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中国が、世界で最も貿易のしにくい国と悪評が立っている。相手国と妥協せずに、気に入らないとなれば制裁を加える国になったからだ。理由は、自国の経済的な行き詰まりを隠すためのカムフラージュと見破られている。

 

『ロイター』(6月29日付)は、「中国、世界で最も『扱いにくい貿易相手国』に」と題する記コラムを掲載した。

 

中国は近く、米国を抜いて世界で最も「扱いにくい貿易相手国」となるかもしれない。中国はインドや日本とも対立。問題を抱える2国間関係は増える一方だ。

 

(1)「中国政府は、貿易相手国が一致団結して反撃してくることはないと考えているかもしれないが、それは危険な想定と言える。習近平国家主席は国内で権力基盤を固めており、今年、対外強硬姿勢を一段と強めている。新型コロナウイルスが流行する中、南シナ海で軍事力を増強。6月にはインドとの係争地域で死者の出る衝突が起きた。中国国営メディアは勝ち誇ったように傷口に塩を擦り込むような報道をしている」

 

中国が、周辺国と争いの種を増やしているのは、国内向けにあえて「強い中国」を演出する目的もあろう。本気で、衝突しようと考えているとすれば、正気の沙汰ではない。インドと国境紛争を起こして、インド側に20名の死者を出させる惨事となった。中国側の犠牲者数は未発表である。中国国営メディアが、勝ち誇ったように傷口に塩を擦り込むような報道をしているとすれば、インドの強い怒りを買い、経済面で大きな報復を受けるはずだ。

 

具体的には、次世代通信網「5G」で中国ファーウェイ製品の採用見送りである。これは、将来の「5G」の世界普及において、西側メーカーの後塵を仰ぐ要因になるはずだ。世界覇権を夢見る中国の前に、インドが怒りで立ちふさがるであろう。それすら見通せない習近平氏とすれば、国家主席の資格はなさそうだ。

 

(2)「米国、カナダ、豪州との関係は最悪。アフリカ諸国も中国国内で自国民が差別されていると神経をとがらせている。欧州連合(EU)は強硬姿勢で中国との投資協定交渉に臨んでいる。日中関係も一時は改善したが、再び冷却化に向かっている。中国は、経済面では「あめ」が少なく「むち」が多い貿易相手国といえる。中国の国内消費はまだ貿易相手国を大きく助けるほど回復していない。輸入は昨年12月以降、減少が続いており、5月は17%減少した。これを受け、同月の対米貿易黒字は280億ドルに拡大している」

 

米国は、中国の「立ち枯れ」を確実に予測している。中国の人口動態が、一人っ子政策による極端な「少子高齢化」が進行するからだ。これまでは、「一人っ子政策」による「人口ボーナス期」で、実力以上の経済成長を実現した。2010年をピークにして、この状態が逆転した。「人口オーナス期」入りによって、経済減速が予想以上のスピードで進むのである。

 

米国は、この状態を完全に読み切っている。超高齢社会への突入で潜在成長力が低下するので、中国による技術窃取さえ防げれば、中国経済の「自然衰退」を眺めるだけ、という冷めた見方だ。この米国の「冷笑」が分からないのか、あちこちで威張り散らして歩いている姿は、哀れに映るであろう。

 

(3)「中国と対立する経済大国も連携が取れていない。米国とEUが反中統一戦線を組むとの観測も出ているが、通商問題を巡る中国やロシアへの対応で米国とドイツの意見はかみ合っていない。ただ、二国間の報復措置は徐々に増えている。米国は香港への統制を強める中国に対し、本格的な制裁を検討。アジア太平洋地域に中距離ミサイルを配備する計画も浮上している。インド政府は中国からの投資を制限。日本政府も中国から国内に回帰する日本企業を支援している。中国が実現を望んでいる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの貿易協定も、一連の対立で交渉に遅れが出るかもしれない」

 

米国が、アジア太平洋地域に中距離ミサイルを配備する計画を明確にしている。中国は、これまで米国が中距離ミサイルを持たない前提で、アジアの軍事覇権確立を狙ってきた。だが、この想定は崩れた。米国の中距離ミサイルは、南シナ海と東シナ海の防衛を容易にするので、中国軍の身勝手な振る舞いが不可能になる。

 

南シナ海の島嶼不法占領は、ベトナム・フィリピン・インドネシアなどとの関係を悪化させている。なぜ、中国が突如として海洋進出を始めたのか。領土拡張以外に目的はない。帝国主義国家として振る舞う意図を明確にしたからだ。共産主義という装いをした帝国主義国家の登場である。過去の歴史に登場し没してきた国々の再現である。決して物珍しいケースではない。

 

(4)「中国の対外強硬姿勢には、国民の不満をそらす狙いもあるだろう。だが、特に新型コロナウイルスの感染第2波が起き、深刻な状況に見舞われた場合、海外との対立に加え、国内経済に予想以上の問題が生じるリスクがある。中国の強硬姿勢が行き過ぎだったことが近いうちに判明するかもしれない」

 

中国は、コロナ・ワクチン開発で米国へハッカー攻撃を掛けていた。技術情報窃取目的である。どうやら技術窃取に失敗したようである。中国のカンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)は6月29日、人民解放軍の軍事科学院と共同開発している新型コロナウイルスのワクチンを同軍に限定して使用する承認を得たと発表した。これは、最終臨床試験である。カンシノによると、このワクチンは第1相、第2相の治験で新型コロナ感染症を予防する可能性が示されたが、実用化のめどは立っていないという。以上は、『ロイター』(6月29日付)が報じた。

 

米国が、7~9月にコロナ・ワクチン接種を始める段階へこぎ着けた点から見れば、中国の出遅れ感は否めない。世界をパンデミックに巻き込んだ中国が、世界の孤児になる可能性が強まっている。