a0960_008405_m
   

韓国は、半導体で世界有数の地位を占めているが、産業構造はいたって後進国型である。自営業者比率が世界8位と断然高いことに現れている。就業者全体に占める自営業者の比率が高いのだ。これは、雇用構造が近代化されていない証拠である。まだまだ、韓国が自称「G8」国と威張るには早すぎるようである。

 

OECD調査による自営業者比率(2019年)は、次のような状況である。

 

1)コロンビア  50.13%

2)ブラジル   32.49%

3)メキシコ   31.95%

4)ギリシャ   31.90%

5)トルコ    31.54%

6)チリ     27.21%

7)コスタリカ  26.64%

8)韓国     24.64%

9)イタリア   22.74%

10)ポーランド 20.01%

 


韓国は、手工業で特色を持つイタリアより、1.9ポイント高い比率である。韓国には、イタリアのような特色はなく、漫然と自営業者が割拠している状況である。この状況で、最低賃金が生産性を大幅に上回って設定されたので、雇用を破壊する結果になった。

 

『中央日報』(6月25日付)は、「猛スピードで進んだ最低賃金に倒れた『社長の国』」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチュ・ジョンワン経済エディターである。

 

大韓民国は「社長」の国だ。良く言えば社長だが、悪く言えばその日その日の暮らしも大変な零細自営業者が大部分である。経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の自営業者の比率は24.6%(2019年基準)に達する。就業者4人に1人が自営業者ということだ。米国(6.1%)や日本(10%)はもちろん、OECDの平均(16.8%)をはるかに上回る。



(1)「商売が順調な人もいなくはないが、廃業寸前の崖っ縁に立たされた人々も多い。最近ではソウル明洞(ミョンドン)・東大門(トンデムン)・梨泰院(イテウォン)などの中心商圏にも空き店舗が続出するほど深刻な状況だ。毎年80万人以上の個人事業者が国税庁に廃業届を出す。廃業までしなくても、毎日ため息だけ吐きながらなんとか持ちこたえているという人も少なくないだろう。韓国銀行は最近の報告書で「雇用員のいる自営業者に集中した雇用衝撃は通貨危機当時とほぼ同じ様子」と指摘した。スタッフを雇って商売をしている自営業者の困難が1990年代後半の国際通貨基金(IMF)の救済金融を受けた時期とほぼ同じ水準ということだ

 

日本でも戦後に、街の八百屋や魚屋が一斉に「社長」と呼ばれるようになった。個人企業から法人化すれば、税金が軽くなるというメリットを狙ったものだ。韓国でもにわか「社長」が増えたのである。その社長に逆風が吹いている。最低賃金の大幅引上げで、従業員を雇用できず、解雇しているからだ。毎年80万人以上の個人事業者が、国税庁へ廃業届を出す時代になっている。

 

現在の苦境は、韓国が通貨危機を起した1997年当時に匹敵しているという。ただ事ではない。

 


(2)「文在寅(ムン・ジェイン)政府の所得主導成長は自営業者には恐ろしい悪夢だった。週52時間勤務制は夕方の商売が中心だった一部業種に「夕方に客のない生活」をもたらした。最低賃金の急激な引き上げは自営業者だけでなくアルバイトスタッフにも衝撃だった。相当数の自営業者は人件費の負担によってスタッフを解雇したり、週休手当てのない週15時間未満のアルバイトに切り替えた。フランチャイズ加盟店の中には人を使う代わりに自動化機器を導入したところも多かった。1980年代に学生運動の先頭に立った刺身料理店の主人ハム・ウンギョン氏は「所得主導成長を語った人々は全員詐欺師」と話したことは自営業者の大多数の気持ちを代弁した、胸のすくような発言だった」

 

下線のように、最低賃金の大幅引上げが、韓国の雇用を破壊した。問題は、文政権にそのような意識がないことだ。生産性向上と見合った最賃引き上がルールであるが、それを完全に無視して、大手企業の労組要求に盲従したのである。

 


(3)「現政権が発足した2017年、1時間あたり6470ウォン(約635円)だった最低賃金は今年8720ウォンに跳ね上がった。過去4年間の最低賃金引上率は35%だ。それでも昨年(2.9%)と今年(1.5%)は最低賃金引上率が少し緩やかになり、自営業者がようやく少し息をつくことができた。もっと大きな問題は来年の最低賃金だ。24日に公開された労働界と経営界の最低賃金要求案は天地の差ほど大きいように思われる」

 

2017年、1時間あたり6470ウォン(約635円)だった最低賃金は今年8720ウォン(約856円)に跳ね上がった。この間に34.8%の増加である。どんなに頑張る自営業でも4年間に3割強もの生産性向上を実現するのは不可能であろう。文政権は、こういう現実を見ようとしなかった。


(4)「労働界は、現政権任期最後の年である今回こそ1時間あたり1万ウォンを超えるようにしようという意気込みだ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気も普通ではない。文大統領は最近、国際労働機関(ILO)総会で「韓国政府は長時間労働時間を改善し、最低賃金を果敢に引き上げ、所得主導成長を含む包容的成長を追求した」と自慢した。しばらく水面下で静かだった所得主導成長というみじめな失敗作が蘇ってくるのではないか心配だ」

 

大手企業労組は、来年の最賃を文政権公約の「1時間1万ウォン」に近づけるべく、あの手この手の闘争を試みるであろう。最賃は、韓国経済を破綻に追込む時限爆弾である。文政権は、どうしようもない「経済音痴」である。