『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月18日付)は、「中国、アント上場中止の裏側 株主に習氏の政敵」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席が昨年、電子商取引大手アリババグループ傘下のアント・グループの新規株式公開(IPO)を中止に追い込んだ際、その真意は明らかと思われた。習氏はアントが金融システムのリスクを高めていると懸念したうえ、自らが旗を振る金融監視強化の取り組みを創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が批判したことに激怒したとみられていた。だが、中国当局者や政府顧問によると、もう一つの重要な理由があった。アントの複雑な所有構造や、世界最大規模のIPOで利益を手にするはずだった関係者を巡り、中央政府は神経をとがらせていた。
(3)「IPOの数週間前になって、目論見書でアントの複雑な所有構造が曖昧に表記されていることが中央政府の調査で分かった。これまで報じられていなかったこの調査を知る当局者や政府顧問の話で明らかになった。幾重もの不透明な投資構造を通して同社の株を所有していたのは、人脈豊かな中国の有力者たちで、中には習氏やその派閥の対抗勢力となり得る政治家一族とつながりを持つ者もいた」
アントの株主構造は曖昧な記述であった。詳細な調査で驚くべき事実が浮かび上がったのだ。習氏の政敵である江沢民・元国家主席が率いる上海閥が潜んでいたのである。
(4)「こうした人物らはマー氏をはじめとする経営陣と共に、3000億ドル(約31兆7800億円)超の評価額が見込まれたアントの上場で多額の利益を得る立場にあった。習氏は国家主席に就任してからの8年で多くの政敵を失脚させ、今や毛沢東になぞらえられるほどの権力を握る。習氏の主導した取り組みには、汚職撲滅や不動産投機など高リスクの金融活動の締め付けが含まれる。汚職撲滅運動を通して実際に腐敗を標的にすると同時に、権力の掌握も進めてきた。アントのIPO計画は、習氏が長らく難色を示してきた利益獲得や蓄財の象徴だった」
アントのIPO計画が予定どおりに行われていれば、3000億ドル(約31兆7800億円)超の評価額が、それぞれ大株主の手に渡るところだった。習氏が最も警戒していた蓄財であり、水際でそれを阻止したというのだ。
(5)「規制当局が目論見書の詳細を掘り下げるにつれ、アントの一部投資家やその投資構造を巡って警鐘が鳴り響いた。調査を知る関係者が明らかにした。その一つは、江沢民元国家主席の孫にあたる江志成が創業者に名を連ねるプライベートエクイティ(PE)の博裕資本だ。江沢民一派の多くは習氏の汚職撲滅運動で追放されたが、江氏は今なお水面下で影響力を保っている。江氏は「上海閥」と呼ばれる派閥に属する。江氏とつながりのある株主として、中国共産党の元政治局常務委員である賈慶林氏の娘婿が率いる投資グループも浮上した。同常務委は党の最高指導部だ」
下線のように習氏にとって江沢民・元国家主席は「天敵」の関係である。習氏は、意地でも江一派に株価値上りの恩恵に浴させたくない、という思いなのだろう。ただ、フィンテックそのものを「撲滅」させるような圧力を加えることが、中国経済の将来にどのようなマイナス要因になるか、冷静な判断を放棄していることは間違いない。
問われているのは、不健全な中国全体の金融構造是正である。国有銀行=国有企業を別格扱いすることが、フィンテックへ異常なまでの依存をさせているのだ。この点の是正がなければ、中国経済は潜在的な発展力をかなり奪われるはずだ。
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2021-02-18 |


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