独裁政権の欠陥に落込む
英国が中国報復の刃磨く
イラン抱えこみは自殺点
NATOが立上がる威力
中国との投資協定棚上げ
米中外交トップ会談は、3月18~19日にかけて3回行なわれた。米国は、中国に対してレッドラインを突きつけたと見られる。中国は、余りのショックで中国指導部の意見調整が遅れたのであろう、国内メディアは米中外交トップ会談の報道を抑えていたほどだ。レッドラインとは、尖閣諸島と台湾の防衛を基本にインド太平洋戦略を示したと見られる。中国は、これに驚いたに違いない。
習近平氏は、6月中にも米国を訪問して7月1日の中国共産党100周年を盛大に祝う予定であったという。こういうスケジュールをみると、米中が徹底的な対立になるという予想をしていなかったと見られる。
独裁政権の欠陥に落込む
中国が、米中関係をそれほど深刻に受け取っていなかったのは、国際感覚の違いも大きな要因であろう。独裁政権の中国は、自国民を威圧し、どう喝することにあまりにも慣れきっている。海外に展開した場合、そうしたやり方がいかに逆効果となるかを理解できないという問題を抱えている。独裁国家は、自国内では体制への批判者たちを脅しによって容易に屈服させられる。外国政府は、国内同様に簡単に服従しないのだ。
繰返せば、中国の麻痺し切っている恫喝手法に対して、米国はレッドラインの提示によって、「一歩も引き下がらない」と断固たる決意を示し、中国は大慌てしたと見られる。
中国が大慌てしたと判断するのは、ロシア外相と会談する一方、イランとの間に25年間の経済協力を急いで発表したことだ。中国は、藁を掴むような気持ちでロシアとイランを中国陣営に組入れる戦略へと動いたと見られる。イランとの間では、軍事協力も模索しているようだ。
中国は、恫喝外交しか知らないことから大きなミスを犯した。NATO(北大西洋条約機構)の存在を忘れていた。中国が、ロシアとイランを自陣へ引入れることは即、NATOへの挑戦に等しいのである。NATO加盟国30ヶ国が、中国への防衛線を築けば、それだけで中国に軍事負担となるはずだ。中国は、インド太平洋戦略によって、日米豪印4ヶ国と対峙する一方で、背後にNATO軍が控えるという最悪事態を招くことになった。中国は、まさに地球規模で「敵」をつくってしまったのである。
中国外交は、地球を俯瞰した外交でない。新興国特有の性急さが前面に出ている。そもそも、香港の「一国二制度」を取り決めた英中協定を一方的に破棄し、香港へ「国家安全法」を強引に導入したことが失敗の始りだ。英国との協定破棄が、どのような波紋を呼ぶかについて一顧すらしなかったのである。韓国文政権が、日韓慰安婦合意を破棄したのと同じ振舞であった。英国の怒りは、日本の怒りにも通じるものである。
英国が中国報復の刃磨く
この英国が、今後の「中国衰亡」に向けて大きな役割を果たすことは決定的である。かつての大英帝国として、ユニオンジャックを世界の港にはためかせた国家だ。中国は、その英国との間に結んだ協定を打ち捨てた。その恨みが、中国の将来に立ちはだかることは不可避であろう。日本が、韓国と容易に外交交渉しない背景と同じなのだ。
英国は、3月16日発表した外交・安全保障の方針「統合レビュー」で、次の点を明らかにした。
1)民主主義と人権を擁護し米国との関係を重視する。
2)インド太平洋への関与を強める。
3)「クイーンエリザベス」をインド太平洋へ派遣し、NATOと連携する。
4)4月末にジョンソン首相が初外遊先としてインドを訪問する。
これら4項目には、対中国戦術が明瞭に示されている。以下、項目別にコメントをつけたい。
1)「民主主義と人権を擁護し米国との関係を重視する」は、米国と協力して中国へ対抗すると宣言したもの。米英両国は兄弟国である。時に対立はあっても協力し合い、互いの権益を守ってきた関係だ。最近は、この中へ日本を加える動きが高まっている。日露戦争(1904~05年)当時の密接な三ヶ国の関係に戻るのだ。
2)「インド太平洋への関与を強める」では、中国の軍事進出に対抗すると鮮明にしている。英国は2月1日、TPP(環太平洋経済連携協定)へ加盟申請した。年内に正式加盟の運びと見られる。英国が、EU(欧州連合)を脱退してTPPに加わる理由は、アジア経済の発展に期待している結果だ。それゆえ、中国の軍事進出を防ぎ、安定的発展を守らなければならない死活的課題を背負うことになった。この点は、見落とされがちだが極めて重要である。
(つづく)
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