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北朝鮮最高指導者・金正恩氏の消息が、世界的な話題になっている。本欄では、中国の北朝鮮所管トップが、韓国の元高官に伝えてきた「脳死」を取り上げている。その後、健康説も登場するなど輻輳(ふくそう)している。その中で、米国トランプ大統領が決定的一言を漏らした。「全ての情報を掌握している。近いうちにはっきりする。健康を祈る」。この発言をどう読むかだ。

 

『ロイター』(4月28日付)は、「金正恩氏の状態を把握している、元気だと願うートランプ米大統領」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領は27日、健康不安説が浮上している北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について、どのような状態か把握しており、元気であることを願っていると述べた。

 

(1)「トランプ大統領はホワイトハウスで行った記者会見で、金委員長の状態について質問されると、「はっきりとは言えない」と答え、「(金氏の状態は)非常によく把握しているが、今は明らかにできない」と語った。その上で「彼が元気であることを願う。相対的に言って、彼がどうしているか私は知っている。様子を見よう。そう遠くないうちに、あなたたちはおそらく知らせを耳にするだろう」と述べ、近く状況が明らかになる可能性を示唆した。金委員長の動静を巡っては、さまざまな憶測が飛び交っている」

 

下線部分が、トランプ氏の発言である。注目点を整理する。

.事実を知っているが、発言できない。

.元気であることを願う

.近く、真実を耳にするだろう。

 

以上の3点をつなぐと、結論は正恩氏の健康状態が「良好でない」ことを暗示し、健康であることを祈る、というもの。死亡していないが、植物状態(脳死)であることを示唆している。健在であれば、それを裏付けるような発言をするだろう。北朝鮮が、近く後継政権と同時の正恩氏の脳死状態か、死亡を発表するのでなかろうか。

 


(2)「韓国の北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNK」は先週、北朝鮮内の関係筋の話として、金委員長が今月12日に心血管系の手術を受け、療養中だと伝えた。ロイターはこの報道内容を確認できていない。また、米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」は25日、金委員長の専用とみられる特別列車が東部元山(ウォンサン)で確認されたとする衛星写真の分析結果を公表した」

 

ここでは、正恩氏が心臓手術を受けたことが明らかにされている。この手術で失敗して脳死したというのが、本欄が報じている記事でもある。

 

『朝鮮日報』(4月28日付)は、「金正恩委員長は大丈夫なのか、今度は乗馬説にジェットスキーまで」と題する記事を掲載した。

 

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の「健康異常説」について、韓国政府は27日にも「北朝鮮内部に特異な動向がないことを確認したとの立場は有効だ」と説明した。

 

(3)「北朝鮮の内部事情に精通した韓国政府筋によると、韓米当局の偵察衛星は先日、江原道元山の別荘で金正恩氏が乗馬を行っている兆候を捕捉したという。この政府筋は「米国の偵察衛星の力量を考えると、金正恩氏の顔まで確認したのだろう」「一部の人物がジェットスキーに乗る写真も撮影された」と伝えた。金正恩氏の健康に異常が生じたのであれば、金正恩氏一家や北朝鮮高官がジェットスキーのような余暇を楽しむことなどできず、このような意味合いから韓国政府は「異常はない」とする暫定的な結論を下したという」
 

韓国政府筋は、正恩氏が乗馬している兆候を捕捉したという。トランプ大統領の発言が示唆するものと異なっている。下線のようにジェットスキーをしているのは、「敵を欺くための戦術」と読めないだろうか。時間を延ばして、後継政権の準備をしていると読めないとすれば、この情報筋は後から批判を受けるだろう。

 

(4)「一方で、韓国国防部次官を務めた未来韓国党の白承周(ペク・スンジュ)議員はこの日、201112月に故・金正日(キム・ジョンイル)総書記が死亡した際にも、韓国政府は「特異な動向はない」と主張したとして「北朝鮮の反応だとか、あるいは関連する部処(省庁)のさまざまな判断、これらを見て(金正恩氏の)健康に異常が生じたと判断している」と述べた。 金竜顕(キム・ヨンヒョン)元合同作戦本部長も国会での座談会で「健康異常説までは合理的な推論のようにみえる」との見方を示した」

 

韓国政府は、2011年12月に金正日(キム・ジョンイル)総書記が死亡した際に、「健康に異常がない」と発表しており、後に死亡発表で面目を失った経緯がある。今回も同様なケースであろうか。真実を知りながら、北朝鮮を刺激したくないという「忖度」で、あえて「健康説」を報じているとも考えられる。