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中国ファーウェイ(華為)製品には、「バックドア」が仕組まれているとの見方は定説になっている。各国の防衛専門家が、いずれもそれを立証しているからだ。これを否定しているのは中国だけである。

 

米国は、次世代通信網「5G」にファーウェイ製品が採用されると常時、各国の軍事秘密情報が北京に漏洩するとしてNATO(北大西洋条約機構)加盟国へ警告している。この警告は一再ならず行なわれているが、各国へ浸透していないのが実態だ。ファーウェイが破格の値段で売り込んでいることと、「4G」がファーウェイ製品であることも理由である。

 

ファーウェイの「5G」が、バックドアを仕組んでいることを「発見」したのは豪州である。昨年1月だ。驚いた豪州が、すぐに米国へ通報したものの、当初はなかなか信じなかったほど巧妙であったという。米国も検証の結果、バックドアの存在を把握。「フアイブ・アイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランドで構成される諜報機関の機密情報を共有。最近、日本も参加したとされる)が、まずファーウェイ「5G」の不採用を決めた。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月30日付)は、「トランプ氏、5G整備で対中警戒要請へ NATO各国に」題する記事を掲載した。

 

米政府高官は29日、トランプ大統領が1234日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、次世代通信規格「5G」の整備をめぐり中国のリスクを警戒すべきだと主張すると語った。米政府は中国の通信機器メーカーが同国政府のスパイ活動に協力していると主張しており、トランプ氏は軍事機密が中国に漏洩しかねないとの懸念を示す見通しだ。

 

(1)「米政府高官は、首脳会議でのトランプ氏の「優先課題」について中国への対応をあげた。具体的には5G整備をめぐり「(加盟国は)中国共産党によって一般市民のデータなどが吸い上げられる事態を望んでいない」と指摘。中国の通信機器メーカーに整備を委ねるべきではないとの見方を示した。港湾などの重要インフラに対する中国からの投資にも警戒が必要だと指摘した」

 

中国側に言わせれば、機密情報を窃取する理由がある。中国の革命理論によれば、資本主義国は打倒すべき対象である。中国に敵対する勢力である以上、これを打倒・殲滅する必要上、機密情報を北京に吸い上げるというのだ。こういう中国の身勝手な理屈から防衛するには、情報遮断しかないことも事実。中国に情報を与えないことが、身の安全を守る鉄則になる。

 

中国の革命理論は、決して破棄されることはない。中国共産党が存続する以上、革命理論は「憲法」の役割を果たすからだ。

 

(2)「NATO10月下旬の国防相理事会で、通信インフラの整備で加盟国に求める共通の安全要件を改定することで合意した。5Gを含む通信インフラの脆弱性の検証などを各国に求めるもので中国を念頭に置いた措置との見方が多い。首脳会議でも共通要件の改定を確認する見込みだ。中国政府はスパイ活動を一貫して否定している」

 

国防相段階では、ファーウェイ「5G」が危険な存在であることを認識するようになってきた。問題は、一般の政治指導者である。中国当局からかなり「洗脳」されている。特に

ドイツのメルケル首相は反米意識も手伝い、米国のファーウェイ製品警戒論に懐疑的な言動を繰り返している。ファーウェイ製品は、技術的な面で安全保障に関わる問題だけに、専門家に任せるべきテーマであろう。一般の政治家が介入すべきテーマではない。

 

(3)「トランプ氏はNATO首脳会議で軍事費負担を国内総生産(GDP)の2%以上に引き上げる目標を着実に達成するよう各国に改めて求める。首脳会議に合わせ、フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相らとの2国間会談も予定している」

 

トランプ氏は、かねてから防衛費の拡大を求めている。現状では、米国の負担でNATOが運営されている。各国に応分の負担を求めている理由だ。具体的には、軍事費負担を対GDP比2%以上にするようにする要求である。

 

この背景には、アジアでの対中国防衛の要になる「インド太平洋戦略」が動き出していることがある。中国の常識を逸した軍拡スピードから見て、アジア覇権確立の目的は確実である。これを足がかりに、世界覇権で米国と対峙すると「夢物語」を持っている。米国が、これを平和的にどう断念させるか。これが、現在の米中貿易戦争の目的だ。中国を経済的に追い込むことである。