米国・イラクの軍事衝突以降、中国の原油輸入量が減っている。これが、国際原油市況の調節弁になったと指摘されている。現に、6月の原油輸入量は日量715万バレルと10年ぶりの低水準に落ち込んだ。衝突開始直前の2月の1258万バレルと比べると、実に43%もの減少である。この一方で、原油輸入減の穴埋めに石炭消費量が増えている。これによって、大気中の有害物資(PM2.5濃度)が増えた。国民の健康を犠牲にして原油輸入減に走った形である。
中国の原油輸入減が、国際原油市況を安定させるためだけが目的であったのか。外貨準備を減らさないという切羽詰まった目的もあったはずだ、原油市況を安定という「きれい事」だけとは思えない。原油不足を理由に、ASEAN(東南アジア諸国連合)への石油製品輸出を打ち切っているからだ。これによって、自らのASEAへの販売権益を失い、日本が獲得している。こういう「下手な戦術」を引き起した理由は、外貨節約にあったとみるべきであろう。
『フィナンシャル・タイムズ』(7月14日付)は、「中国の大気汚染、一時改善も中東衝突で再び悪化 石炭火力に依存」と題する記事を掲載した。
最近、中国北部の一部の都市では、石炭火力発電や好ましくない気象条件の影響で再び汚染が広がり、これまでの成果を揺るがしかねない事態となっている。
(1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が2000年以降のデータを分析したところ、広大な国土を持つ中国は、有害な微小粒子状物質を13年の最悪水準から、25年末までに約60%削減することに成功した。その結果、大気汚染に起因する入院件数は30%減少した。中国は大気汚染の平均濃度を30年までに1立方メートルあたり30マイクロ(マイクロは100万分の1)グラムとする国家目標を掲げる。現在、目標をわずかに下回る水準まで低下し、国際的な基準に近づきつつあるが、依然として世界保健機関(WHO)が示すガイドライン値の約6倍の高さだ(編集注、中国は26年からの5カ年計画で30年までの都市部の汚染濃度目標を27マイクログラム以下としている)」
中国の大気汚染度は、依然として世界保健機関(WHO)が示すガイドライン値の約6倍の高さである。
(2)「有害物質は、直径2.5マイクロメートル以下であることからPM2.5と呼ばれ、自動車の排ガスや工場の排出物が主な発生源だ。PM2.5の直径は人間の髪の毛の30分の1で、肺の深部にまで到達し、血液の循環を通して臓器に健康被害をもたらす危険性がある」
有害物質は、あの有名な「PM2.5」である。臓器に健康被害をもたらす危険度が高い。
(3)「中国は26年3月、大気汚染の平均濃度を35年までに25マイクログラムに引き下げる目標を掲げた国家大気基準を導入した。F Tの分析によると、中国で現在の基準を満たす地域に暮らしていた住民の数は15年には8700万人だったが、24年には7倍以上の6億6400万人に増えた。それでも国民の半数以上はいまだに有害なレベルの大気汚染にさらされており、その大半は人口1000万人以上の都市で暮らしている」
国民の半数以上は、いまだに有害なレベルの大気汚染にさらされている。それにもかかわらず、原油輸入を減らして石炭依存度を高めた。こういう弊害が、現実に起っている。
(4)「中国の汚染改善は、主に政府の指示によって進められた。国内で増え続けるエネルギー需要に対応しながら、再生可能エネルギーで世界をリードする存在となるのを後押ししてきた。一方、世界最大の温暖化ガス排出国のままで、発電量の多くを環境負荷が最も大きい燃料の石炭に依存している。フィンランドのシンクタンク、エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)のデータによると、中国では26年1〜5月に北部6都市のPM2.5濃度が平均11%増加し、他の地域でも濃度の改善ペースが減速した。中東の軍事衝突でより安価で環境負荷が大きいエネルギー源(編集注:石炭)に依存する動きが広がった時期と重なる」
中国では、26年1〜5月に北部6都市のPM2.5濃度が平均11%増加した。石炭依存度を高めた結果だ。
(5)「発電量のうち再生エネの割合は03年には15%程度で、ほとんどが水力発電だった。25年には37%まで上昇した。23年以降に太陽光発電が普及し、発電量が倍増した。同時期に風力発電は28%、水力発電は14%増えた。対照的に化石燃料による発電は24年以降、約1%減少している。15年以降で初めて石炭火力発電が減少に転じたのが主因だ」
再生エネの割合は、25年には37%まで上昇した。化石燃料による発電は24年以降、約1%減少した。
(6)「米調査会社ブルームバーグNEFの報告書「ニュー・エネルギー・アウトルック2026」によると、報告書は中国の排出量が50年までに「ピーク時と比べて50%減るが、依然として米国や欧州の現在の排出量を大きく上回る水準となる」と予測する。中国にとって最大の課題は石炭への依存だ。豊富で安価な石炭の供給があるため、化石燃料の中で最も大気を汚染させるにもかかわらず、エネルギーの多くを石炭火力で生み出している」
中国は、原油輸入減のバッファーに石炭を利用している。この「代替材」がある限り、原油国際市況を操作すべく自国原油輸入量を減少させるであろう。世界は、こういう「裏技」を知らずに、中国の原油購買姿勢を褒めている。




