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米中対立の長期化予想が強まるとともに、中国が外貨準備高の資産構成を変えている。米国債を売却し、日本国債の買い入れを増やしているのだ。表面的に見れば、米国への嫌がらせと日本への急接近という、中国外交姿勢の変化を表わしているとも読める。

 

だが、米国債は基軸通貨国・米国の発行する国債である。信頼度において最も高い証券である。現金と同様の流動性が保証されているのだ。その米国債を売却するには、それに代わるものがあるはず。残念ながら、日本国債がドルの穴埋めをするほどの信頼があるわけでない。ただ、誤解されると困るので補足したい。円はドルに次ぐ強い通貨として扱われている。対外純資産が世界一という実績を背景としているからだ。

 


『レコードチャイナ』(11月27日付)は、「中国、米国債減らし日本国債買い増す『ドル絶縁と見なすのは過度の解釈』との見方も」と題する記事を掲載した。

 

中国が米国国債の保有残高を減らす一方、日本の国債を買い増していると韓国紙(注:中央日報)が報じた。米中対立の進行と深刻化が背景にあるともみられるが、同時に「これをドルとの絶縁と見なすのは過度な解釈というのが市場全般の雰囲気だ」とのアナリストの見方も紹介した。

 

(1)「韓国『中央日報』は、香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(SCMP)の記事を引用。「米財務省によると、中国が9月に62億2000万ドル(約6440億円)規模の米国債を売却した」と伝えた。5カ月連続で減少し、中国の米国債保有残高は1兆617億ドル(ブルームバーグ通信集計)となった。2017年2月以来の低い水準だ」

 

中国が、米国債を売却している理由は、資産の入れ替えの結果と見られる。FRBが、長期の低金利維持政策を発表している。これは、債券よりも株式が投資対象となることを意味する。先に、米国のダウ平均が史上初の3万ドルを突破した裏には、前記のような「債券より株式」という流れがあるはずだ。中国が、米国債を売却して米国株式を買い入れている可能性が強いだろう。中国が、米国への意趣返しに国債を売っているという見方は、感情論に偏った見方と言えよう。

 

(2)「米中の対立が深まるほど中国は米国債の保有を減らす傾向を見せている。昨年すでに米国の第1債権者の地位を日本(9月の米国債保有残高1兆2962億ドル)に譲り渡した。上海財経大の奚君羊教授は中国紙のインタビューで「中国は徐々に米国債保有残高を8000億ドル以下に減らしていくだろう」との見解を明らかにした」

 

中国は、米国債を売却して米国政府をギャフンとさせたいという気持ちあろう。だが、それだけでなく、ソロバンも弾いているはずだ。ただ、「徐々に米国債保有残高を8000億ドル以下に減らしていくだろう」との見解には賛成し難い。中国政府は、米ドルで約1兆ドルの借入れをして、外貨準備高3兆ドル強を支えているからだ。中国の外貨準備高で米国債を8000億ドル以下に減らせば、人民元投機が起こった場合、売り方の格好の材料にされるはずだ。そういう危機を招くようなことをすれば、自ら人民元投機売りの原因をつくるようなものだ。

 


(3)「3兆1400億ドルに上る中国の外貨準備高のうち米国債の空席を埋めているのは日本国債だ。SCMPは財務省の資料を基に中国は9月に277億円規模の日本国債を購入したと報道。その結果、今年19月に中国が購入した日本国債は2兆4000億円になり、前年同期に比べ73%も増えた」

 

米国債を売却し日本国債を購入するのは、外貨準備高の資産構成の見直しと、日本への外交的な接近を感じる。「中国を捨てないで」という意味が含まれている。現在の中国には、日韓との関係を深めることが、地政学的にもっとも重要な意味を持っているからだ。

 

(4)「中国の米国債離れについて、SCMPはアナリストの発言として「中国の米国債保有残高の減少を米ドル建て資産の保有を減らしたものと解釈すべきでない。米国債の代わりに株式や社債のなど他のドル建て資産を購入しているかもしれない」と指摘した。中国銀行証券の首席グローバルエコノミストも、「中国政府が米ドル資産を売却しているが、民間部門は依然として購入している」と分析。「外国人投資家が米国債保有残高を減らしていくのを米ドルの地位の低下と評価するのは適切でない」と言及した」

 

中国が、実際に米国債離れを起こせば、米国にとって中国を叩きやすい相手を見るであろう。米国は、基軸通貨国として世界の金融をコントロールできる力を備えている。中国は、自らドル圏から中国を追放できる理由を与えることになろう。そういう愚を犯すとは思えないのだ。