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合理的思考が苦手の中国

弱い経済基盤に起ること

解決法は賃下げしかない

儚く消える「中華の夢」

 

今日7月1日は、中国共産党(中共)創立100周年である。中国では、習近平国家主席の威光を一段と高めるべく、数多くのイベントが行なわれる。誠におめでたい日だ。日本からは、小沢一郎議員が祝電を送ったという。民主党政権時代、中国と親密な関係を築いていたから当然であろう。

 

冒頭から恐縮なのだが、中国はこれからも順調に発展し続けられるだろうか。一人当たり名目GDPは、1万0484ドル(2020年)になった。計画では、2035年にこれを倍の約2万ドルに押し上げるとしている。常識的に言えば、15年も時間を掛ければ倍になるだろうと思いがちである。実は、ここに大きな落し穴がある。

 


世界経済の発展史を見ると、多くの国がここまで発展して来た後、挫折しているのである。詳細は後半で取り上げる。挫折している共通の理由は、安い人件費で雇える労働力が枯渇すると、どこの国でもそこで経済成長が頓挫していることである。アジアで、この限界を超えて発展した国は、日本・韓国・台湾・香港・シンガポールだけである。他は、労働力の枯渇が経済を停滞局面へ追い込んでいる。

 

韓国と台湾は、日本の植民地であった。香港とシンガポールは、英国の植民地だ。先進国による植民地統治が、前記4ヶ国に工業近代化への助走を付けさせたと言えよう。中国の場合、もともと専制主義国家であり、それが共産主義国家へ二段階の飛躍(封建主義と資本主義を経験していない)をした。それだけに、工業近代化への技術的・制度的な経験ゼロという決定的なマイナス要因を抱えている。中国経済の発展において、大きなブレーキになろう。

 


合理的思考が苦手の中国

経済発展には、合理的な経済計算という素養が不可欠である。ドイツ人社会科学者マックス・ヴェーバーが、20世紀初頭に指摘した事柄である。具体的には、著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』において展開したように、プロテスタンティズムの倫理を理解する国が、高度の経済発展を遂げると主張した。

 

事実、G7でプロテスタント国でないのは、フランスと日本のみだ。フランスは、カソリック国である。日本は、武士道精神がバックボーンにある。かつて、国際連盟事務次長を務めた新渡戸稲造は、海外で欧州の騎士道と武士道に相似性があると説明して理解を得たという。

 

中国には、そういう合理的な経済計算が成立する基盤がない。儒教倫理と非市場主義である結果だ。第一に、合理的な経済計算の精神が成立する国家であれば現状で、世界覇権に挑戦するなどと無益なことを言い出すはずがない。

 

かつて、中国共産党中央党校で教授を務めていた蔡霞氏は、共産党の創建100周年に当たる71日に発表予定の論文で、次のように指摘しているという。「米国が、40年にわたり取り組んできた中国との関係構築は、もはや無益なものになっている。習近平国家主席の下で、本質的に米国と敵対的な関係なっている」というのだ。

 


蔡氏は、うわべは強大に見える中国が、矛盾と自己不信で分裂しており、習政権でそれがより顕著になったと主張している。「中国共産党は飢えた竜のような野心を持っているが、中身は虎の張りぼてだ」。また、米国は共産党が「突如、崩壊する可能性に備えるべき」だとも指摘する。党員9200万人の間には深い溝があるという。多くの党員や社会の上流階層が、「米国の民主主義制度や自由を普遍的価値として受け入れ、支持している」と記している。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月30日付)が報じた。

 

習近平氏は、こうした内部矛楯と分裂を意識しているのだろうか、頻りと愛国心強化を訴えている。愛国心ですべてを包み込んでしまおうという戦術である。だが、価値観の多様化する中で、政治の一元化で乗り切ることは至難の業であろう。毛沢東が指導していた頃の中国は、食うや食わずの極貧状態にあった。だから、「団結と統一」が唯一の中共における結節点になったであろう。現状は、生活水準の向上に伴い価値観が多様化しており、当時と状況は全く異なるのだ。

 

中国共産党の党員9191万人(2019年末時点)のうち、民間企業や国有企業などに勤める事務職や研究職が3219万人と、工場労働者や農民らの3201万人を上回った。1921年の結党以来、オフィスで働く「ホワイトカラー」が、現場の労働者や農民の数を超えたとみられる。これは、中共の性格変化を鮮明にさせているはずだ。「団結と統一」の合い言葉で束ねられる限界を超えている。

 

前記の蔡霞氏は、米国に対して中共が「突如、崩壊する可能性に備えるべき」だと指摘している。その理由を明らかにしていないが、私はその原因を経済要因に求めたい。共産党張りに言えば、お馴染みの「上部構造と下部構造」である。上部構造は、政治・法制・イデオロギーである。下部構造は、それらの土台をなす社会の経済構造である。この下部構造の経済構造に「異変」が起れば、中共は政治・法制・イデオロギーの上部構造がぐらつくという論理構成になっている。

 

中共の命運は、中国経済の推移いかんに依存するという意味で今後、瀬戸際に立たされるだろう。中共が、「突如、崩壊する可能性に備えるべき」と警告するのは経済が理由だ。