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韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が4月2、3日に中国招請で訪問し、王毅外相と会談する。3月18日、米韓の外務・防衛の「2+2会議」を終わっているだけに、中国は会談内容を聞き出したいところであろう。鄭氏は、どこまで話すのか。日米の目が光っている。

 

『中央日報』(3月31日付)は、「米国より先に中国を訪問する韓国外交長官、覇権競争の中で『綱渡り外交』」と題する記事を掲載した。

 

外交部は31日の報道資料で、「鄭長官は王毅外相の招請で中国福建省廈門を実務訪問し、4月3日に韓中外相会談を開く予定」とし「韓中関係発展案を模索すると同時に、韓半島(朝鮮半島)および国際問題などについて深みのある意見を交換する機会になるだろう」と明らかにした。



(1)「鄭長官の今回の訪中は、2月の就任後初めての海外対面外交日程という点で象徴的な意味がある。鄭長官は18日の韓米外交・国防(2プラス2)閣僚協議に続き、25日には韓露外相会談をしたが、共に相手国のカウンターパートが訪韓して実現した日程だった。さらに政府高官級の大半が新型コロナで海外への出国を自制している点を考慮すると、鄭長官が中国との関係設定を重視していることを示唆する。実際、外交部長官が米国より先に中国を訪問するのは異例だ。歴代外交部長官はほとんどが就任後、米国訪問を高官級外交の開始点とした」

 

歴代外交部長官はほとんどが就任後、米国訪問を高官級外交の開始点としてきた。今回は3月18日に米韓外交・国防「2+2会議」を済ませたので、中国へ訪問するのだろう。その意味では、目くじら立てることもないだろう。ただ韓国は、インド太平洋戦略の「クアッド」加入で米国へその意思を示したとすれば、米国が韓国に対して取越し苦労することもあるまい。

 

(2)「鄭長官の訪中は、2月の王毅外相の招請後、実務協議を経て実現することになった。外交筋によると、3月中旬から韓中間で会談の日時や議題をめぐる本格的な協議が進行していたという。17日に訪韓したブリンケン米国務長官を迎えた時点には、すでに韓中外相会談に関連した日程を調整していたということだ。外交筋は「王毅外相の公式招請後、鄭義溶長官が中国訪問に対する確固たる意志を見せ、会談の日程や議題の調整が加速した」と伝えた」

 

中国の王毅外相は、日本の茂木外相にも招請状を出しているというが、日本は右顧左眄することなく訪中せずに中国批判を展開している。日韓外相の対中姿勢を見ると、日本の方がはるかに毅然としている。韓国の鄭長官は、茂木外相との早期会談を希望すると語っている。

 

(3)「このように韓国政府が、「同時管理」外交に注力しているのは、バイデン米政権の発足以降、米中覇権競争の構図が本格化しているからだ。18日に韓米外交・国防(2プラス2)閣僚協議が韓米同盟を強化する契機だったとすれば、鄭長官の今回の訪中は韓国が米国に傾いているという中国側の憂慮をなだめるための日程と評価される」

 

韓国が、「同時管理外交」(バランス外交)できる技倆を持っているとは思えない。日本とこれだけ対立している韓国外交は、極めて稚拙である。対中国外交では、「米つきバッタ」のように振る舞っているとしか思えない。「ご機嫌うかがい」は、外交と呼べないのである。

 


(4)「ただ、外交関係者の間では米中覇権競争が本格化する中での鄭長官の今回の訪中に憂慮の声も出ている。「韓米同盟は我々の外交の根幹」というメッセージと、米国よりも先に中国を訪問するという事実の間隙のためだ。特に最近中国と密着しているロシアの外相と国防次官が訪韓したのに続き、鄭長官がまた訪中して外相会談をするのは、中国に対する牽制意思を明確にしているバイデン政権を刺激する余地があるという指摘だ」

 

米同盟国の中では、韓国が最も弱い輪と見られているのだろう。中ソが相次いで、韓国へ接近しているのは、そういう認識の結果である。これは、韓国として恥に思わなければダメである。

 

(5)「韓中外相会談が、台湾と隣接する福建省厦門で開かれる点も注目される要素だ。台湾は最近、米国と政治・軍事的協力を強化すると同時に、中国から軍事的な脅威を受けるなど米中競争の要衝地と評価されているからだ。こうした状況で韓中外相が台湾の目の前の厦門で会談するのは、それ自体で不必要な誤解を招くおそれがある。韓国が台湾問題など米中の対立する事案で中国側と密着している信号として映るからだ。特に新型コロナで対面外交が制限される状況であるうえ、昨年11月に王毅外相が訪韓してから5カ月ぶりにチャーター機で中国を訪問する点などを勘案すると、こうした憂慮はさらに深まる」

 

中韓外相会談が、台湾の目の前の厦門で開催することに「ピン」と来なければ外交官として落第であろう。中国が、韓国を利用しているのだ。この程度の認識では、お世辞にも「同時管理外交」とは言えない。中国の策略に飲み込まれている証拠だ。

 

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