テイカカズラ
   


韓国では、来年3月の大統領選挙を前にして候補者選びが本格化しようとしている。与党「共に民主党」からは、前首相の丁世均(チョン・セギュン)氏も候補者の一人として名乗りを上げている。世論調査では、丁氏の人気度は一桁に止まっている。それだけに、いかに世間の注目を集めるかに腐心しているところだ。そういう焦り気分が強いとは言え、日本を「あいつら」と呼んで猛批判することは褒められたことでない。「反日」が人気を集める常套手段であるものの常軌を逸した発言である。

 

一方、最大野党の「国民の力」では、次期党代表選びが始まっている。こちらは、36歳で議員経験なしの青年が、党による世論調査(一般と党内)で一位になるという新風が吹いている。韓国政治の混乱の中で、新たな動きが始まるのか目を離せなくなった。

 


『中央日報』(5月30日付)は、「韓国前首相、日本政府を露骨な表現で批判」と題する記事を掲載した。

 

丁世均・前首相が「東京五輪地図」に独島(ドクト、日本名・竹島)を自国領土として表示した日本政府に向けこうした露骨な表現で批判した。

(1)「丁前首相は5月29日、忠清南道(チュンチョンナムド)地域の市道議員懇談会に参加し、「日本はちょっと偏屈で恥知らずなのではないか。われわれを刺激しなくてもいくらでも五輪をできるのではないか。五輪地図(注:日本五輪HPで竹島を掲載)修正ができなければ国民の同意を受けて五輪をボイコットすべき」と主張した」

 

竹島問題は、日本が国際司法裁判所へ提訴しようと申入れたが、韓国の拒否でそれもできない状況である。韓国が、それほど自信があるならば国際司法裁判所で白黒を決めるべきである。米国も日本領土であることを認めている。領土は、国家形成の基本要因である。ないがしろにできない問題である。

 

(2)「その上で、「言うことも恥ずかしいが、われわれは何度も信号を送った。対話しようと。ところが最隣国に対し首脳会談もまったくできなかった。独島をあいつらが奪っていこうとするのは絶対容認できないこと」と述べた。また、「われわれが(独島を)奪ってきたならわからないが、歴史的にも史実的にもとんでもないことをする」と付け加えた」

 

竹島問題と徴用工問題を混同した発言である。韓国は、竹島問題で国際司法裁判所提訴を拒否。徴用工問題では、韓国政府が解決案を示さない限り、日本が日韓首脳会談を開催しないと回答している。韓国は、自ら解決案を出さずに首脳会談を開こうとしているが無理難題な話なのだ。日本を「あいつら」呼ばわりすることは、あとあと困ったことにならないか。仮に、韓国大統領に当選した際、「あいつら」の日本政府に会わす顔があるまい。

 


(3)「彼は、2019年に日本政府が韓国大法院(最高裁)の徴用関連判決を問題にして輸出規制をしたことと関連しても、「本来、敵国に戦争物資は禁輸しても生活物資や産業物資は禁輸しない」として「悪い人たち」と話した」

日本は、輸出規制をしていない。正しい表現ではこうなる。「半導体主要3素材の輸出手続き規制の強化」である。それまでは、一括承認手続きで済ませたが、韓国から第三国へ輸出されている疑惑があるので、輸出手続きを改めて一件、一件厳しく行なうということだ。現に、輸入申請は全量認められ、韓国の半導体生産になんらの支障も起らなかったのである。

 

韓国政府は、半導体生産に問題が起らなかった現実を糊塗して、韓国企業が「内製化した」「他国から輸入した」などと虚偽の発言にすり替えている。こうした経緯から見て、日本を「悪い人」と呼べるはずがない。悪いのは嘘発言をしている韓国政府である。

 

韓国進歩派政権は、こうして「進歩」の看板に似つかわない言動をしている。その実態は、保守派以上の民族主義グループである。韓国では、保守派が革新的な存在といえる。

 


『東亞日報』(5月29日付)は、「『当選0回』李俊錫氏がカットオフで1位、新しい保守を望む声」と題する社説を掲載した。

 

(4)「野党「国民の力」の党代表選予備選挙(カットオフ)で、36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)前最高委員が1位で通過した。今回のカットオフは、一般国民2千人、党員2千人を対象に2社の機関が行った世論調査を1対1の割合で合算した結果だ。李氏が41%を記録し、2位の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)前議員は29%だった。院内経験のない1位と当選4回を経験した2位の差が10ポイントも広がった」

 

野党「国民の力」の党代表選予備選挙の世論調査では、36歳で議員経験のない李俊錫氏が41%になった。これは、現政権の無様な姿を見て、30代の青年に期待を懸けるという切羽詰まった雰囲気が現れている。

 


(5)「一般国民調査で、李氏(51%)は羅氏(26%)を2倍近く圧倒したが、党員調査では1、2位の順位が逆転した。その差は1ポイント程だった。少なくとも党員調査では重鎮が優勢だという一般的な予測が外れたのだ。この機に保守野党の体質も抜本的に変わらなければならないという党員の切迫した期待が、「李俊錫旋風」に投影されたとみられる」

 

党員調査では、30代青年がベテラン議員に1ポイントの差で逆転された。この僅差は、党内自体が危機感を強めている現れである。現状の民主党政権では、韓国の未来は真っ暗である。「反日」などと騒いでいる余裕はないはずである。

(6)「6月11日の全党大会の勝負は、「党員投票70%、国民世論調査30%」方式となる。予備選挙とは違って党員投票と国民世論調査が7対3の割合なので、結果を予断することはできない。党員の比重が大きいことから、過去のように派閥争いや中傷合戦などの旧態がよみがえらないか懸念される。国民は今回の全党大会が保守野党の刷新と変化を推し量る試金石と見ている。全党大会では泥沼の争いで汚れた過去の党内選挙の様相が再演されてはならない。「李俊錫旋風」が全党大会に投じた明白なメッセージだ」

 

最大野党「国民の力」の党代表選びは、単に党の問題に止まらない。韓国が、未来を左右する重大な局面にあることを認識しているのであろう。日本にとって、分からず屋の現与党よりも少しは話が通じるはずだ。

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