テイカカズラ
   

正恩氏脳死説の現実性

後継は金ファミリーで

米朝交渉は米が有利に

韓国経済に支援が重荷

 

北朝鮮最高指導者である金正恩氏が、脳死状態に陥っていると伝えられている。情報源は、中国の対北朝鮮政策のトップで、これまで北朝鮮へ50回も渡っている人物である。この枢要な人物から、韓国の金大中政権当時、大統領府の初代国政状況室長を務め、第16代国会議員を歴任した張誠ミン(チャン・ソンミン)氏へ、電話で伝えられたものである。

 

正恩氏脳死説の現実性

ここまで「正恩氏脳死」が生々しく伝えられている以上、北朝鮮政治に一大異変が起こっていることは否定し難い事実として受入れざるを得ない。事態の詳報は、次のようなものである。『中央日報』(4月24日付)が、伝えた。

 

1)「世界と北東アジア平和 フォーラム」張誠ミン理事長が4月23日、中国高位関係者から金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が回復不可能な重態にあるという情報を入手した。張理事長は、「今朝、北朝鮮の最高要人が『これは死亡と見なすべきだ』という結論を下した」という話を聞いた。

 

2)正恩氏は呼吸しているが、事実上「植物(人間)」状態である。今朝(23日)、北朝鮮の高位職が状況を見て事実上死亡と結論を下したようだ。いかなる医術を動員しても、回復不可能な状態と判断しているようである。

 

3)米国政府は、この緊急事態に気付いたようだが、韓国政府は情報がない模様。金委員長が事実上、脳死状態であるので現在、権力の空白が現れている。韓国政府は、韓半島(朝鮮半島)のリスクを最小化する方向に戦略を講じて準備に入らなければならない。

 

4)張理事長は該当情報を伝えた中国側要人と情報の信頼性について、「長いつきあいの関係で、北朝鮮問題に関する情報が間違ったことが一度もなかった。99%以上信頼している」とし、「北朝鮮駐在中国大使が分からなくても、当該要人は情報を知りうる立場にあると」主張した。

以上のような経緯で、金正恩氏は再起不能の脳死状態に陥っている。突然、訪れた不幸である。この衝撃的ニュースが、今後の北朝鮮後継問題、米朝関係、南北関係にいかなる影響を及ぼすか、焦点になってきた。現状で推測できる範囲で、前記の問題の行方にスポットを当てた。

 

後継は金ファミリーで

北朝鮮の政治体制は、古代の王政と同じである。一人の王が、全ての権限を掌握しているシステムだ。金正恩氏の統治活動が中断すれば、北朝鮮の「国家機能」そのものが麻痺しかねないのである。例えば、金正恩氏が建設現場を視察した際、建物の仕上げ材やインテリアについてまで「細かな指示」を下すことがある。北朝鮮の最高指導者は、「現地指導」を通して北朝鮮を統治しているもの。正恩氏が脳死状態に陥れば、国家機能は動かないシステムである。

 

現在の北朝鮮は、すでにこの国家機能麻痺の事態になっている。早急に、後継体制をつくらなければならない。北朝鮮は、「血統による統治」である。金日成→金正日→金正恩という金ファミリーが「首領」ポストを独占してきた。後継体制も、金ファミリーから出なければ、「革命」騒ぎの事態を迎える。穏便な後継体制づくりには、金ファミリーが必須条件であろう。

 

韓国の北朝鮮専門家は、実妹の金与正(キム・ヨジョン)や実兄の金正哲(キム・ジョンチョル)などを中心に「集団指導」のメカニズムが作動する可能性を指摘している。

 

金与正氏は、父親・金正日が4人の子どもの中で、最も政治性に富むとして目をかけてきた。ただ、「女性」であることが最大の難点で、後継者に選ばれなかった。金正哲氏は生来、政治に無関心で文学や音楽を好む「文人派」とされ、早くから後継者レースから外されていた。結局、「帯に短し襷に長し」である。前記の二人だけで、剛腕「金正恩」に代わって北朝鮮を統治できる可能性は低い。

 

脱北した元駐英北朝鮮公使で、4月15日の総選挙で当選した未来統合党の太救民(テ・グミン)氏(本名=太永浩)が23日、次のように指摘している。「金与正体制に移行するだろうが、現体制を支えている60から70代の勢力にとって、金与正(32)は完全に「ひよっ子」だと指摘。代わって、金平一(キム・ピョンイル、66)の存在に注目している。

 

金平一氏は、金正日の異母弟で、金正恩氏の叔父に当たる。金平一氏は、金正日との権力争いに敗れ、1979年以降はハンガリー、ブルガリアなどの海外公館で勤務し、昨年チェコ大使としての勤務を最後に40年ぶりに平壌に戻ったところだ。前述の通り、金与正氏は子どもの頃から政治問題に並々ならぬ関心を持って来たとされる。それだけに、実兄の後を継ぐ意欲は満々であるはず。それが、「女性と年齢」でトップの座を外されれば、新たな紛争の種を持込むことになろう。(つづく)