秦の始皇帝は、現在の習近平氏のやり方で周辺国を征服していったのであろう。米国のトランプ氏が、大統領の座を去ることはすでに確定的になってきた。これまでトランプ氏の対中外交を横目で見ながら欧州は、米中の仲介者の役を果たそうとしてきた。だが、バイデン次期大統領の執権によって、米同盟国は一体となって中国に対抗することが必要になってきた。まかり間違っても、「米中の仲介役」というどっちつかずの外交姿勢は危険である。こういう主張が欧州に登場してきた。
『フィナンシャル・タイムズ』(12月4日付)は、「欧州にとって危険な対中融和」と題する記事を掲載した。
米国のトランプ政権の遺産の一つは、米国と同盟関係にある欧州各国が、米国と中国との対立に不必要に巻き込まれるとの根強い懸念を持つようになったことにある。こうした欧州の懸念は、バイデン前副大統領が米大統領選でトランプ氏に対する勝利を確実にしても部分的にしか和らいでいない。この欧州の懸念は理解できるものの、危険な誤りをはらんでいる。実は米国と欧州とでは、さらされる脅威の質が大きく異なるためだ。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が中国による世界支配を目指す限り、米国にとっては深刻な脅威となる。だがEUにとっては、中国の脅威は存続にかかわる危険となる。
(1)「米国は国際社会での覇権争いのやり方を知っている。今後少なくとも20年間は、経済的にも軍事的にも覇権争いを続ける十分な余力があるだろう。米国は中国と同様、国際的なルールによって自国の主権が侵されることを嫌い、守りを固めている。その点でEUは異なる。EUは政治学者から「規範的」な勢力と呼ばれ、他の国や地域の模範となることで指導力を発揮する。中国政府が青写真を描く世界では、欧州が大切に守り育てた国際ルールが大国の意志にとって代わられる。その世界ではEUは生き延びることができない」
中国を過剰評価してはならない。これから10年間で中国人口はピークを迎え減少局面に向かう。中国の脆弱性をしっかりと把握すれば、怯えることはない。米国と協力して中国へ対抗すれば、EUの政治的「規範」は、立派に次世代へ承継可能である。間違っても中国の恫喝に驚いてはならない。「喧嘩」の仕方は米国に学ぶべきである。
(2)「中国の地政学的野望は、西太平洋地域での覇権を握ることに限られていると考えるのはよくみられる誤りだ。中国政府は、経済的な影響力の広がりと国家としての権勢は不可分ととらえている。中国の広域経済圏構想「一帯一路」はアジアと欧州の間の距離を縮めることを目的としている。中国の戦略的目標はアジアから欧州にまで及ぶユーラシア大陸に君臨する大国になることにほかならない」
中国は、アジアとユーラシアを支配する野望を持っている。それだけの「制圧資源」がないにもかかわらず、夢だけは大きい。「中華再興」を念仏のように唱えながら支配地域を広げようとしている。こういう19世紀的な発想法が、いかに非生産的・非人道的であるか。欧州は、米同盟国と一体になって中国に教えてやることが必要である。その意味で、欧州が「アジア版NATO」と協力すれば、少ない力で中国へ十分に対抗可能である。
(3)「最近の習氏は不思議なことに、今でも中国がいずれは自由主義的な国際的秩序を尊重すると信じている人に自らの誤りを認識させるような行動にばかり出ている。習氏ら中国指導部は常に「西側」のルールを蔑視する発言をするようになり、敵と思われる国や地域に対する攻撃性を強めてきた」
習氏の言動は、典型的な民族主義である。普遍性のない点が彼の弱点である。それゆえ、西側同盟国から見ると、極めて防御しやすい相手である。普遍的な哲学を持たない相手を攻めることは容易なのだ。攻める側に大義名分があるからだ。
(4)「オーストラリアは4月に新型コロナウイルスの発生源に関する国際的で独立した調査を実施すべきだと主張した。それ以来、中国からひっきりなしに経済的な攻撃を受けている。カナダ当局は2018年12月、米国から身柄引き渡し要請を受けていた中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)を拘束したが、その数日後には中国国内でカナダ人2人がスパイ容疑で逮捕された」
中国は、ショットガンで戦いを挑んでくる。防御側が、結束して「大砲」を向ければ引き下がる相手である。中国には同盟国が存在しないのだ。ロシアは、いざとなれば寝返るであろう。中国を支援してもメリットはない。
(5)「駐スウェーデン中国大使の桂従友氏は、19年11月のラジオインタビューで「我々は友人に対してはおいしいワインでもてなす。だが敵にはショットガンを使う」と中国の流儀を端的に表現した。こうした中国の動きに共通しているのは、国際的なルールや、民主主義を支える自由に対する蔑視だ。中国政府は、西側や欧州的な価値とみなされるものに対しては何であってもショットガンを持ち出す」
愚かな行為だと思う。始皇帝が、中国統一において行った手を21世紀の現在、再び使おうとしている。中国よりも民度の高い欧州が、これに屈するはずがない。
(6)「欧州委員会は先月起草した政策文書で、欧州と米国は「権威主義的国家」と「閉鎖的経済」に対して、西側の価値をより強く主張する新しい「世界的同盟」の中で互いの不一致を解消していくべきだと提言している。ここで不足している要素は、中国政府との地政学的な衝突を辞さないEU側の覚悟だ。中国と協力関係を結びたいあまりに、中国政府の野望や手口を理解するために必要な曇りのない目をなくすことがあってはならない。欧州はどちらの味方につくか早晩迫られることになる」
EUは、西側の価値観を守るためにも中国と地政学的な衝突を辞さない覚悟を持つことだ。その決意があれば、中国のショットガンに脅されることはない。腹を決めて戦う意志を持つことだ。その不退転の決意があれば、中国に屈することはない。


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