テイカカズラ
   

韓国経済が暗転している。文大統領は一月前、今年のGDP成長率は4%超えもと強気姿勢を見せていた。その後、コロナの感染拡大で個人消費マインドが急激に落込んでいる。異常気象に伴う世界的な農産物高騰もあり、インフレ警戒が高まってきた。

 

こうして、今年の4%成長論に陰りが広がっている。悪いことに、来年の最低賃金引き上げ幅は5%に決まった。こういう悪条件が重なってくると、スタグフレーション(物価上昇下の景気停滞)という最悪事態になろう。来年3月の大統領選を控えて、文大統領にはまた一つ頭痛の種が加わった。

 

『東亞日報』(7月30日付)は、「コロナ・物価・金利の3重苦、スタグフレーションに備えるべき時だ」と題する社説を掲載した。

 

(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨日、大統領府で「民生経済閣僚会議」を主宰した。大統領が6月末、下半期の経済政策方向を定めながら予測したものとは異なる方向へと展開される経済状況に対応するためと見られる。1カ月前、大統領は「経済回復のテンポが予想より一段と速い。今年の成長率が当初目標の3.2%をはるかに超え、4%超過が期待できるようになった」とし、景気回復に自信を示した」

 

韓国では不思議なことに、文大統領が楽観論を喋ると直後に、事態が暗転するケースが多いい。これは、株を高値で買い、その後に値下がりすると同様に、「先が読めない」典型例である。文氏が、煽動型の政治家であることを証明してもいる。

 

(2)「その後、第4次大流行が本格化し、経済は再び不確実性の中に落ちている。何よりも消費の落ち込みが深刻だ。6カ月連続上昇していた消費者心理指数は、7月に急激に落ち込んだ。午後6時以降、3人以上の会合が禁止され、夜の商売ができなくなった自営業者らは、次々と廃業に追い込まれている。半導体の不足で、第2四半期の輸出の伸び率も1年ぶりにマイナスに落ち込んだ」

 

韓国の消費者心理指数は、急激に変化することで有名である。特に、政治的な動向に敏感である。それだけ過去に、苦しい経験をしてきたことが反映しているのであろう。消費の環境が悪化していることは、今後の韓国経済に影響を与えることは確実だ。個人消費の対GDP比は48.55%(2019年)と約半分を占める。

 

この状態で、来年の最低賃金の引き上げ幅は5%に決まった。過去最低だった前年(1.5%)から見れば、大幅な引き上げになる。自営業者や零細企業の支払い能力を直撃するので、解雇の増加は不可避となろう。これが一層、末端景気を冷やすであろう。

 


(3)「さらに、景気回復に弾みがついた米国の連邦準備制度(FRB)が、緊縮時期を繰り上げるだろうという展望が強まり、国内銀行の6月の住宅ローンの金利が2.74%で、1カ月で0.05%上昇した。韓国銀行が予告した通り、年内に基準金利を引き上げ始めれば、「無理して」「借金」で住宅を購入し、株式に投資した家計、特に20代や30代は急激な利息負担の増加で「負債爆弾」を抱えることになる。弱り目に祟り目で、新型コロナ、異常気象で各国の農業生産に影響が出たことから始まった「アグフレーション」(農業:agriculture+インフレーション)のため、野菜、肉類、ラーメンなどの消費者物価が高騰し、政府の政策失敗による住宅価格や伝貰価格の上昇も止まる気配がない」

 

米国では、4~6月期のGDPがコロナ前を回復したことから金融政策が引締め基調へ転じる見込みが強くなっている。従来は、22年まで金融緩和を続けるとしてきたが、是正方向だ。こうなると、韓国の金融引き締めがより強まる方向である。韓国銀行は、来年3月までに2度の引締めを「予告」しているが、この確率が一段と高まる。

 

韓国では、野菜、肉類、ラーメンなどの消費者物価が高騰している。即席メンが、韓国の食卓では大きな比重を占めるのは、生活水準が発展途上国型であることを示している。

 

(4)「経済専門家の間では、現在のような状況が長引けば、韓国経済は「スタグフレーション」に陥るだろうという懸念が高まっている。同日、大統領も国際通貨基金(IMF)が韓国の今年の成長率予測値を4.3%に引き上げたことを紹介しながらも、「防疫に成功できなければ保障できない」と述べた。現在の状況が期待通り「短くて太く」終わらない可能性もあるという意味だ」

 

韓国の経済専門家は、スタグフレーションへの警戒を強めている。韓国の家計債務は対GDP比で100%を上回っている。金利の引き上げと所得停滞の両面で、消費は一段と冷え込もう。

 


(5)「状況がこのようなだけに、政府は長期戦を準備しなければならない。自営業者の営業制限が終わらない時に備えて、財政余力を残しておかなければならない。今のように補正予算を繰り返し、国民に災害支援金をばら撒いても、消費は蘇らず、国の借金のみ膨らみかねないからだ。中小企業・小商工人向け融資の元利金返済猶予期間が終わる9月には、限界企業の構造調整も推進しなければならない。何よりも最後の砦である国の財政が政界の影響に振り回され、不良化しないよう財政準則の導入を急がなければならない」

 

韓国の財政は、文政権の人気取り政策でバラマキを強めており、財政支出の余力がなくなっている。ここで、さらなる財政出動を迫られれば今後、起るかも知れない三度目の「通貨危機」への対応力がぐっと落ちるはずだ。時限爆弾を抱える経済である。