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韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、米誌『タイムス』アジア版の表紙写真を飾った。なかなかの「好男子」に映っており、先ずは祝意を申し上げねばならない。文氏は、2017年5月にも同誌アジア版表紙に登場しているので2回目となる。売れっ子である。

 

今日、6月25日は朝鮮戦争が始まった日である。このタイミングで、文氏は金正恩氏を「非常に率直で国際感覚豊か」と褒めたのである。朝鮮戦争の傷跡を抱える人たちには、複雑な思いがよぎったであろう。

 

『東亞日報』(6月25日付)は、「文大統領、『金正恩氏は非常に率直、国際感覚ある』米誌タイムの会見で語る」と題する記事を掲載した。

 


(1)「文大統領は米タイム誌とのインタビューで、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記について、「非常に率直で意欲的であり、強い決断力を示した」と強調した。しかし同誌は、「正恩氏は叔母の夫と異母兄を冷酷に殺害し、2014年の国連人権調査委員会(COI)の歴史的な報告書によると、抹殺、拷問、強姦、飢謹長期化の惹起など『反倫理犯罪』を主導した人物」と相反する見解を示した」

 

文氏は、北朝鮮の金正恩氏を「非常に率直で意欲的であり、強い決断力を示した」と評価したが、タイム誌は、「抹殺、拷問、強姦、飢謹長期化の惹起など『反倫理犯罪』を主導した人物」であると真逆の評価を付け加えた。

 


文氏による金正恩評価について、韓国国内でも異論が出ている。

 

韓国野党の大統領候補、劉承ミン(ユ・スンミン)「国民の力」元議員が24日、フェイスブックで次のように語った。『中央日報』(6月25日付)が伝えた。

 

「北朝鮮は文大統領を『ゆでた牛の頭』『特等の馬鹿』『米国産オウム』と嘲弄したが、文大統領は金正恩を『非常に正直で、熱情的で、強い決断力を持った人』と称えた。また、『金正恩の正直、情熱、決断力はいったい誰のためのものなのか」とし『北の人民のためのものか、大韓民国の国民のためにしたことか、それとも北の核』サイルをいうのか』と皮肉った。また『正直という言葉の意味は何か』とし『文大統領は正直の意味をどう考えて金正恩が本当に正直だと話すのか』と問いただした」


大統領府は、同誌が使った表現「honest」を国内メディアが「正直」と翻訳して報道すると、24日に「インタビューで大統領は『正直』ではなく『率直』という表現を使った」と明らかにした。

 


「さらに、『6・25韓国戦争(朝鮮戦争)71周年を翌日に控えた今日、我々の大統領の金正恩賛歌に接し、殉国烈士の英霊に面目ない』とし『大韓民国の大統領として国と国民の自尊心を踏みにじらないことを願う』と強調した」

 

文氏がタイム表紙を飾ったタイミングは、朝鮮戦争開戦と重なり合うだけに絶悪というのが本当だろう。文氏は、朝鮮戦争について批判すべきであった。

 

(2)「23日(米現地時間)に公開された「文大統領が祖国を癒すための最後の試みに乗り出す」と題する記事で、文氏は正恩氏の性格を問われ、「国際的な感覚もある」と答えた。一方、同誌は、文氏の返答を紹介しつつ、「多くの北朝鮮消息筋は、正恩氏に対する文氏の変わりない擁護を錯覚と見ている」とし、韓国政府が北朝鮮人権運動を弱体化させているという指摘も紹介した」

 

文氏は、なぜこれほどまでに金正恩氏を持ち上げるのか。無論、引き続き南北会談を開いて、南北融和の実績を上げたいという政治家の願望もあろうが、客観的に見てその可能性はゼロである。北朝鮮が、文大統領を相手にしないという意向を繰り返し発表しているからだ。

 


結局、文氏が金正恩氏へ一方的な「親愛感」を示しているという認識しか残らない。ここで、文氏の「人を見る目」がどれだけ正しいかという「眼力」が問われるのだ。

 

『中央日報』(6月16日付)は、「これほど多くの天下り人事はなかった」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

 

(3)「文大統領は、世論と聴聞会を無視して任命した33人の閣僚級人事こそが天下りの典型だ。歴代のどの政権もこれほど多くの天下り人事はなかった。昨年10月の国民の力の資料によると、公共機関のトップ3人のうち1人が大統領選挙で一緒だった親文派だ。今でも350の公企業のあちこちに天下り人事が続いている。ある政治家は「任期が1年残った今が最後の機会」とし「いま任命されれば3年ほど任期が保証される」と話した。この機会をつかむために権力にコネを作ってロビー活動をし、大韓民国が病んでいる」

 

タイム誌表紙を飾った文在寅氏は好男子である。政治家というよりも大学教授の風貌を漂わせ、「私は善人です」と言いたげな表情である。だが、その裏では「思い込み人事」を行なっている。失業救済で「3年間の任期保障」でポストを与えている。猟官運動もあるだろうが、その見分けもつかない文氏は、退任後に厳しい非難の嵐に遭遇するであろう。結論は、文在寅の眼力は曇っているのだ。