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文政権は、4月の総選挙で与党を勝利に導く思惑ですべての政策標準を合せている。その目玉は、3月の習近平国家主席の訪韓実現である。現在の中国は、国を挙げて新型コロナウイルス対策に取り組んでいる最中だ。このため、習氏の「3月訪韓」は消えつつある。

 

韓国医師会は新型コロナウイルス予防目的で、二度目の「中国人訪韓遮断」要請を行なうほど危機感を示している。文政権は依然、習氏の「3月訪韓」を諦め切れず、ウイルス対策でも煮え切らない態度を取っている。万一、韓国で新型コロナウイルス感染者が激増する事態に陥れば、文政権と与党の支持は一挙に落込み、総選挙の大敗が取沙汰されている。

 

『中央日報』(2月4日付)は、「総選挙用の『習近平訪韓』執着の終わり」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

 

(1)「韓国で総選挙を控えた与党としては、習近平中国国家主席の訪韓ほど垂涎もののカードも珍しい。習主席の訪韓で韓中関係に温もりが戻り、韓国経済の足を引っ張っていた限韓令(注:経済制裁)が解消されるなら、現政権の政治的功績として遜色ないものになるだろう。だが、思わぬ障害物が飛び出してきた。日々激しさが増す武漢肺炎だ。習主席の訪韓に大きな期待をかけていた現政権は、悪化の一途をたどる中国の状況にもかかわらず、強行しようとする勢いだ。今月2日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が韓中間の外交日程に関連して「滞りなく推進する」と明らかにしたことからも分かる」

 

文政権が、中国の置かれている状況にお構いなく「訪韓計画」を推進している。これは、韓国の総選挙にプラスになるという思惑からだ。韓国外交は、すべて身勝手で自国の物差しで動いている。反日もその典型である。反日をやれば、国民の支持が得られるという思惑が先行する。

 


(2)「立場を変えて考えてみよう。原因不明の病気で一日数十人ずつ亡くなっているこの状況で、最高指導者が国を空けることができようか。中国政府側は今回の肺炎がここ7~10日間にピークを迎えた後、安定傾向に入ると発表した。韓国政府もそう信じたいだろう。だが、他の専門家の意見は異なる。香港の伝染病専門家は4~5月ごろ絶頂に達した後、6~7月から弱くなると見通した。武漢肺炎より伝染性の弱い重症急性呼吸器症候群(SARS)も2002年11月に初めての患者が報告された後、翌年7月まで9カ月間、世界を恐怖に陥れた。前例に照らし、3月中に習主席が本国を留守にできるほど事態が好転すると期待するのは無理だ」

 

新型コロナウイルスは、中国当局によれば「ここ7~10日間でピークを迎えた後、安定傾向に入る」と発言している。この見方は、甘いと言うのが大勢だ。4~5月にピークを迎えるという見方さえある。こうなれば、習氏の「3月訪韓」はあり得ないことになる。文政権が「3月訪韓」に拘るのは総選挙用のほかに、習氏の「4月訪日」前に実現して、日本を出し抜く思惑も秘められている。

 


(3)「このような状況にも、韓国政府は習主席の3月訪韓をどうにか成功させるために中国の顔色伺いをしているそぶりが歴然だ。万に一つ、習主席が3月に韓国に来ると言っても、これは時期的に良い選択でない。そのころは武漢肺炎がさらに猛威を振るいながら対中感情が最悪まで落ちている可能性が高い。習主席訪韓は韓中間の和解の契機にしなければならない重要なイベントだ。だが、中国発の原因不明の病気で国内被害が広がった場合、反中デモが起きないとも限らない。和気あいあいとなるべき雰囲気に氷水を浴びせる格好になるのが目に見えている。これだけではなく、中国が習主席3月訪韓の対価として大きな見返りを求めないとも限らない。そのような場合、「屈辱外交」論争から抜け出すことができなくなる

下線部が重要である。仮に「3月訪韓」が実現しても、新型コロナウイルス感染者が増えている状況では、韓国内の「反中ムード」が最高になる危険性が高い。また、中国側から過大な要求を韓国に突付けるリスクもある。このように、習氏の3月訪韓はあり得ないという見方である。

 

日本にとっては、中韓の問題であるから無関係である。一方で中国外交部は、「4月訪日」準備が進んでいると発言している。