ムシトリナデシコ
   

北朝鮮最高指導者・金正恩氏の消息が途絶えて以来、西側では種々の情報が流れている。ほぼ重体説であるが、その中で韓国だけは「健康説」を主張している。乗馬姿が目撃されたとか、あえて重体説を否定している。

 

こういう「異説」を主張している背景は何か。一つは、米国から極秘情報が伝えられていないことだ。安倍首相は、国会の質疑で次のように答えている。「北朝鮮に関しても米国と情報交換しているが、その内容は申し上げられない」という。米国とは、正恩氏情報も交換済みという認識だ。

 

もう一つは、あくまでも北朝鮮との「友誼」を大事にしていくという姿勢である。世界が、どんな情報を流そうとも、北朝鮮当局の発表を信じるというもの。だが、これも程度問題である。韓国国民にとって、北朝鮮の極秘情報も掴めない韓国政府では、安全保障で大きな抜かりがあり得るというリスクである。

 

台湾情報当局も、北朝鮮に関し次のような分析が報じられている。

 

「台湾政府の情報機関、国家安全局の邱国正局長は4月30日、重体に陥っているなどと一部で報じられている北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について、病気だとの見方を示した。公開された情報に基づき、このように推察されるとした。立法院(国会)外交および国防委員会の答弁で述べた。北朝鮮での権力交代や力の真空状態の出現で、東アジアに混乱が生じた際の対応について与党・民進党の立法委員(国会議員)から問われると、邱氏は準備ができているとの姿勢を示した」(『フォーカス台湾』4月30日付)

台湾の情報機関、国家安全局長は、公開情報からこのように解釈しているという。こうなると、韓国情報当局の認識がますます謎に包まれるのだ。多分、韓国大統領府が「健在説」に固執して、情報当局の口封じをしていると見られる。この程度の認識で、仮に北朝鮮軍に不穏な動きがあってもそれを認めず、韓国軍に出動命令を出さず、あえて敗北の道を選ばせるのでないか。そんな危惧の念さえ浮かぶのである。

 


『朝鮮日報』(4月30日付)は、「米CIA元分析官、文政権『金正恩を敵から同業者に変える努力』」と題する記事を掲載した。

 

文在寅政権が韓半島の平和・統一政策を推進しながら、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「敵」から「同業者」変容させようと努力している、という主張が提起された。これは、米中央情報局(CIA)の北朝鮮関連アナリストだったジョン・パク博士が4月28日(現地時間)に出版した著書『北朝鮮の謎の若い独裁者に関するある元CIA要員の洞察』で、このように主張したものだ。

 

(1)「EBSメディアは2018年、金正恩委員長を「韓半島の平和時代を切り開く指導者」「世界最年少の国家元首」と紹介、ほほ笑む金正恩委員長の顔と胴体を組み立てる「立体パズル」を子ども向け教具として製作・発売して物議を醸した。パク博士は「(このような現象は)金正恩委員長が外交やあいまいな非核化宣言によって「残酷な独裁者」という評判から脱しようという努力が効果を上げていることを示唆している」と述べた。そして、「事実、このようにして子ども向けに作られた小さな金正恩立体パズルを見ると、2019年にダン・コーツ米国家情報長官(DNI)が米議会で北朝鮮の相次ぐ核兵器開発、深刻なサイバー攻撃、殺傷用化学兵器保有状況を挙げ、『北朝鮮は依然として脅威となる存在だ』と証言したことを簡単に忘れてしまうかもしれない」と言った。

 

元CIA北朝鮮分析官が、文政権は北朝鮮・金正恩氏のイメージを「敵」から「同業者」(仲間)へ変えさせる戦略を取っていると分析。米国が韓国に不信感を持っている最大の理由は、ここにあることが分かる。北朝鮮が、共産主義国でなく平和愛好国というレールに乗せて、韓国の「同業者」に仕立て上げているのだ。

 

文政権の目的は何か。それは、韓国国民に対して「共産主義は怖くない」というイメージを植え付けることだ。このイメチェン作戦が成功すれば、韓国も共産化できるという狙いである。文政権の経済政策は、「反市場・反企業」主義である。決して資本主義経済のルールにしたがってはいない。「反日主義」も、朝鮮半島の共産化にとって不可欠のツールとして用いようとしている。北朝鮮と韓国は、「反日」で共同戦線を組める得がたい手段であるからだ。

 


(2)「金正恩委員長のイメージがソフトになることで、彼の本性や戦略的目標をきちんと把握できず、彼の戦術に過剰に、あるいは消極的に対応するという問題が発生する可能性もあるという。また、パク博士は「こうした問題は、金正恩委員長が韓半島で引き続き何かをすることができる空間を提供するだろう」と指摘した。パク博士は、金正恩委員長に対する間違った認識ががん細胞のように広がっている、という博士の問題意識が、この著書の結論に反映されているようだ」

 

文政権が、金正恩氏のイメ-ジを「平和の使徒」に変えて、その偽りのイメージで北朝鮮と韓国を一体感させる。こういう壮大な夢を描いていたのであろう。正恩氏は37歳である。80歳まで北朝鮮の最高指導者に止まっている間に、韓国は北朝鮮と統一する計画であったに違いない。その目玉になる正恩氏が、突然の「重体説」である。韓国は、絶対に受け入れ難いニュースである。藁をも掴む気持ちで、「健在説」に固執しているのであろう。正恩氏が消えてしまったならば、文政権の提携相手がいなくなるからだ。