最近、中国をめぐる暗いニュースが流れている。昨年の人口が減少したことに続いて、国民に向かって「食べ残し禁止法」を成立させるというニュースまで現れた。元来、中国では食卓に食べ切れないほどの料理を並べるのが豊かさの象徴とされてきた。今後、これを行なうと罰するという「非常時」認識が要求されることになった。
「大食い禁止法」が登場した背景には、食糧自給率が70%台へ落ちたという厳しい現実がある。大豆やトウモロコシが、輸入に依存する状態だ。日本では、あってはならないコメを輸入するような状況である。食糧安保上も、極めて危険な状況になっている。
この段階で「大食い禁止令」が出たのは、米中対立の激化が背景にある。大豆もトウモロコシも米国が主産地である。米国と覇権争いをしようという中国が、主要食糧を輸入に依存するのでは、とても覇権争いする気迫を奪われる。戦時中の日本では、「米国から石油を輸入しながら米国と戦争できない」と山本五十六が指摘した。同様に、中国が米国から大豆などを輸入しながら米国と覇権争いするのでは、理屈に合わない話になるのだ。
『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「中国『食べ残し禁止』法可決。浪費ならごみ処理費負担も」と題する記事を掲載した。
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は29日、食品の浪費を禁じる法律を可決した。飲食店は、大量に食べ残すなどした客からごみ処理の費用を徴収できる。暴飲暴食をあおる大食いを売りにした番組や動画の放送、配信も禁じ、違反者には罰金も科す。
(1)「近く公布し施行する。草案によると、大食い番組にかかわったテレビ局や動画配信業者に最大10万元(約160万円)の罰金を科す。飲食店が客に過剰な注文を促すことも禁止し、是正の警告を無視した違反者には最大1万元(約16万円)の罰金を科す。中国には宴会の主催者が自らのメンツのために多めに注文する習慣がある。飲食店のほか、食堂を持つ政府機関や学校、出前アプリを展開するネット企業にも食品の無駄が生じないような対策を要求した。スーパーには賞味期限切れが近い商品の管理を徹底し、まとめて売り出すよう求めた」
中国では、市場機構を使って需給バランスをとるよりも、罰則をもって直接に需給バランスを取る短兵急な方法を用いている。権力メカニズムが、需給バランスのバロメーターになっているのだ。国民が、これに不満を持っても権力が押し潰してしまう形である。
(2)「法律に事細かい要求や禁止を並べたのは、習近平(シー・ジンピン)国家主席が昨年8月「食糧安全保障には常に危機意識を持たなければならない」と強調したことがきっかけだ。大豆やトウモロコシを輸入する米国との対立が長引くことも視野に、飲食時の浪費を戒める指示を出した」
飲食時の浪費を防ぐには、食料品価格を上げれば、自然に需要が減って供給とのバランスが取れるはずである。こうした、市場機構利用という発想がない。大食い防止法では、必ず密告制度がつきまとうはず。監視カメラが、密告制度を代替するのであろう。刑務所か留置場で、食事している感じであろう。
(3)「食べ残しを禁じる法律とは別に、「食糧安全保障法案」も2021年中に審議する方針だ。政府系シンクタンク、中国社会科学院などの調査では、中国都市部の飲食店で年間1700万~1800万トンの残飯が発生している。3000万~5000万人が1年間に食べる量に相当するという。一方、就農人口の減少で25年に約1億3000万トンの食糧不足に直面しうるとの試算もある」
中国は、米国に比べて食糧生産の面でも格段、不利な条件に置かれている。それでも、米国覇権に挑戦したいというのは、習近平個人の野望であろう。心から、米国に勝てると思っているわけでなく、それを利用して自らの地位保全を狙っているのだ。迷惑なこと、この上ない話である。


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