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最近の日韓関係は、静かになっている。これが平常な外交関係であるが、依然として爆弾は横たわっている。徴用工賠償問題である。差し押さえられている日本企業の資産が、4月頃に売却期限が到来する。韓国裁判所が売却を認めれば、日本は対抗上の措置として、「外交保護権」を行使する。

 

韓国裁判所も、こういう国際法上の手続きを熟知しているはず。だから迂闊なことはできないであろう。爆弾の「信管」を抜くという野暮なことはしないであろう。ただ、爆弾が横たわっている事実に変わりない。韓国は、徴用工賠償問題をどう片付けるかが問われている。

 

韓国の差し迫った問題は、経済危機の回避である。中国の新型ウイルス発症によって、韓国経済が大きな影響を受けることが決定的になってきた。さすがの文大統領も、事態の深刻さに気づいたようである。文政権2年間で、韓国経済の体質劣化が急速に進んでいるのだ。企業の設備投資見送りで、生産能力の増加率は48年ぶりの大幅減少率(1.2%)となっている。反日運動をやっている間に、国力の足元がぐらつき始めている。これでは、反日運動にも力が入らないはずだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月31日付)は、「安倍・文政権に忍び寄る『正念場の3カ月』」と題する記事を掲載した。

 

201911月以降、日韓関係は「管理モード」に入っている。けん引しているのは両首脳だ。通常国会冒頭での安倍晋三首相の施政方針演説に韓国との2国間関係が2年ぶりに復活した。「韓国は元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国だ」。「元来」とあえて付けたところに韓国への抜きがたい不信感がのぞくが、隣国関係をこれ以上悪くしたくないという意思を示した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も年頭の記者会見で対日批判を控えた」。

 

(1)「今年に入り、全国各地の観光地に韓国人客が徐々に戻りつつある。日韓関係がようやく底を打った感がある。が、春の訪れととともに、再び不穏な空気が日韓を覆い始める。日本企業に戦時中の元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁判所)の判決を受け、韓国で差し押さえられた日本企業の資産が売却・現金化されるのが「春ごろ」とされているためだ。かりに日本企業が実害を被れば、日本政府は報復せざるを得ず、日韓関係は再び冷えこむ。泥沼化する恐れもある。日韓関係の「Xデー」と懸念されるゆえんだ。Xデーの到来を回避するため徴用工問題の解決に向けた韓国国内の動きと、日本による韓国向け輸出管理の厳格化の見直しをめぐる両国間の折衝が激しくなる見通しだ」

 

日本企業の資産売却という「Xデー」の可能性はゼロに近い。1億円未満の金で日韓関係をズタズタにする裁判官がいるとは思えない。それは、一種のテロリストのようなものであろう。

 

(2)「韓国側は保守、革新勢力が激突する春の総選挙が終わるまで日本に譲歩しにくい。日本では夏の東京五輪・パラリンピック閉幕後の衆院解散・総選挙論や安倍首相の五輪花道退陣論などがかまびすしい。秋以降は政局が流動化する可能性がある。おのずと日韓交渉の余地は、韓国総選挙投開票の415日から、東京五輪開幕の724日までの3カ月間に絞られる」

 

(3)「今後のシナリオは大きく分けて3つある。日韓関係を重視する韓国政権内の「外交派」は総選挙直後に徴用工問題を決着させ、日本からも輸出規制の撤回を引きだす構想を描く。ただ、国会議長が主導した法案は一部の原告や支援団体が反対している。「被害者中心主義」の文大統領の腰も重い。少なくとも徴用工問題が片付かないままでは日本政府は輸出管理措置の撤回に踏み切れないし、日本企業の資産の現金化にも黙ってはいられない。

 

韓国総選挙投開票日の4月15日から、東京五輪開幕の7月24日までの間が、日韓が交渉する最適機会という指摘だ。韓国は、国会で文議長案を議決する。日本へ「ホワイト国」復帰を要請する。これが、双方の交換条件になるというのが一般的な見方だ。

 

韓国にはもう一つ、東京五輪を機会に北朝鮮に金正恩国務委員長との会談を狙っている。これにより、南北交流のきっかけを作りたいという念願があるのだ。

 

(4)「五輪開幕の直前に最悪の事態を避けたいのが本音だ。日本だけではない。文大統領も、北朝鮮が対話路線に急旋回した18年平昌冬季五輪の夢よもう一度とばかりに、東京五輪を南北再接近の契機にする思惑がある。文大統領は五輪に合わせた自身の訪日も検討しているという。最優先の北朝鮮問題で再び脚光を浴びるには五輪開催国の日本の協力がどうしても欠かせないのである」

 

日韓関係は、荒れるだけ荒れた後である。早急な回復は不可能だ。とりわけ、日本側の文大統領不信感は根強い。反日を政治的に使った罪は重いのだ。文氏が退任する2022年5月以降に日韓双方が交流を始めるであろう。