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人間誰でも、常に思っていることは、つい喋ってしまうものだ。文大統領は、インタビューで「去年、一番残念だったことは何かと聞かれ」、その答えが「北朝鮮」と一発回答。これが報じられるや、ネットでは「不満の声で一杯」という。一国大統領であれば、国内問題を答えるべきだったであろう。

 

文氏にとっては、北朝鮮との間が上手くいくことが最善のことらしい。5200万国民の暮らし向きが良くなるかどうか、それは大したことではない。それよりも、南北交流の実現で、民族統一への足掛かりを固めたい。それが、最大の願いであるようだ。

 

文氏は、学生時代から北朝鮮の「チュチェ思想」を信奉してきた。現在の大統領府秘書官は、当時の同志である。一丸となって、南北交流へ政治生命を賭ける集団だ。学生時代の意識のままであるから、「韓国経済をどうするか」などという「夢のない話「に乗るはずがない。年齢を重ねても、政治の夢は「南北統一」に昇華されているのだ。ある意味で、「おめでたい集団」である。

 


『レコードチャイナ』(1月27日付)は、「文大統領が昨年最も残念だったことは? その答えに韓国ネットは不満」と題する記事を掲載した。

 

韓国『MBC』(1月24日付)よると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が昨年最も残念だったことは「ハノイでの米朝首脳会談の決裂」だと述べた。

 

(1)「記事によると、文大統領は同日、SBSラジオ番組との電話インタビューに応じた。「昨年最も残念だった、悔いがあることは何か」との質問に「国民の暮らしがより良くならなかったことも残念だが、特に残念だったのは米朝対話がうまくいかなかったこと」「ハノイでの会談が成果なく終わったことが何よりも残念だった」と答えたという。また、「米朝対話に進展があれば、朝鮮半島の平和も南北協力も実現が早まった」「故郷と家族を恋しく思う離散家族にも希望を与えることができた」とも話した」

 

文大統領による北朝鮮への思いは、両親が北朝鮮出身ということが大きな影響を与えているだろう。文氏が子どもの頃、両親から「故郷」北朝鮮への望郷の念を聞かされ育ったことは想像に難くない。父親は地元・農協に勤めており課長職であったという。戦前は、それなりの資産家であったに違いない。農協で課長を務めるくらいだから最低限、「中等教育」は受けている。それが、朝鮮戦争で韓国へ逃げてきた身だから、裸一貫での再出発である。韓国では随分、生活に苦労したと伝えられている。父親は商売が下手で失敗、母親が行商で生活を支えたという。その苦労が、北朝鮮への思いとなって子どもたちに話したであろう。

 

文氏は、こういう話が「擦り込み現象」になって、何はともあれ「北朝鮮」といことに結びつくのだ。個人的な北朝鮮「望郷の念」が、南北統一論へと飛躍している。純粋な昔の思いが、他の重要項目を忘れ大統領の主要関心事になってしまったのだ。

 

(2)「さらに、自身も2004年の南北離散家族の再会行事の際、母親を伴い叔母(母の実妹)に会ったことに言及し「人生で最高の親孝行になったのではと思う」と語りながらも、「母が元気なうちに故郷に連れていくという約束を果たせなかった」と悔いをにじませたという」

 

下線部分は、38度線で仕切られた南北朝鮮の悲劇が、そのまま伝わってくる話だ。文氏は、この思いを背負って南北統一に賭けている。北朝鮮の専制体制を相手にして、統一が可能と見ているのだろうか。冷静な目で見れば、きわめて困難である。そのために、韓国国民の生活を犠牲にすることは絶対に許されるはずがない。文氏には、そういうバランス感覚が不足している。その意味では、真の政治家とは言い難いのだ。

 

(3)「この記事に、韓国のネットユーザーからは、次のような批判が殺到した。

.国民の暮らしより、北朝鮮の心配だなんて
.国民よりも北朝鮮が優先だと自白したな

.北朝鮮、北朝鮮って、いい加減にしてほしい

.何があっても結局は北朝鮮か

.最も残念なことは、前の大統領選挙だよ」

 

ネットの批判は、正直である。韓国国民にとっては、北朝鮮よりも日々の暮しをどうするか。それが、焦点になっている。就職問題が、最も悩める問題であろう。労組や市民団体は、今や体制派である。生活の苦労はない。これら体制派は、政府が最低賃金の大幅引上げや、太陽光発電補助金で生活を保証してくれる。文政権は、打ち出の小槌である。一般国民は、こういうアンバランスな政治に嫌気が差している。文大統領は、それに気付いていないのだ。結果は、4月の総選挙にどう表れるか、だ。