テイカカズラ
   

韓国政府は、一貫して北朝鮮最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)氏にまつわる「健康異変説」を否定している。統一部長官は28日の国会外交統一委員会で、北朝鮮の金正恩国務委員長の健康悪化説について、「特異な動向がないというのが政府の基本的な立場」として、「インフォデミック(デマの拡散)と言える。非常に残念な現実」との認識を示した。『朝鮮日報』(4月29日付)が報じた。

 

一方、韓国国会の立法調査処は28日、注目すべき報告書を発表した。北朝鮮の金正恩国務委員長が、妹の金与正(キム・ヨジョン)「党中央委第1副部長」に後継者を意味する「党中央」という地位と役割を付与するだろう、とする分析報告書を出したのだ。その中で、「政府は北のあらゆる状況変化を考慮した総合的な対北政策を立てる必要がある」と提言している。韓国政府の公式態度と全く異なる見方が提示されている。

 

『朝鮮日報』(4月29日付)は、金与正、『後継者の地位を得るもよう』」と題する記事を掲載した。
 

(1)「韓国国会の立法調査処は28日、北朝鮮の金正恩国務委員長が妹の金与正「党中央委第1副部長」に後継者を意味する「党中央」という地位と役割を付与するだろう、とする分析報告書を出した。「党中央」は、1974年に金日成(キム・イルソン)の後継者に内定した金正日(キム・ジョンイル)と、2010年に金正日の後継者に内定した金正恩に付与された呼称だ。北朝鮮が「白頭の血統」である金与正を金正恩の公式後継者として打ち出し、体制安定を図ろうとしているという意味だ」

 

金与正氏が、「党中央」という地位と役割を与えられるだろうという分析は重要である。「党中央」とは、後継者に内定した場合に付与される呼称であるからだ。これは、与正氏が実兄の正恩氏に代わって党を代表する意味である。完全に、正恩氏の「健康異変」を前提にした分析である。

 

(2)「国会立法調査処は、「北朝鮮の党政治局会議と最高人民会議第14期第3次会議の分析と示唆点」を扱った報告書「イシューと論点」にて、「党政治局会議で、組織指導部第1副部長金与正が政治局候補委員に補選された」として、「金正恩委員長は、国家的危機を克服するため金与正の地位と役割を『党中央(後継者)』の役割にまで拡大し、『白頭の血統』の統治権を強化する可能性がある」と指摘した」

 

金ファミリーが、北朝鮮を統治するという意味である。専制主義の「王政」と同じだ。この政治システムが、「社会主義」と称しているところに不思議さを感じる。社会主義とは、資本主義の先に登場する政治システムのはず。資本主義も経験しない北朝鮮が、一足飛びに「社会主義」を名乗る。中国と同じで、牽強付会と言うほかない。

 


(3)「その根拠として、「2020年の独立した政治主体としての金与正の活動は、事実上党の唯一指導体制に責任を負う『党中央』の役割だった」と記した。その上で「これは組織指導部第1副部長の役割だけでなく、今後白頭の血統の公式後継者としての地位と役割に拡大し得るという可能性を予告しているもの」と主張した。金与正はこのところ相次いで金正恩に代わって対南・対米談話を発表し、自分の地位を指導者級のラインに上げた」

 

報告書では、「今年初めから金正恩の代わりに対南、対米談話を発表するなど、金与正の活動は事実上、党の唯一指導体制の責任を背負った『党中央』の役割だった」として、「特に、金正恩の身辺異常説が提起されると、一層注目を受けるようになった」と言及している。これは、正恩氏が自らの健康に自信が持てず、徐々に与正氏に「党中央」の役割をさせていたとも理解できよう。この前提で考えれば、連続したミサイル発射実験は、自らの生命に異常を感じて、矢継ぎ早に行なったという解釈も可能になろう。

 

(4)「「党中央」は、1974211日から13日まで開かれた党中央委員会58次全員会議で金正日が後継者として内定した直後、『労働新聞』の社説などで後継者を指す表現として初めて登場した。ただし、同報告書は「(金与正の後継構図が)金正恩委員長の復帰後すぐになされるというよりも、一度、公式な手続きがさらに必要だろう」と留保した」

 

報告書は、与正氏へ「党中央」の肩書きを与えるには、正式な手続きが必要であろうとしている。ただ、専制主義の王政ゆえに、会議は形式である。いかなる便法を用いても、金ファミリーが北朝鮮を統治することに変わりはない。