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中国は、周辺国を軍事的に威嚇しているので、これが新たな反応を生んでいる。日本と豪州の外務・防衛「2+2会合」では、海上自衛隊が豪艦艇を防護(護衛)することに決まった。中国は、日豪に同盟強化の動きを加速化させている。

 

『日本経済新聞 電子版』(6月10日付)は、「自衛隊の豪艦防護、日豪2プラス2で確認 米軍以外で初」と題する記事を掲載した。

 

日豪両政府は9日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)をオンラインで開いた。自衛隊が平時から防護できる他国軍艦の対象にオーストラリアを追加したと確認した。米軍以外に適用するのは初めて。両国の2プラス2は2018年10月以来、およそ2年半ぶり。日本側は茂木敏充外相と岸信夫防衛相が、オーストラリア側はペイン外相とダットン国防相が出席した。

 


(1)「自衛隊が他国軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」はこれまで米国だけが対象だった。豪州は2カ国目となる。共同文書に「自衛官による豪州国防軍の武器等の警護を実施する準備が整っている」と書き込んだ。共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と明記した9回目となる日豪2プラス2で台湾海峡に初めて言及した。中国による軍事的圧力への対抗策として盛り込んだ。

 

日豪「2+2会合」でも台湾問題に言及した。豪州は、中国の経済制裁を受けているので、中国脅威論が強い。

 

(2)「米国の同盟国である日豪の安全保障上の協力は、対中抑止の前線となる。東シナ海と南シナ海の状況には「深刻な懸念」を表明した。中国の海警局を「準軍事組織」と位置づけた海警法にも「懸念」を訴えた。自衛隊と豪軍が互いに共同訓練で入国するときの手続きを簡素にする「円滑化協定」に関しては署名に向けた調整を加速させると申し合わせた。中国外務省の汪文斌副報道局長は9日の記者会見で「日豪に中国への内政干渉を停止し地域の平和と安定を破壊しないよう促す」と反発した」

 

日豪軍が、互いに相手国へ入港できる手続きを急ぐという。いずれ日本でも豪国旗をつけた艦船の入港が見られるようになろう。こうなると、日韓関係が一段と疎遠化する。旭日旗を付けた艦船は入港するなという韓国との関係はさらに低下するに違いない。豪州こそ、旭日旗の「被害」を被った国である。その豪州が、過去を忘れて未来志向になっている。

 

(3)「菅義偉首相は20年11月、モリソン豪首相と会談した際に「防衛協力を新たな次元に引き上げる」と打ち出した。今回の2プラス2を早い段階で開くと決めた。背景には豪州が中国との対立を深めている状況がある。野党議員が、中国側から多額の資金援助を受けていたと発覚し、4年ほど前から国内の反中感情が高まった。当初、中国寄りとみられていたターンブル政権は17年から対中強硬姿勢に転じた。同年の豪州の外交白書は「中国が米国の地位に挑戦している」と記した。関係の深い太平洋の島嶼国に中国が経済支援で影響力を拡大していると警戒した」

 

豪州が、反中に転じたきっかけは中国のスパイ行為にあった。中国は、多額の政治資金を持込んで、中国へ有利な政策決定へ誘導しようとしていた。豪州が、日本の潜水艦技術導入を直前で中止した背景には、中国スパイの暗躍が取沙汰されている。豪州が、日本技術採用の潜水艦を建艦すれば、中国にとって脅威と見た結果である。

 


(4)「18年に就任したモリソン首相もこの路線を踏襲した。20年4月にはモリソン氏が新型コロナウイルスの発生源に関する調査を国際社会に呼びかけた。猛反発した中国は豪州産の食肉輸入を一時停止した。豪州は経済面で中国への依存が大きいものの、対中批判を続けた。国防相のダットン氏は4月、テレビ番組で台湾海峡有事への懸念が強まる状況に「軽視すべきではない」と指摘した。「台湾と中国の間には敵意がある」とも語った。豪州はその後、米軍が使う北部ダーウィンの拠点を増強する方針を発表した。中国は経済協力について議論する閣僚級の枠組み「中豪戦略経済対話」の活動を停止すると決定した」

 

豪州は、地方自治体が結んだ外国との協定を破棄させている。外国とは、中国を指している。ダーウィンの港を99年間、中国企業へ租借させる協定も破棄に向かって調整中である。ここには、米海軍の基地がある。中国へ情報が筒抜けになるのだ。

 


(5)「日本政府高官は、「現時点で中国と最も対立している国は豪州だ」と話す。中国にとって豪州は直接の国境線がない国で、日本やインドに比べれば軍事衝突が起きる可能性が低いため圧力をかけやすい。豪州は自国産商品の輸入制限など事実上の「制裁」と受け止められる措置を受けた。中国との経済的な結びつきが深い日本も同様の心配がある。沖縄県・尖閣諸島などでは中国の海洋進出による脅威を受ける。同盟国と一緒に中国を抑止する戦略を描くバイデン米政権にとって、日豪は中国と対峙する前線になる」

 

日豪の密接な関係構築は、大きな軍事的な力を発揮する。日韓関係が水と油の関係であり、日豪関係強化が、この穴を埋めるに違いない。

 

(6)「米国では次の駐豪大使にオバマ政権時に駐日大使を務めたキャロライン・ケネディ氏を指名する案が浮上する。日米豪の結びつきを強めるための人事とみられる」

 

次の駐豪大使に、駐日大使を務めたキャロライン・ケネディ氏を指名する案が浮上しているという。ケネディ氏は大の日本贔屓である。それだけに、駐豪大使に就任すれば日米豪が、日米韓に変わって重要な役割を果たすであろう。韓国の反日が、自らの地位低下を招いている。

 

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