連続で、一人当たり輸出額だけではなく、輸出総額でも世界トップとなった」

     

    2003年当時の不況対策は、賃金引上げの弾力化である。つまり、労組の硬直的な賃金引き上げ策でなく、企業の支払能力を加味した柔軟な取組みのほかに、減税を組み合わせた。こういう政策も有効であろう。

     

    5)「複数の調査によると、企業は米国の関税よりも官僚主義を事業活動の最大の足かせと考えている。ドイツ政府は、この分野で一定の前進を示しているが、需要に応じた採用・解雇を困難にしている硬直した労働法制の緩和を求める経済界の声には依然として抵抗している」

     

    ドイツは、制度的に労組の賃金要求など労働条件の改善策で主導権を認めている。ただ、硬直的な傾向もあるので、そこは弾力的にしないと、賃金コストの引上げが経済全体の調和を乱すリスクもある。

     

    6)「KfWのシューマッハ氏によると、ドイツ政府が戦略的産業を守りながら新産業を育成する上で直面する優先課題は三つある。それは、重要な原材料の供給源を増やすこと、新興企業を大企業へと成長させるために利用可能な資本を増やすこと、そして安価な中国製品の流入から自国を守ることだ。ドイツ政府は、国家が支援する中国製品の規制を強化するという欧州連合(EU)の提案に歩み寄る姿勢を示している。しかし、多くの企業が依然として中国からの調達に大きく依存しているため、ドイツは潜在的な報復措置に耐えられる準備がまだ整っていないと当局者らは述べている」

     

    合成燃料こそ最適である。ドイツ最大の産業は、自動車産業である。ここをEVで荒らされると既存の内燃機が潰される。目的は、二酸化炭素ゼロ化である。合成燃料は、大気の二酸化炭素を吸収し、これに「グリーン水素」を加えれば新燃料が完成する。日本においては、技術的な見通しが立っている。後は、頭の切替えだけだ。

     

     

     

     

     

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    ロシアのプーチン大統領が、2014年にウクライナからクリミア半島を奪取した際、その併合はロシア国内で帝国の「王冠の宝石(最も貴重なもの)」の帰還として広く称賛された。しかし今や、クリミア半島は歴史的な偉業どころか、プーチン氏の首に巻き付いた重荷と化し、戦争を継続する同氏の能力を脅かしかねない急所となりつつある。

     

    英誌『エコノミスト』(6月27日号)は、「クリミア混乱、陰るロシアの威信」と題する記事を掲載した。

     

    クリミアはここ数カ月、絶え間なく攻撃されてきた。軍部隊、鉄道駅、発電所が標的となり、住宅が被害を受けることもある。例外は保養地ヤルタだ。緑豊かな山々に守られ、軍事目標も見当たらない。子どもたちが桟橋から海へ飛び込み、浜辺のデッキチェアは保養客で埋まる。だが、クリミアのそれ以外の地域は戦場と化している。6月20日夜、ウクライナのドローンは送電線を攻撃し、半島東端ケルチの石油ターミナルを爆破、貨物フェリーに損害を与えた。相次ぐ攻撃でフェリー航路は停止され、半島の主要な補給路の一つが断たれた。

     

    (1)「半島では停電が頻発している。621日、クリミアの首長は全ガソリンスタンドで一般向け燃料販売を一時停止すると発表した。ロシア側の行政区分で別扱いのセバストポリも販売停止に踏み切った(編集注、ロシア側当局は26日、クリミアとセバストポリに非常事態を宣言した)。一方、ウクライナのドローンはロシア本土の奥深くにも及んでいる。ここ数日にはシベリアの製油所を攻撃し、モスクワにも大きな衝撃を与えた。6月16日と18日のモスクワ攻撃では、煙の柱が住宅地の上に立ち上った。石油タンクの蓋が爆発で吹き飛ぶ動画はネットで拡散した。ロシアの半数を超える地域でガソリン販売が制限されている」

     

    ウクライナのドローン攻撃で、ロシアの製油所が炎上している。ロシアの半数を超える地域で、ガソリン販売が制限されているほどだ。原油産出国でガソリンの販売制限である。

     

