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韓国の文大統領は、国内で強い批判を浴びている。「公正・平等」を口癖にしてきた文大統領が、現実にやっていることは「不公正・不平等」である。自らを支持する陣営に手厚い「返礼」をし、対立する陣営(保守派)には、手痛いしっぺ返しをしているからだ。今や、保守派はもちろん、進歩派の学者グループからも「全体主義」と非難されている。文在寅大統領は、偏狭な「陣営論理」の虜になっている。

 

『朝鮮日報』(8月30日付)は、「危うくだまされるところだった」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴正薫(パク・チョンフン)論説室長である。

 

「チョ・グク元法務部長官事件」がなかったら、今ごろはどうなっていただろうか。反則と偽善は覆い隠され、チョ・グク元長官は大統領街道を突っ走っていたかもしれない。もし「チョ・グク事件」がなかったら、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がチョ・グク氏の法務部長官任命を強行していなかったら、一体どんなことが起きていたのだろうか。

 

(1)「今ごろ、彼は国会入りを果たしたか、重責を担って大統領選挙への道をひた走っていたにちがいない。商品性に優れている上、ファンたちも熱狂的に支持していたため、支持率で12位を争うことぐらいは朝飯前だったことだろう。この勢いを背に2年後の大統領選挙に挑んでいたとしたら、そして「チョ・グク大統領」の誕生が現実のものになっていたとしたら、と考えただけでも、大韓民国にとって悪夢以外の何物でもない」

 

韓国進歩派の看板は、完全に偽りであった。進歩派を名乗るが、実態は味方だけを手厚く遇し、反対派には冷や飯を食わせる極端な政権である。味方の労組と市民団体は、幸せな「3年余」であろう。

 

(2)「チョ・グク氏の事件は、親文左派の偽善も暴き出した。庶民大衆の味方を自任していた左派知識人たちが、味方の貴族のような特権については口を閉ざした。口さえ開けば「公正と正義」を叫んでいたのに、チョ・グク一家の反則と不公正についてはかたくなに肩を持った。もう一方の側の過ちについては非常に残酷だった彼らが、味方の過ちには目をつぶるのを目の当たりにし、人々は偽善的左派の正体を目撃することになった。「進歩」ではなく、「陣営」の奴隷であることが明らかになった。もし、それがチョ・グク氏でなかったら、分からなかったかもしれない。真実を悟らせてくれた彼に対し、感謝くらいすべきなのかもしれない」

 

前司法部長官の「チョ・グク」氏は、子どもの不正入学から資産問題まで20を上回る容疑で起訴された。法廷で明かされる証拠や証言は、目を覆うほどの「惨状」である。この本人が、文大統領からもっとも熱い信頼を受けていたのだ。文氏の目は、節穴と批判されている。

 

(3)「国民の立場からすると、ここ3年間は幻想と錯覚から目覚める過程の連続だった。だまそうとする権力とだまされまいとする国民が、絶えず「真実」を巡りゲームを展開した。キャンドルで民衆の心をつかみ誕生した政権であるだけに、期待は大きかった。無能な左派かもしれないが、純粋さだけは信じることができると思った。少なくとも前政権のような独善と不通、非民主的な国政独走などはない、と信じて疑わなかった。しかし、誤算だった。信頼と期待は次々と裏切られ、今ではぼろ切れのようになってしまった」

 

こういう政権を支持し、総選挙で6割の議席を与えた国民も同罪と言うべきだ。文大統領の本質が分らないからだ。

 


(4)「3年前の就任演説で文大統領は「権威主義の清算」を最初に約束した。脱権威を掲げた政府に権力は集中し、大統領は偶像化された。大統領夫妻に対する与党の果てしない称賛は、「ここは北朝鮮か」という声が聞かれるほどだった。文大統領は「分裂と葛藤を終わらせる」と述べた。口では統合を叫んだものの、敵と味方をえり分け、味方にだけ寄り添うやり方は、歴代政権の中で最高潮だった。民主化闘争を勲章のように掲げる政権で、民主主義は傷だらけになってしまった。不通と傲慢(ごうまん)、力で推し進める国政独走は、新独裁論議を巻き起こした」

 

下線のように、敵味方に分類して敵に圧力を加える。この際のテコが、「反日」であった。さも、公正を装いつつ反対派を弾圧する。もっとも醜い大統領に成り下がったのである。

 

(5)「弱者の味方と言いながら、弱者を苦しめる政府となった。貧しい人をさらに貧しくし、貧富の格差をむしろ拡大させる政策に走った。法の前の平等を訴えたかと思うと、実際は法治の破壊者だった。大統領の友人を当選させようと大統領府が選挙に介入したという疑いまで持ち上がった。権力機関を政治から独立させると言っては、検察を掌握しようとあらゆる手段を導入した。フェミニズム大統領と言いながら、味方の権力型セクシャルハラスメントには目をつぶった」

 

このパラグラフは、文政権が行なってきた最大の罪を指摘している。最低賃金の大幅引き上げで、労組は潤った。一方で、零細企業は個人企業の従業員は、失業というムチを当てられることになった。最賃引き上げに応じない企業は、罰せられるからだ。罪を逃れるには、従業員を解雇するしかなかった。

 

(6)「この全ての逆走行に共通していることは、意図されていたということだ。無能やミスではなく、計算された選挙工学の結果だ。理念を優先し、分裂を助長、自分の味方に良くしてあげた方が選挙に有利だと考える。政権発足の時に掲げていた全ての約束が崩壊した。最初から約束を守るつもりがなかったのかもしれない。私たちが知っていた政権、私たちが考えていた大統領像ではなかった。国民よりも陣営、国益よりも政党の利益を優先させる政権という事実が明らかになった

 

文氏は、総選挙で与党が勝つために味方だけを優遇した。これは、発展途上国の選挙手法である。「国民よりも陣営、国益よりも政党の利益を優先させる政権」であることを証明した3年余である。