中国共産党中央政治局は、7月30日開いた会議で、大規模な追加景気対策は計画を見送った。代って、年内に予算計上済みのインフラ事業は、支出を加速する方針である。既存インフラ支出の加速と大規模刺激策の見送りは、中国経済が「手詰まり」状態にあることを鮮明に示している。もはや、「大規模な景気刺激が打てない」構造的限界を示したという意味である。
『ロイター』(7月30日付)は、「中国、既存インフラ支出加速へ 大規模刺激策は見送り」と題する記事を掲載した。
中国共産党中央政治局は30日開いた会議で、景気減速への対応として、年内に予算計上済みのインフラ事業への財政支出を加速する方針を示した。大規模な追加景気対策は計画しない。
(1)「OCBC銀行のアジア・マクロ調査責任者トミー・シー氏は「大型の政策『バズーカ』はなかった。政策支援は大規模な景気刺激ではなく、成長の下支えに重点を置くというわれわれの予想におおむね沿った内容だった」と述べた。「政策手段にはなお柔軟性が残されているが、第3・四半期は既存の政策資源を速やかに投入することが焦点になりそうだ」と語った」
4~6月期の実質GDP成長率が、前年同期比4.3%まで低下している。前期比の伸び率を年率換算した成長率は3.6%程度と4%割れである。それでも、政治局は「既存インフラの支出を加速するが、大規模な追加刺激は行わない」としている。インフラ支出の繰上げ効果は、通年でみれば変らないことだから、経済成長押し上げを諦めたと言える。財政支出余力がないことを物語っているのだ。経済減速が、イラン戦争による原油価格上昇というコスト・アップ要因であることから刺激策を諦めたのであろう。
(2)「共産党の最高意思決定機関である政治局は会議で、「経済が直面する困難と課題」を認めた。会議の概要によると、中国は財政支出のペースを加速させる必要があるとした。利益を犠牲にして市場シェアを争う企業間の「内巻」競争について、政治局は「引き続き総合的な是正を進める」と表明した」
企業の過剰競争が、コスト・アップ分の価格転嫁を阻止して、企業利益が喰われている。こういう結果から言えば、この不条理な競争を止めることが景気浮揚の要因である。だが、地方政府の補助金支給という「テコ」が効いているので、価格競争が止らないという構造的な景気下押しとなっている。要するに、統制経済がもたらした最大の矛盾に巻き込まれている。これが、「共産主義経済」の実態である。
(3)「大半のアナリストは、予算計上済みの国家インフラ事業を加速させれば、財政赤字を拡大させることなく今後数カ月の成長を安定させられるとの見方で一致している。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのシニアエコノミスト徐天辰氏は、「中国にはなお十分な財政余力がある」と述べた。JDドットコムのチーフエコノミスト沈建光氏は、上半期の国債発行と歳出が計画を下回るペースだったため、当局には下半期に歳出を加速させる余地があると指摘した」
財政支出時期が、繰上がっても追加予算がなければ、通年ベースでは何も変っていないことだ。一日三食と決められているが、昼までに全て食べてしまえば、夜の食事がないのと同じことである。
(4)「沈建光氏は、政治局が「着実に推進する」と表明した「六つのネットワーク(六網)」構想に支出が集中するとみている。これは水利ネットワーク、物流網、地下パイプライン、送電網、通信網、コンピューティング能力拠点にまたがる事業を指す。国営メディアによると、中国政府は今年、これらの事業に約1兆ドルを投じる計画だ」
既存インフラ(六網:水利・物流・地下パイプライン・送電・通信・コンピューティング)に約1兆ドルを投じる計画という。これらは、新しい成長エンジンでなく、景気の底割れを防ぐための延命策にすぎない。「内需が死んでいるので、公共事業で時間を稼ぐ」という構図である。
(5)「新華社によると、政治局は内需拡大に取り組み、「重点層への雇用支援を強化し、柔軟な働き方や新たな雇用形態の労働者の権益を保障する」と表明したが、具体策は示さなかった。エコノミストは、消費者の手元資金を増やす抜本的な政策が打ち出されるかについて、依然懐疑的だ。ピンポイント・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト張智威氏は、「発表文は内需拡大の重要性にも言及したが、所得の伸びを高めるより、消費者向けの商品やサービスの供給改善に重点が置かれているようだ」と述べた」
景気回復の「正道」は、消費者の所得を増やす政策である。まず、社会保障を増やして国民の生活不安を取り除く。こういう「迂回策」が必要である。だが、政府に実施の方針はない。それどころか、軍備拡大によって周辺国への威嚇を「優先」させている。政策順位を間違えているのだ。




