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これまでの文大統領は、難問に突き当たると「沈黙」して時間稼ぎをしてきた。ところが、今回のユン検察総長の「停職2ヶ月」問題では対応が異なった。行政裁判所が、停職処分を不当と決めたからだ。大統領が人事権を発揮した停職問題が、裁判所によって覆されたのは「弾劾」に相当するとの見方ができたほど。これに慌てて、文大統領が「謝罪」する羽目に陥った。文氏の権威もジリジリと低下し始めている。

 

「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は25日、ソウル行政裁判所が24日夜に尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長に対する停職2カ月の懲戒処分の効力を停止する決定を下したことを巡り、混乱を招いたとして国民に向け謝罪した。行政裁の決定翌日のこのような対応は、今回の事態を早期に収拾して国政を安定させ、防疫などの懸案解決に注力するとの意思を示したものと受け止められる」 以上は、『聯合ニュース』(12月25日付)が報じた。

 


『中央日報』(12月25日付)は、「韓国野党、検察総長を復帰させた裁判所『事実上の文大統領弾劾決定』」と題する記事を掲載した。

 

韓国最大野党「国民の力」の議員が25日、ユン検察総長に対する裁判所の決定について「事実上、文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する審判」と主張した。

 

(1)「元判事の金起ヒョン(キム・ギヒョン)議員はフェイスブックにコメントを掲載し「(裁判所の判決は)文大統領に対する弾劾決定と言っても過言ではない」とし「事実上、弾劾を受けた文大統領の謝罪と秋美愛(チュ・ミエ)長官の更迭を要求する」と話した。同じく元判事の全珠惠(チョン・ジュヘ)議員も「その目標が真の検察改革ではなく『政権捜査無力化』だったため、今回の懲戒処分は無理なものにならざるをえなかった」と記した」

 

大統領の人事権が、裁判所によって覆されたのは尋常なことではない。ユン検察総長追放が検察改革の目的のように言いふらしてきた与党にとって、逃げ場のない痛打を浴びせられる結果になった。

 

(2)「元検事の郭尚道(クァク・サンド)議員は、「文大統領と秋長官に職権乱用罪の責任を問うべきことだけが残った」と主張した。法司委員の張済元(チャン・ジェウォン)議員も「『これ以上法治を踏みにじるな』という意味で文大統領の面前にイエローカードを突き付けたもの」としながら「回復できない打撃を与えた」と加勢した」

今年1月のチュ法務部長官就任以来、1年間もユン検察総長追放問題で明け暮れしてきた。その挙げ句が、法務部長官は辞意を表明し、文大統領は国民に謝罪する羽目に陥った。こういう醜態がなぜ起こったのか。権力の傲慢が最大の理由である。政権の犯罪を捜査させないという発展途上国でも珍しい事件が、GDP世界12位の国家で繰り広げられたのである。「嘆かわしい」の一言であろう。韓国の民主主義が、未成熟であることを余すところなく示している。

 

さらに驚くのは、政権支持メディア『ハンギョレ新聞』が、こういう騒動を「検察改革に不可欠」というとんでもない認識で報じていることだ。進歩派の牙城というべきこのメディアの認識が、これほどずれていることに呆れるのである。

 

『ハンギョレ新聞』(12月25日付)は、「文大統領のリーダーシップに打撃、衝撃受けた大統領府、本日立場発表なし」と題する記事を掲載した。

 

(3)「文大統領の「原則論」が傷つけられただけでなく、大統領府はユン総長に代表される検察権力の制御に失敗したという評価を受けることになった。文在寅政権は検察の民主的統制や検察権力の牽制・分散のために孤軍奮闘したが、「チュ長官対ユン総長(法務部vs検察)」の衝突を経て、「検察改革」の大義は「ユン・ソクヨル総長との戦争」に矮小化された」

 

行政裁判所は、検察の政治からの独立の重要性を強く指摘している。検察総長の任期が2年で再任のないことが、それを保障しているのである。ところが、ハンギョレ新聞はそういう政治からの独立問題を全く理解していないのだ。「検察権力の制御に失敗したという評価」である。政治が、検察を制御するというとんでもない思考である。ハンギョレ新聞の描く民主主義は、半ば北朝鮮思想に染まっているのであろう。

 


(4)「ユン総長に対する監察・職務停止・懲戒などチュ長官が主導した一連の措置が荒っぽく不備があったという批判が多かったが、文大統領はチュ長官に自制を要請する正確なシグナルを出さなかった。結局、チュ長官は大統領府と十分な事前協議なしにユン総長に対する職務排除・懲戒請求を決定し、ことあるごとに裁判所の判断によって妨げられた。チュ長官が起こした渦に大統領府が巻き込まれたわけだが、チュ長官がすでに辞任の意思を表明したため、その責任もそのまま大統領府のものとして返ってくるほかない。これまで検察が節制なく振り回してきた捜査の刃すらも、「生きた権力」に向けたものだったと正当性を主張する口実を作った

 

ここでは、チュ法務部長官を悪者にしている。チュ氏に罪をなすりつけて、文大統領を救うという戦法である。人事権を握る文大統領が、最高責任を負うべきものなのだ。下線をつけた部分では、政権にまつわる犯罪捜査を「節制のない捜査」と非難している。韓国の進歩派メディアと言っても、この程度の認識である。韓国の民主主義が、未成熟と判断せざるを得ない理由はここにある。