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中国の習近平氏は、何を考えているのだろうか。気に入らないことがあれば、すぐに経済制裁で鬱憤晴らしをしているからだ。その典型例が、豪州虐めである。

 

豪州は4月、新型コロナウイルスの発生源調査を世界に呼び掛けた。すると、中国は猛反発。豪産農産物輸入で「制裁措置」に踏み切り、豪州行きを避けるよう国民に求めた。こうした揺さぶりに豪州は不快感を示し、コロナ後の国際情勢をにらみ日本やインドなど「価値観を共有する国」との連携を強めている。『時事通信』(6月14日付)は、こう報じた。

 

中国は、同様の手口で韓国虐めをやって、韓国から譲歩を引き出した。韓国の安全保障の重要部分を中国に相談するという「腑抜け」な振る舞いをしたのだ。これに味をしめた中国は、豪州にも同じ手を使っている。

 

韓国は、不甲斐なく中国の軍門に下った。だが、民主主義で筋金入りの豪州は、韓国の二の舞いにならず、昂然と中国へ対抗姿勢を見せている。それは、日本、米国、印度という民主主義国と胸襟を開いた関係を構築しているからだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「豪、中国との対立鮮明に、サイバー攻撃巡りけん制」と題する記事を掲載した。

 

オーストラリアが中国との対立構図を鮮明にしている。新型コロナウイルス発生源の独立調査を要求。反発した中国が農産品の輸入規制に踏み切ると、新たに公的機関が受けたサイバー攻撃で、中国側の関与を事実上示唆してけん制するなど、収束はみえない。

 

(1)「政府や公的機関が数カ月前からサイバー攻撃を受けている――。6月中旬、モリソン豪首相は唐突にこんな発表をした。特定国の名指しは避けたが、豪公共放送ABCは政府関係者の話として、中国情報機関の関与が疑われると報じた。中国との緊張が高まる中でのあえての公表は、中国へのけん制との見方が強い」

 

中国のサイバー攻撃は、お家芸である。スパイで成り立っているようなお国柄だ。自国の研究成果の足らざる部分をサイバー攻撃で技術窃取して補っている。言葉は悪いが、「山賊国家」である。

 

(2)「両国関係の緊張が急激に高まったのは4月下旬だ。モリソン氏が中国と対立する米国に合わせるように、新型コロナの発生源に関する独立した調査を訴えたことだ。すぐに中国は反発。5月に一部の豪産食肉の輸入を停止し、大麦にも80%超の追加関税を課した」

 

経済制裁による口封じである。

 

(3)「6月には豪州で中国人への差別的な動きがあるとし、自国民に旅行や留学の中止を勧告するなど「報復」ともとれる動きに踏み切った。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は、新型コロナを巡り国際世論が厳しくなる事態を警戒し、豪州への姿勢を強めたとみられる」

 

中国外交特有の「連衡」政策である。豪中の一対一の関係で、豪州を潰してしまう戦略である。だが、どっこい豪州は、「日米印三ヶ国」との同盟意識が強くなっている。前記三ヶ国の強い引力で、中国の圧力をはね返す姿勢である。「一帯一路」関係国の弱腰とは、本質的に違うのだ。中国は、ここら辺りを相当に誤解している。

 


(4)「次々と圧力をかける中国に豪州も黙ってはいない。「豪州は常に国益に沿って行動し、いかなる脅しにも屈しない」。11日出演したラジオで、中国との関係を問われモリソン氏はこう述べた。16日にはペイン外相が講演で「人種差別を理由とした豪州への旅行や留学に再考を促す警告は、偽情報として拒絶する」と中国に反論した。そこに新たにでてきたのがサイバー攻撃だ。モリソン氏はいまだ会見で中国を名指ししていないが、オーストラリア国立大学のローリー・メドカフ教授(安全保障)は「(必要なら名指しで非難できるという)威嚇射撃」だと分析している。

 

中国は、民主主義国と発展途上国を同一視している。発展途上国であれば、中国の一喝は効くだろうが、民主主義国から見た中国は「田舎者」である。むしろ、闘志を燃やしてやり返す気力を持っている。民主主義を甘く見てはいけないのだ。

 

(5)「両国関係の改善の兆しが見えない中で、豪州の経済的な影響は深刻だ。2019年6月までの1年間で、豪州の中国向け輸出は1530億豪ドル(約11兆円)と全体の3割超を占めている。コロナ後を見据えた成長戦略を描く際、豪州にとって中国は不可欠な存在だ」

 

豪州にとって中国は、輸出全体の3割超を占めている。それでも、中国の不法な圧迫に屈せずに抵抗している。韓国が、見習うべき相手である。