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韓国文政権は、二股外交にご執心だ。世界の潮流は、それを許さない方向へ動いている。米国は、インド太平洋戦略対話の「クアッド」(日米豪印)で結束を固めて、中国へ対抗姿勢を強めているのだ。クアッドでは、分科会を設けて半導体・バッテリー・レアアース・医薬品の4種目について共同歩調をとる。韓国は、クアッドへの正式参加を明言せず時間稼ぎをしている。この「曖昧戦術」は、サムスンの業績に響くという指摘が出てきた。米国の支援を受けられなくなる恐れがあるのだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(4月30日付)は、「サムスン、先端半導体で苦戦 TSMCとの差が拡大」と題する記事を掲載した。

 

韓国サムスン電子が先端半導体でライバルの台湾積体電路製造(TSMC)に差を広げられている。スマートフォンの頭脳となるCPU(中央演算処理装置)などの最先端品の量産で苦戦し、受託生産でのシェアも落としている。最先端品での劣勢は、半導体メモリーやスマホといった他の基幹製品の競争力低下につながりかねない。

 


(1)「サムスン半導体部門トップの金奇南(キム・ギナム)副会長は3月の株主総会、「先端工程の競争力は遜色ない。大型顧客を確保して格差を縮めていく」と語った。TSMCとの技術格差を問われ、こう強調した。一方、4月29日に発表した2021年1~3月期の半導体部門の売上高は前年同期比8%増の19兆0100億ウォン(約1兆8700億円)だったものの、営業利益は16%減の3兆3700億ウォンだった。減益は1年ぶりだ」

 

サムスンは、世界的な好況に沸くはずの半導体部門が、2021年1~3月期営業利益で16%減に落込んだ。

 

(2)「証券会社によると、最大の要因はCPUや通信用半導体の受託生産を手掛ける非メモリー事業の赤字だ。米テキサス州の工場が寒波に伴う停電で2月中旬から稼働停止になった。4~6月期中の正常化を見込むが、停止が長引くことで米クアルコムなど顧客の離反を招くリスクもある。懸念材料は工場停止だけではない。韓国内の最先端品ラインの立ち上げの苦戦もある。複数のサプライヤーによると、回路線幅で最先端の5ナノ(ナノは10億分の1)メートルの歩留まり(良品率)向上が遅延。5ナノの量産開始でTSMCに数カ月遅れ、その後も技術格差は広がっているというのだ」

 

減益の理由は、受託生産を手掛ける非メモリー事業(システム半導体=先端半導体)の赤字という。回路線幅で最先端の5ナノメートルの歩留まり(良品率)向上が遅延した結果だ。半導体は、歩留まり率が損益に大きく響く。

 


(3)「半導体の回路は細いほど処理性能が高く、消費電力の抑制にもつながる。電子機器の小型化にも役立つ。量産出遅れの背景には半導体製造装置の「買い負け」がありそうだ。サムスンは同ラインで「EUV(極端紫外線)露光」と呼ぶ新技術を導入。同装置はオランダの製造装置メーカー、ASMLが世界で独占供給しており、5ナノ以下の半導体量産には不可欠だ。ASMLによると出荷実績は計100台ほどで、そのうちTSMCが7割超を確保したとみられる。いち早く装置を確保したTSMCほどには生産技術を蓄積できていないのが現状だ」

 

サムスンは、新技術「EUV露光」生産の立ち上がりで、生産ノウハウを確立できず、歩留まり率が低いままなのだろう。時間を掛けないと、歩留まり率向上は難しい。中国の半導体企業は、歩留まり率が「万年低飛行」で、オシャカの山をつくっている。

 


(4)「受託生産事業への投資規模も今後は影響しそうだ。TSMCは4月、半導体不足への対応として、23年までの3年間で1000億ドル(約11兆円)を設備投資に振り向ける計画を明らかにした。サムスンは21年、4兆円規模の投資を予定するものの、DRAMなど半導体メモリー向けが過半を占め、受託専業のTSMCと比べれば投資規模は見劣りする」

 

TSMCは、米国との関係が密接である。技術的にも申し分なく、設備投資へ積極的に立ち向かい、米国が最も期待しているメーカーである。

 

(5)「実際に最大手のTSMCの寡占は急速に進む。台湾の調査会社トレンドフォースによると、21年1~3月のTSMCの受託生産の世界シェアは56%と前年同期比2ポイント上昇。2年前からは8ポイントも伸びており、2位のサムスンが同期間でシェアを1ポイント下げたのとは対照的だ」

 

TSMCの半導体受託生産の世界シェアは56%と過半を占めている。サムスンは、2位ながらシェアを落としている。この両社は、対照的な動きだ。

 

(6)「政治的な要因も無視できない。米中対立を背景に、対中国で結束する米国と台湾に比べて、韓国政府の立ち位置は米中のはざまで揺れ動く。二股外交を続けることで半導体サプライチェーンから韓国企業が孤立する危険性もある。こうした先端半導体での競争力低下が、サムスンの総合力を脅かす可能性がある。受託生産を手掛ける非メモリー分野の半導体売上高は全体の7%にすぎないものの、CPUやイメージセンサーは自社スマホに搭載されて性能を下支えする。スマホで競合するアップルはTSMCにCPU生産を全量委託しており、TSMCとの技術格差はスマホ性能でのアップルとの格差に発展する」

 

米国は、防衛面からも台湾への肩入れを急いでいる。TSMCは、台湾を代表する半導体企業である。それだけに、サムスンよりも優遇策を受けられやすい環境にある。逆に、韓国の二股外交がサムスンへ負の影響を与えやすいことも事実だ。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という喩えもあるから注意すべきだろう。

 

非メモリーのシステム半導体の採算性は極めて高い。メモリー半導体と比較にならないのだ。サムスンの自社スマホへ搭載されるだけに、TSMCから品質面で遅れを取れば、サムスン・スマホの品質に響く。重大問題である。