    (2)「クリミアへの攻撃は大きな意味を持つ。同半島はロシアの橋頭堡(ほ)であり、軍の補給拠点でもある。とはいえ、ドローン攻撃で、黒海艦隊の残る艦艇はより遠くの港へ追いやられている。クリミアは、ロシアにとって精神的・象徴的な意味も大きい。ロシアが2014年にこの地をほぼ無血で制圧し、一方的に併合したことは、プーチン大統領の帝国的野心の勝利であり、同氏の人気を押し上げた。ロシア帝国とソ連の宝石とみなされてきたクリミアを手にしたことは、ロシア復活を象徴するものだった。当時、プーチン氏はクリミアを「多面的でありながら一体であるロシア民族の形成における精神的な源泉」と呼んだ。同氏はウクライナによる最近の攻撃について、ほとんど沈黙している。国営メディアも同様だ」

     

    クリミアは、ロシアの「宝石」にも当たる場所だ。ロシア復活を象徴している。その象徴が今、大きく揺れている。

     

    (3)「ウクライナの攻撃で、ロシア軍の防衛力に対する住民の信頼は揺らいでいる。だが、ロシアへの忠誠心まで揺らいだ兆しはない。ウクライナ統治への復帰を悪夢と見る人もいる。ウクライナ当局者が報復を示唆してきたためだ。住民たちはまた、周囲からロシアへの忠誠を疑われ、告発されることも恐れている。ベルゴロド州やクルスク州など他の前線地域に比べ、クリミアでは、ウクライナへの協力者をあぶり出すロシア側の防諜(ぼうちょう)キャンペーンがいっそう露骨だ。「敵のために働いているのか。祖国を売り渡すつもりか。ウクライナ側の指示役からの命令を待っているのか。それなら、こちらが行くぞ」――。クリミアのラジオ番組「同志少佐、捜査をお願いします!」では、こんな文句が流れる」

     

    クリミア住民は、ウクライナへの寝返りを極度に警戒されている。また、周囲からロシアへの忠誠を疑われ、告発されることも恐れている。「宝石の住民」は、地獄絵に晒されているのだ。

     

    (4)「戦争への不満はクリミア以外にも広がっている。ロシア支配層の間では、この戦争を袋小路と見る向きが強まっている。ウクライナ東部ドンバスで消耗を伴うほぼ膠着状態が続くなか、26年春にはロシア軍が急速な前進に転じるという政府の約束は、過去数年と同じく実現しなかった。サンクトペテルブルクやモスクワの製油所を狙ったウクライナの攻撃は、一般のロシア人にも戦争の影響を身近に感じさせている。治安機関によるネット遮断で、市民生活にも支障が出ている。ここ数カ月、国営世論調査機関の調査では、プーチン氏の人気低下が繰り返し示されている。支持率の水準はあてにならなくても、低下傾向は示唆的だ。与党・統一ロシアが5月下旬に秘密裏に実施した調査でも、参加者の大半は勝敗にかかわらず戦闘終結を望んでいた」

     

    国民の間では広く「戦闘終結」を臨んでいる。すでに、開戦後4年4ヶ月も経っている。国民生活へは、戦争の影が強く及んでいるのだ。

     

    (5)「大統領にとって最大の問題は、死傷者数の増加でも、ロシア経済への打撃でも、弾圧の悪化でもない。この戦争の成果として示せるものが何もないことだ。失敗し、弱さを見せているとの印象は、プーチン氏の正統性を揺るがす。ロシアの歴史が示すように、弱いと見なされた指導者が許されることはめったにない。いま、クリミアにもロシア全体にも広がるのは、戦争への疲弊感だ。ロシアを支持する人々でさえ、戦争の目的を見いだせない」

     

    プーチン氏は、開戦1週間でウクライナ侵攻が終わるものと想定していた。それが何と、4年以上経っても戦線は膠着状態である。この戦争は、どのように終わるのか。プーチン氏は、自らの汚名を避けるために「核」を持ち出すのでは、と秘かに恐れられてる。


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