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世界中を席巻している新型コロナウイルスには、未だに決定的な特効薬も出ないまま時間を空費している。その中で、米国政府がコロナ菌は「日光・高温・多湿で威力弱まる」という研究結果を発表した。藁をも掴みたい世界中の人々にとって、少しは気の休まるニュースとなろう。

 

『ロイター』(4月24日付)は、「新型コロナ、日光・高温・多湿で威力弱まるー米政府研究」と題する記事を掲載した。

 

米国土安全保障省の高官は23日、新型コロナウイルスに関する政府の研究で、日光が当たる場所や高温・高湿度の環境下では、より短い時間で威力が弱まる傾向が示されたと明らかにした。

 

(1)「国土安全保障省科学技術局のウィリアム・ブライアン局長代行によると、政府の研究者らは、新型コロナが最も生存しやすいのは屋内の空気が乾燥した環境で、気温と湿度が上がれば威力を失い、特に日光に弱いとの研究結果を報告した同氏はホワイトハウスのブリーフィングで「直射日光に当たれば、最も早く死滅する」と述べた。インフルエンザなど他の呼吸器系疾患と同様に、新型コロナの感染力が夏季に弱まるとの期待を強める内容だが、実際は、シンガポールなどの温暖な場所でも強い感染力を発揮している。トランプ米大統領は、この研究結果は慎重な解釈が必要だと指摘した」

 

下線部は、これまでも類似の指摘がされてきたが、具体的なデータが提示されたのは初めてである。従来は、漠然と「ウイルス菌が高温に弱い」というものであった。

 

(2)「ブライアン氏によると、暗くて湿度が低い環境では、新型コロナはステンレス鋼など通気性のない素材の上で、18時間かけて威力を半減させるが、高湿度の環境ではこの時間が6時間に減り、高湿度の環境で日光に当てれば、2分に短縮されるという。また、せきやくしゃみによる飛沫感染を想定し、空気中に漂う新型コロナウイルスについても調べ、同様の結果が得られた。空気中の新型コロナは暗い室内で1時間かけて威力が半減したのに対し、日光に当てた場合は90秒に短縮した

 

ウォーキングで、マスクをつける姿が増えている。かくいう私も、マスクをつけてウォーキングせざるを得なかったが、なんともやりきれない矛楯を感じていた。海岸に沿って歩くのにマスク姿とは、珍無類であるからだ。咳やくしゃみによる飛沫が、90秒で消えれば、他の人との距離が10メートル以上も離れる場合、「ノーマスク」でも無害となろう。

 

このように、新型コロナウイルスには極度の神経を払う生活が続いている。一方では、特効薬への期待を打ち砕くニュースも流れている。

 


『ロイター』(4月23日付)は、「ギリアドの新型コロナ薬、治験失敗と報道、WHOが誤って情報開示」と題する記事を掲載した。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は23日、米ギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス感染症治験薬の初期臨床試験が失敗に終わったと報じた。これに対しギリアドは、早期に打ち切られた試験の結果であり、結論を導くことはできないと反論した。FTの報道を受け、ギリアドの株価は4%超下落した。レムデシビルは新型コロナの有望な治療薬として注目を集めていた。

 

(3)「FTは、世界保健機関(WHO)が誤って公表した報告書の草稿の情報に基づき、ギリアドが中国で実施していた新型コロナ治験薬「レムデシビル」の無作為抽出による初期臨床試験で、症状の改善も血液中の病原体減少も示されなかったと報じた。WHOは、ギリアドの試験に関する報告書の草稿が誤ってウェブサイト上に掲載され、ミスが発覚した後すぐに削除したと説明した。その上で、報告書は査読の段階にあるとし、完了後に正式に公表する方針を示した」

 

「レムデシビル」の製造元ギリアドは米企業である。うがった見方をすれば、WHO(世界保健機関)への拠出金を停止した米国政府への嫌がらせとも受け取れる。それほど、微妙な案件なのだ。単なるミスとは思えない。

 

(4)「草稿が削除される前に医科学メディア「スタット(STAT)」が保存した画像によると、この試験には患者237人が参加し、158人にレムデシビルを、79人にはプラセボ(偽薬)を、それぞれ投与した。その結果、死亡率はレムデシビルを投与されたグループが13.9%、偽薬グループは12.8%と、大差は見られなかった」

 

治験薬としては、患者の人数が少ない感じがする。これだけのデータで結論が出るのだろうか。

 

(5)「ギリアドは声明で、WHOの草稿には不適切な解釈が含まれているとし、中国で実施された試験は被験者が少なく打ち切られたため、統計的に有意義な結果は導き出せないと反論。その上で「データのトレンドからは、早い段階で治療を受けた患者で特に効果がある可能性が示されている」と指摘した。詳細は明らかにしていない。みずほのアナリスト、サリム・サイード氏は「被験者がさほど多くない試験であり、信頼性の高い統計とは言えない」と指摘した」

 

下線部は、弁解でなく正しい見解表明とみられる。しかも、治験地が中国である。打ち切られた理由は不明だが、米中の政治的対立も背景にあるだろう。日本の「アビガン」は、この「レムデシビル」と同傾向の早期治療薬である。中国は、アビガンについては高い評価を下し、中国国内で大量生産に入る意向を表明した。「レムデシビル」の治験継続の必要性を感じなくなったとも見えるのだ。


(6)「レイモンド・ジェームズのアナリスト、スティーブン・シードハウス氏は、この中国の試験を受け、レムデシビルは重症患者には効かない可能性が高いという見方が広がるだろうと述べた。医療関係者はこれまでに、レムデシビルのような抗ウイルス薬はウイルスが血液中で増殖するのを抑える仕組みであるため、発症早期に投与した方が効果は高いのでないかとの見方を示している

 

下線部分は、正しい見解である。「アビガン」は、軽症者の7割が7日間で回復したと中国が発表している。「レムデシビル」も同様の効果があると指摘されている。

 

アビガンとレムデシビルは、どちらが早く治験成果が発表されるか。株式市場では、これによって世界の採用順位が決まると判断してきた。レムデシビルが、WHOによる思わぬミスで足元を掬われたとすれば、アビガンが有利な立場になろう。