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中国習近平氏の強硬策は、ついにEU(欧州連合)でも破綻した。EUは、新疆ウイグル自治区の人権弾圧へ抗議して中国側を制裁した。中国が、これに反発してEU側へ逆制裁したことに、EUがさらに反発し昨年12月末に7年越しで調印した「EU・中国投資協定」批准審議を「凍結」することになった。

 

EU側は、意気軒昂である。これ以上、中国の言いなりになる「従順なウサギ」ではないと団結している。中国経済の「末路」が、国勢調査の人口動態で見えてきたことから、EU側は強気になっている。

 

『大紀元』(5月22日付)は、「EU・中国の投資協定が『冷凍庫入り』、欧州議員『もう順従なウサギにならない』」と題する記事を掲載した。

 

欧州連合(EU)の欧州議会は20日、中国との投資協定の批准を巡り、審議などの手続きを凍結する決議を採択した。新疆ウイグルの人権問題をめぐって中国がEUの個人や団体に課した制裁措置が解除されるまで審議しないという。EU当局者は同協定が現在「冷凍庫」に入れられたと表現した。ドイツの政治要人も、中国上層部の重大な誤算だと皮肉った。凍結決議の採決結果は賛成599、反対30、棄権58の圧倒的多数で可決された。

 

(1)「議員らは欧州議会に対し、将来協定を批准するかどうかを決める際には、香港を含む中国の人権状況を考慮すべきだと念を押した。今回凍結されたEUと中国の包括的投資協定は、7年間の交渉を経て昨年12月にようやく合意したものである。今年3月、EUは中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡り、中国当局者4人に制裁を科した。これに対抗し、中国側はEUの政治家や外交組織、シンクタンク、欧州議会の議員らに対する報復制裁を発表した。この報復制裁は、欧州の政界を怒らせ、欧州議会での投資協定の批准の棚上げにつながった」

 

下線部にように今後、投資協定の批准手続き再開では、香港を含めた人権状況の改善が条件になるという。こうして、中国共産党が存在する限り、包括的投資協定が日の目を見ることはなくなった。中国にとっては、大損害である。

 


(2)「ドイツ「緑の党」元党首で現在、欧州議会において「対中国関係代表団」の団長を務めるラインハルト・ビュティコファー氏は、ツイッターで「中国は自分で持ち上げた石を自分の足にぶつけた」と皮肉った。ビュティコファー氏は、ドイチェ・ヴェレとのインタビューで、日に日に覇権主義を強める中国に直面して、欧州の人々はもはや、政治と人権、経済貿易を切り離せるフリをすることはできないと述べた」

 

ドイツ緑の党は最近、支持率を急激に高めて1位である。メルケル首相後の政権は、緑の党が担いそうな勢いだ。そうなると、中国はEUへの足がかりを失う。中国にとっては絶望的である。

 

(3)「同氏はまた、「北京側は貿易協定を通じてEUに中国の人権迫害に沈黙を守ることを望んでいるが、現在、欧州の経済界は過去のようにこの協定には期待していない」。「中国が必要としているハイテク製品の40%は欧州から来ている。つまり、中国はただの張子の虎だということだ。我々欧州市民はもう(順従な)ウサギちゃんにならなくても良いのだ」と語った」

 

中国にとって、ハイテク製品の40%をEUに仰いでいる。中国が、EU市場から離れられない理由である。

 

(4)「ビュティコファー氏は以前にもドイツメディアに対し、「中国の上層部がEU代表を制裁するのは重大な誤算だ」、「習氏はドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領を取り込んだにもかかわらず、その目的を達成できなかった」と語っていた。欧州議会国際貿易委員会(INTA)のベルント・ ランゲ委員長は以前にも、EUと中国の包括的投資協定は「冷凍庫入り」し、同僚に対する制裁が続く限り、今後2年間で解凍されるチャンスはないと述べていた。ドイチェ・ヴェレによると、今回の協定凍結の動議は欧州議会のほぼすべての主要政党から支持を得たという」

 

EU・中国の包括的投資協定は事実上、消えてしまったという政治状況になった。中国の受ける損害は大きい。EU企業の技術導入がほとんど不可能になったからだ。

 

(5)「報道は北京の報復制裁が、かえって欧州議会の各党の結束を固めたとした。ドイツ政府幹部は、「北京は、欧州の利益と価値観を守る欧州議会の決心を過小評価した」と述べた。議員らはまた、EUに対し、対中政策では米国との協力を強化し、EUと台湾との投資協定の締結に関する交渉を呼びかけた」

 

中国は、東欧諸国を一帯一路に組入れて、EU分断の戦略を練ってきた。だが、EU全体の「反中国」気運によって、これも不可能になった。思惑が、音を立てて崩れていく感じだ。

 

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