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WHO(世界保健機関)は、1月23日の会合で「異常事態」宣言を見送った。この時は、長時間の会議であり内部の議論が割れていたことを伺わせた。あれから1週間後の30日、今度は「異常事態」宣言を発表するに至った。とんだ、「誤診」をしたものである。1週間の遅れで、世界中に感染者を激増させた。

 

「異常事態」の決定を1週間遅らせた裏に、中国の裏工作があったと見られる。WHOから「異常事態」宣言が出れば、各国は中国に対して国境閉鎖などをやりやすくなって、中国のメンツが丸潰れになることを恐れたのであろう。

 

WHOの日本側委員は、「異常事態決定が遅れた」と発言している。23日のWHO会議では、「異常事態」宣言賛成派であったと見られる。

 

『サンケイビズ』(1月30日付)は、「WHOもフル活用、新型肺炎、中国の本音は外国人退避阻止か」と題する記事を掲載した。

 

(1)「WHO事務局長のテドロス氏は、エチオピアの元保健相と元外相を経験している。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の下でエチオピアに鉄道建設など多額の投資をしている。また中国に協力的な外国要人は、引退後も中国の友人として手厚くもてなされる。テドロス氏は、「中国の体制の力強さと措置の有効性はまれに見るもので感服する」と述べ、中国の政治体制の賛美まで行うサービスぶりだった」

 

中国の「札束外交」によって、エチョピアは籠絡されている。テドロス氏は、エチョピア閣僚当時、その恩恵に浴していたのであろう。WHO事務局長になってもその「恩顧」に応えて、中国有利の発言をしていると見られる

 


(2)「駐インド中国大使の孫衛東氏は28日、テドロス氏の「過剰反応」発言を引用した上で「WHOは中国が感染拡大を防ぐ能力があることを確信している」とツイート。インド政府が自国民退避に向けた協力を中国側に求めている中での発言だけに「中国政府は明らかにインドの退避措置を思いとどまらせようとしている」(インド・メディア)と不満の声が上がっている」

 

 

(3)「新型コロナウイルスによる肺炎の感染拠点となった中国湖北省武漢から各国がチャーター機で自国民を退避させている措置について、中国当局にはそうした動きを拡大させたくない本音がにじむ。外国人の脱出が相次ぐ事態は、中国の対応能力に対する国際社会の不信感を国内外に示すことにもつながりかねないためだ」

 

中国は、各国が自国民の退避帰国を苦々しく思っている節が強い。中国国内で「大したことではない」という安心感を植え付けるには、WHOに「異常事態」宣言を出させない方向へ持って行く必要があると考えたに違いない。日米のチャーター便乗り入れは阻止できなかったが、韓国に対して度重なる飛行計画の変更を余儀なくさせて振り回した。「一度に2機来るな」「昼間に来るな」という条件をつけたのである。

 

中国が、小手先によってWHOの「異常事態宣言」を1週間遅らせても、効果はなかった。感染者は激増して、中国の立場は一層苦しくなっているからだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月31日付)は、「後手に回ったWHO、緊急事態宣言遅れに中国の影」と題する記事した。

 

世界保健機関(WHO)は30日、中国を中心に猛威をふるう新型コロナウイルスによる肺炎について緊急事態を宣言した。1週間前には「時期尚早」として見送ったが、予想を上回る患者数の急増を受けて方針転換した。対応が後手に回った背景に、WHOに対する中国の影響力を指摘する声がある。

 

(4)「30日の記者会見で、WHOのテドロス事務局長は、中国への配慮を繰り返した。「新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい」、「中国国外の感染者数が少ないことに関し、中国に感謝しなければならない」とも述べた。23日の前回会合では中国国外で人から人への感染が確認されていないことなどを理由に宣言を見送った。だが1週間で中国を中心に患者数は10倍以上に急増し、9000人を超えた。「遅きに失したのではないか」。ジュネーブの外交筋からはこんな声も漏れる」

 

下線部は、完全に見当違いのことを発言している。中国が、新型ウイルスを引き起こしたことが問題である、その中国に対してなぜ感謝するのか。話は逆なのだ。

 

(5)「WHOの慎重姿勢の背景にささやかれるのが中国の存在だ。異常事態宣言で観光や物流が止まり中国経済が悪化すれば、習近平(シー・ジンピン)指導部に対する中国国民の不満が高まりかねない。習氏は28日に訪中したテドロス氏に「WHOと国際社会の客観的で公正、冷静、理性的な評価を信じる」と述べ、宣言回避に期待をにじませた。世界の国内総生産(GDP)に占める中国の割合も、重症急性呼吸器症候群(SARS)がまん延した2003年は4%だったが、今は17%に拡大している。WHO関係者は「(新型ウイルスの)感染力だけでなく、経済的な影響も含めて十分に検討する必要があった」と認める

 

GDP世界2位の中国が、SARS(2003年)と今回の「新型ウイルス」と二度も、野生動物のウイルスを原因とする世界的感染事故を引き起こした。WHOは、その責任を問わなければならない。感謝どころの話でない。テドロス事務局長の認識は間違っている。今後の世界経済の混乱を考えれば、WHOはそれなりの対応を中国に求めるべきである。