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文大統領の就任演説は、ほれぼれとする「名演説」であった。国民の分裂を乗り越えて、一体化する。それには、公平・民主であると宣(のたま)ったのだ。実際には、就任演説だけの話で、国民の分裂と深めており、もはや修復困難な状況になっている。

 

税金面では、大企業と富裕層を狙った増税が、いつの間にか不動産課税に広がっている。実は、不動産課税の引上げは家賃の引上げとなって、国民全般の負担になるのだ。この経済の循環性に気付かず行なった不動産増税が、庶民の怒りを買っている。

 

『朝鮮日報』(7月29日付)は、「『文在寅を罷免する』検索ワード急上昇、沸き立つ不動産世論」と題する記事を掲載した。

 

韓国政府の不動産政策に反発するネットユーザーのオンラインデモである「リアルタイム検索ワードチャレンジ」に28日、「文在寅(ムン・ジェイン)を罷免する」が登場した。

 

(1)「『文在寅を罷免する』という検索ワードはポータルサイト「ネイバー」のリアルタイム急上昇キーワードの上位に入った。「617規制遡及適用被害者救済の会」などのインターネット上に開設したブログで今月初めから特定のキーワードをポータルサイトの検索ワード上位にランクさせるオンラインデモを決行し、ついに「大統領罷免」というキーワードまで登場した」

 

とうとう「大統領罷免」なる過激な言葉まで登場している。家賃の高騰が、失業を余儀なくされている30~40代にとっては、文字通りのダブルパンチになっている。年代から見て、大統領選では、文氏に一票投じた人々であろう。それだけに「裏切られた」という思いが強いのだ。

 

(2)「彼らは2017310日の朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領に対する弾劾審判宣告文の形式を借り、文在寅大統領を批判した。ブログでリアルタイム検索ワードを周知し、「主文、大統領文在寅は国民が罷免する。被請求人の大統領文在寅は大韓民国歴代大統領の中で最悪の不動産惨事の原因となった当事者として、国民の財産権を保護する職責誠実の義務を遂行するどころか、国民の財産を収奪、強奪するレベルを超え、国民財産没収に近い反憲法的な独裁的蛮行を犯した」と主張した。また、「大韓民国の秩序の根幹である憲法の上に君臨し、懲罰的税金爆弾と遡及適用という超憲法的怪物をつくり出し、自由民主主義市場経済の秩序と憲政を乱し、国家と国民を塗炭の苦しみに追い込んだ」とも指摘した」

 

下線部分は、文政権の最も痛いところを突いている。法律の「遡及適用」という、絶対にあってはならないことを平気で行なう「無法大統領」であるからだ。法律がなければ罰しられないにもかかわらず、遡って適用する。保守派退治が、「遡及適用」の主なものだ。

 

(3)「運営者が特定のキーワードを告知すると、メンバーは午後2時から4時にかけ、ポータルサイトでそのキーワードを集中的に検索した。今月1日に「金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通部長官のうそ」を検索ワード上位にランクさせたのに続き、「617617日の不動産対策)違憲市民の血と涙」「文在寅支持撤回」「遡及違憲積弊政府」「租税抵抗国民運動」「30403040代)文在寅にだまされた」「国はお前のものか」などの検索ワードをランキング上位に押し上げた」

 

韓国国民は、「進歩派」という甘い感触に騙されたのである。保守派以上の頑迷固陋さと自派の勢力拡大のためには、あえて法律違反さへ厭わないのだ。「3040(30、40代)文在寅にだまされた」「国はお前のものか」という叫びは、悲痛である。

 


『朝鮮日報』(7月30日付)は、「一度も経験したことがない税金爆弾」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

 

(4)「現政権は法人税の最高税率を22%から25%に引き上げた。資金力がある大企業が税金をより多く出すべきという論理だった。そして所得税の最高税率を42%に引き上げた。さらに地方税10%まで付ければ実質税率は46.2%にのぼる。5億ウォン超過所得はほとんど半分が税金として出ていく。国際的にはどうか。非常に高い方だ。それでも政府は所得税の最高税率を45%に上げる。地方税を含めると実質税率は49.4%となる。世界1位だ

実質所得税率は、49.4%で世界一という。これは、海外からの投資を呼込む上でマイナスである。ソウルを国際金融センターにしたいという希望も、この世界一の実質所得税率が壁になって不可能である

 

(5)「多く稼げば税金も多く出すべきとは言える。しかし他の税金はこのような形で説明できない。不動産関連税金がそのようなケースだ。すべての国民に直接影響を及ぼす。無住宅者もいつか家を購入し、住宅を売買したり贈与・相続したりする当事者になる可能性がある。現政権は課税標準となる公示価格をずっと引き上げている。公示価格が上がれば不動産関連税金がすべて上がる

日本政府は、この点で慎重であった。地価上昇が、家賃に跳ね上がることを警戒していたからだ。

 

(6)「公示価格の現実化率は3年前の相場の60%から出発し、現在は80%に上がった。その影響はどうか。公示価格が上がると、取得税・財産税・総合不動産税・譲渡税の負担がすべて増えた。22回目だった7・10不動産対策では取得税・総合不動産税・譲渡税の税率まで大幅に引き上げた。課税表と税率が同時に上がり、まさに税金爆弾だ。取引税は現在、GDP比の徴収比率がOECDで1位だ」

 

公示地価は、不動産課税の基準点である。現在、公示地価の80%が課税基準となっていれば、不動産関連の税金は上がって当然だ。「税金地獄」と騒ぎが広がった背景である。

 


(7)「副作用が少なくない。納税者連盟の分析によると、過去20年間の不動産税金は578兆ウォンにのぼる。現在の価値では786兆ウォン(約69兆円)となる。ソウル江南(カンナム)の住宅価格が大きく上がれば税金も多く出して終わるのか。そうではない。その余波は直接・間接的に全国民に及ぶ。税金が上がれば住宅価格が上がり、家賃に転嫁されるからだ。ソウルのマンションの費用は56週連続で上昇した。食料品も原料費が上がれば価格が上がり、原油価格が上がれば交通費が上がるのと同じ論理だ」

 

下線を引いたような矛楯が起こる。「不動産関連税金が上がれば住宅価格が上がり、家賃に転嫁される」からだ。文政権は、この因果関係を無視して不動産課税を引上げている。それが、不動産価格抑制になると見てきた結果だ。現実は、価格抑制どころか価格促進になっている。完全な不動産政策の失敗である。

不動産課税引上げでは、文政権支持派の労組や市民団体の暗黙の了解を得て実行しているはずだ。その理由は、資産家に応分の負担をさせて財政赤字を消す、という話をしたのであろう。財政赤字を消すには、潜在的な経済成長率を引上げる政策がなければだめなのだ。