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韓国の家計債務が急増している。不動産価格高騰による担保価値増加が債務を増やすという悪循環に陥ったものだ。韓国銀行(中央銀行)が、28日に発表した報告書「金融・実体連係を考慮した金融不均衡水準評価」で明らかになった。

 

韓国の家計は、債務「不感症」の傾向が強い。これは李朝時代からの特色であり、持ち金すべてを散財することに抵抗感がない国民性を反映している。参考までに、日韓の家計債務残高の対GDP比が、それを明確にしている。

 

家計債務残高対GDP比(%)

        韓国     日本

2015年  83.10   56.70

  16年  87.30   57.10

  17年  89.40   57.60

  18年  91.90   58.40

(資料;国際決済銀行)

 

日韓の家計債務残高対GDP比を見れば、一目瞭然で韓国が飛び抜けて高いことが分かる。日本は、1999年の72.20%がピークであるが、韓国に比べればきわめて慎重な家計行動であることが分かる。国民性の違いであろう。

 

韓国銀行が、家計債務残高の増加に警鐘を鳴らしているのは、家計債務の破綻が金融危機を招くからだ。本来、家計は貯蓄の源泉である。韓国はそれが逆になっており「債務のプール」である。

 


『韓国経済新聞』(1月30日付)は、「家計負債赤信号、韓国の金融不均衡拡大」と題する記事を掲載した。

 

韓国の家計負債が急速に増え、金融不均衡水準が2017年7-9月期から昨年4-6月期まで上昇が続いていることがわかった。「金融不均衡」は家計・企業負債水準が国内総生産(GDP)をはじめとする実体経済の水準と比較してどれだけ過度に増えたかを算出した指標だ。

韓国銀行が28日に発表した報告書「金融・実体連係を考慮した金融不均衡水準評価」を見ると、次のような推移である。

 

2017年7-9月期 0(正常)

2019年4-6月期 25(危機)

韓国金融部門の危険レベルを示す金融安定指数は、次のように分類されている。

8未満が「正常」

8~22が「注意」

22以上が「危機」と区分される。

 

上述の通り、2019年4-6月期は25になったから、「危機」に分類される。金融安定指数が注意段階以上の区分に入ったのは3年6カ月ぶりだ。金融不均衡水準は2008年の金融危機当時が100だった。これをピークに下落が続き、2010年からはマイナスを記録した。

 

(1)「報告書は、「金融不均衡が蓄積されるほど金融システムが中長期的に金融危機につながったり、景気低迷に陥る可能性が大きくなる。現在の水準は金融不安の兆候とは解釈しにくいが、金融システムの脆弱性が大きくなったとはみることができる」と評価した。家計信用が過度に増えれば中長期的に経済成長率を引き下げ、金融危機発生の可能性も高まると診断した

 

金融不均衡水準評価では、昨年4~6月期に「25」となり、「危機」に分類されている。一般に家計債務残高の増加は、中期的に消費支出を抑制するので個人消費が振るわず、GDP成長率を引き下げる。この分かりきった理屈から言えば、不動産価格高騰後の経済は逆転して不振に陥る。韓国は、その落し穴にはまるリスクが高まっている。

 


(2)「過度な家計負債増加傾向が、不動産価格上昇につながり金融不均衡をさらに深めかねないと指摘した。「不動産価格上昇住宅担保融資など家計向け貸付増加不動産価格上昇」と続く悪循環が形成されかねないためだ。報告書は、「住宅価格上昇への期待感が広がれば住宅担保融資が増え、それだけ住宅価格が上がる。韓国も最近は住宅価格と家計信用規模が同時に上昇している」と評価した」

下線が核心部分である。「不動産価格上昇住宅担保融資など家計向け貸付増加不動産価格上昇」をもたらすが、これは不動産バブルに繋がるものである。バブルとは、ファンダメンタルズを逸脱した価格形成である。それ故、必ず「破裂」するもの。永遠に上がり続ける価格は存在しない。寿命がある。

 

現在、ソウル市内の住宅価格は頭打ち状態である。投機目当てで買った不動産価格が下落すれば、債務返済が困難になる。韓国は、この状態に入り込んでいる危険性が高い。韓国経済は、もう一つ厄介な荷物が転がり込んできた。