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中国は、これまでオーストラリアとニュージーランド(NZ)の間に溝をつくる戦略を駆使してきたが、どうやら不発に終わる気配だ。5月31日、豪・NZ首脳会談が開かれて、香港問題で強い憂慮の念を共有していると発表した。

 

中国は、豪・NZ離間の策略を次のように行なってきた。

 

4月5日、中国官営「Global Times(グローバルタイムズ)」は、「オーストラリアが米国の考えに従わせようとニュージーランドを圧迫している」というタイトルの寄稿文を掲載した。『中央日報』(4月7日付)が報じた。

 

この寄稿文で、中国聊城大学のYu Lei首席研究員は、「豪メディアが最近新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)発生源調査に懸念を表明する共同声明からニュージーランドが外れたことをめぐって批判を加えている」とし「これはニュージーランドの対中路線を批判する唯一の記事でもない」と書いた。あわせて「これはオーストラリアが自分たちを米国に続く南太平洋の覇権勢力と感じ、ニュージーランドも自分たちが進む方向に従うべきだと信じているということ」と強調した。



世界14カ国は3月30日、世界保健機関(WHO)の新型コロナ発生源調査の結果をめぐって懸念を声明した。NZが、ここに合流しなかったという理由で不当な圧力を受けているという趣旨であった。この声明には、米国の主導で結成された機密情報共有同盟体「ファイブ・アイズ」に属した米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド」のうちニュージーランドだけが合流しなかった。

以上のような事情から、NZが中国寄りに「鞍替え」したのでないかとみられていた。

 

『日本経済新聞 電子版』(6月1日付)は、「豪・NZ、対中強硬で足並み 首脳会談 香港問題『深い懸念』」と題する記事を掲載した。

 

オーストラリアのモリソン首相とニュージーランド(NZ)のアーダーン首相は5月31日、NZ南部クイーンズタウンで会談した。会談後の共同声明は香港や新疆ウイグル自治区の問題で「深い懸念」や「重大な懸念」を示した。対中国で強硬姿勢を取る豪州にNZが足並みをそろえた。

 

(1)「共同声明は、「香港の人々の権利や自由への制限が進んでいることや、2047年まで認められている香港の高度な自治の弱体化について深い懸念を表明する」とした。ウイグル族の人権の状況についても「重大な懸念」を示した。豪州とNZはいずれも米国と機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」に参加する。米国や豪州などほとんどの参加国が中国への強硬姿勢を深めるなか、NZの対中姿勢は融和的だと指摘されてきた。

 

NZは一時、中国寄りが明らかであった。中国から相当の圧力を受けていたことを覗わせている。中国が、TPP(環太平洋経済連携協定)に関心を持った際も、NZを窓口に利用するなど、目立った行為をしていた。

 

(2)「例えば、対中国を念頭にファイブ・アイズの機能強化を求める声があるが、NZのマフタ外相は4月、慎重な姿勢を示した。1月には改定した中国との自由貿易協定(FTA)に署名した。報道によるとNZのオコナー貿易・輸出振興相が豪州は「NZを見習って、中国に敬意を示すべきだ」と発言した。ウイグル族を巡っても、NZの少数政党が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定する決議を議会に提出しようとしたが、「深刻な人権侵害」と書き換えられた。地元メディアによると与党・労働党が「ジェノサイド」の文言を削除するよう求めた」

 

中国は、豪州に経済制裁を科しながらNZからは優先的に輸入するという、あからさまな差別政策を行なっていた。これを見れば誰でも、NZが中国によって「洗脳」されていると見るはずだ。中国のやり方は露骨で幼稚である。

 


(3)「会談後の記者会見で、「NZの中国に対する最近の姿勢が、豪州や欧米諸国の警戒を招いている」と問われ、アーダーン氏は「(人権や通商など)重要な問題に対して我々が強い姿勢を取っていないとの指摘には合意しかねる」「NZと豪州は通商や人権問題で完全に同じ立場を取っている」などと反論した。ファイブ・アイズについても「我々は献身的な参加国であり続ける」との姿勢を示した」

 

ファイブ・アイズに日本参加論が出ると、NZが「現在のメンバーを増やす必要はない。増やせばNZは脱退する」とまで発言した。これは、中国の入れ知恵によることは明らか。中国は、日本がファイブ・アイズに参加されると困るのだ。

 

(4)「モリソン氏も「我々の分断を試みる動きがあるかもしれないが、成功はしないだろう」と強調した。また「米中の戦略的競争は激化しているが、それは必ずしも衝突の可能性が高まることにはつながらない」と指摘、「我々が求めるのは各国が主権を保ち、(自由な)貿易が行えるような自由で開かれたインド太平洋だ」と述べた」

 

下線の部分は、明らかに中国を指している。中国が豪・NZの離間を策して暗躍しているのだ。

 


(5)「地域の安全保障に詳しいビクトリア大学のロバート・エイソン教授は、両首脳が各国の懸念を受けて「特に中国に関して、できる限りの結束を示そうとした」とみる。一方で「中国では、NZが豪州の(対中強硬的な)方向に動いたとの声が出るだろう」述べ、中国が反発する可能性もあると指摘した」

 

中国は、「孤軍奮闘」してあちこちで外交爆弾を仕掛けて歩いている。気の毒になるほどだ。中国が、反発してももはや影響力は薄れている。それだけ、中国包囲網が広がっているということである。