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日英両政府は2月3日夜、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)をテレビ会議方式で開いた。日英の2プラス2は2015年にロンドンで開催して以来だ。英国は昨年、中国が香港へ「国家安全法」を導入し、香港を失う形になった。これにより、いやがうえにもアジアとの関係を強化せざるを得なくなっている。

 

英国はこの延長で、日本との関係強化に踏み出す。日英の「2プラス2」開催は2回目だが、これまでの会議と比べ、実質的な中身は濃くなっている。中国の海洋進出が顕著になっているからだ。

 

現在の日英関係は、米国を媒介にして「準同盟国」の関係である。だが、1902年(明治35年)、日英同盟を結びロシアのアジア進出に備えた。1905年、1911年に改定され、1923年に破棄された。日本の中国への進出が目立ち始め、米国の強い圧力によって英国が破棄したもの。米国は、1911~12年に「オレンジ作戦」と称して、日本との軍事決戦の準備に入っていたのだ。

 


こうした過去の日英の結びつきが、今度は中国の海洋進出で新たな「日英同盟」へと発展する可能性を秘めている。それは、英国が2017年就役の「クイーン・エリザベス」(全長約280メートル、排水量約6万5000トン)という英海軍最大級の艦船を、間もなく日本へ派遣するからだ。

 

操艦要員は700人で、航空要員を加えると乗員は1600人に達する。展開時には垂直離発着型の最新鋭ステルス戦闘機F-35B2個飛行隊搭載し、45型駆逐艦なども随伴する。一昨年2月、英国のウィリアムソン国防相(当時)は「クイーン・エリザベス」の太平洋派遣を表明。英政府は日本など関係国と協議を進めていたもの。日本が、母港になる見込みである。このような日英関係強化を背景に、日英「2+2」が開催された。

 


『日本経済新聞 電子版』(2月3日付)は、「英に尖閣・台湾への関心喚起 日本、アジア傾斜で好機」と題する記事を掲載した。

 

日英両政府は2月3日夜、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)をテレビ会議方式で開いた。英国は今春以降にインド太平洋地域に空母を派遣するなど中国の海洋進出を警戒した動きをみせる。日本は沖縄県・尖閣諸島や台湾情勢に関する欧州の関心を喚起する好機だとみている。

 

(1)「茂木敏充外相と岸信夫防衛相、ラーブ外相とウォレス国防相が出席した。茂木氏は「東シナ海、南シナ海で一方的な現状変更の試みが継続している。強い懸念を共有したい」と述べた。岸氏は英国の空母派遣が「自由で開かれたインド太平洋の推進に貢献する」と伝えた。英国は欧州連合(EU)離脱後に国際社会での影響力を維持・拡大するためにアジアへの関与を強めている。英国が2月1日に環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を申請したのもこの文脈だ」

 

英国は、EU(欧州連合)を脱退してアジアへ目を向けている。その核は日本である。旧日英同盟復活のチャンスが訪れている。英国は、経済面でTPP11へ加盟申請した。日本が議長国であるので種々、斡旋するであろう。

 


(2)「(英国は)中国への不信感を深めている事情もある。新型コロナウイルスへの対応や宗主国だった香港への統制強化が契機になった。安全保障面の警戒も高めており、17年に就役した空母「クイーン・エリザベス」のアジア派遣は中国を意識している。日本政府は英国との協力を深化させる。英国が空母を展開する際には米軍の保有するステルス戦闘機「F35B」が参加する。海上自衛隊との共同訓練を想定する。空母は潜水艦や巡洋艦など複数の艦艇からなる「空母打撃群」を構成する。周辺国を威圧する効果がある」

 

空母「クイーン・エリザベス」と潜水艦や巡洋艦など複数の艦艇からなる「空母打撃群」がアジアへ派遣されるのは、中国けん制上でも大きな力を発揮する。

 

(3)「日本側は、今回の協議で尖閣や台湾を巡る認識を英国と共有するのを期待する。香港や南シナ海問題に比べて関心が薄いとみる。インド洋から南シナ海にかけてもともと英国の植民地だった国が多い。インドやマレーシア、ミャンマーなどだ。香港以北にも意識を振り向けるよう促す。2月1日には中国の海警局を準軍事組織に位置づける海警法が施行し、尖閣周辺での中国公船による強硬な活動に拍車がかかる見込みだ。台湾空域では中国の軍用機が挑発を繰り返す。外務省幹部は「尖閣や台湾について英国にきちんと状況を説明する必要がある」と話す」

 

英国は、NATO(北大西洋条約機構)の主力国である。その英国が、日本と関係を深めることは、日本にとって安全保障上も大きな力になるはずだ。尖閣問題だけでなく、台湾防衛においても中国をけん制する。

 


(4)「日本は尖閣問題が2国間の対話だけでの改善は難しいとみて、同盟国である米国に加え欧州の関心も呼び起こす。台湾有事は東アジアで起こりうる大きなリスクである。米国はバイデン政権の発足間もない1月23日、中国軍の戦闘機が台湾の防空識別圏に侵入すると、国務省が「台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく」との声明を出した。日本は集団的自衛権の行使を認めたものの憲法9条で武力行使に制約がある。米国だけではなく欧州が関心を示せば中国に対する抑止になる」

 

日本にとって当面の課題は、尖閣諸島への中国侵略阻止である。米軍だけでなくNATOとの関係を深める必要がある。その点で、英国の存在は大きな力となろう。

 

(5)「中国の台頭に意識を傾けているのはドイツ、フランスも同じだ。ドイツは独海軍に所属するフリゲート艦を日本に送る検討を進め、フランスもインド太平洋地域に積極的に艦艇を派遣している。日英両国は安保協力を重ね「準同盟」とも言える関係に発展させてきた。情報や物資のやりとりをしやすくする協定などの整備を終えた。英陸軍と陸上自衛隊による共同訓練や、英海軍と海上自衛隊による北朝鮮の違法船舶の情報収集など協力を具体化している。装備品の分野で日本と英国はともに次世代の戦闘機開発に着手しており、両国で研究した新技術の活用を見据える

 

日英関係は、「準同盟」とも言える関係を構築している。この関係強化は、日本の安全保障に大いに貢献するはずだ。

 

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