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1980年代の日本は、世界の半導体を支配したが、米国の巧妙な日米半導体戦争で輸出割り当て制を呑まされた。バブル経済崩壊という状況に加えて、米国から急激な円高を仕掛けられ「日の丸半導体」は、大きく後退した。この間隙を縫って登場したのが、韓国半導体である。日本の技術が窃取されたのである。

 

因果応報と言うべきか、「コリア半導体」が米国の巻き返しで、「第二の日本」という苦しい立場に落込もうとしている。今度は、輸出割り当て制のごとき「くつわ」はないが、米インテルが大掛かりな企業買収戦術を始めているのだ。

 

インテルは、半導体受託製造大手グローバルファウンドリーズの買収に向けた予備協議を始めた。これがまとまれば、自社製造と受託製造に取り組むという方針で、500億ドル(約5兆5000億円)を超える巨額資金が投入される。インテルは、これによって半導体製造機械から半導体製品までを握る「巨人」に生まれ変わる。この裏には米国バイデン政権の有形無形の支援がありそうだ。米国は、これまで禁句であった「産業政策」に大々的に乗出し、打倒中国を打ち出している。

 


『中央日報』(7月30日付)は、「半導体の第3次大転換時代に備えてほしい」と題する社説を掲載した。

 

永遠だと思っていた大韓民国の「半導体神話」が、転換点を迎えている。米中の技術覇権競争に触発された第3次半導体の覇権転換の時代に直面しながらだ。その流れを振り返ると、第1次半導体覇権転換は米国から日本に主導権が移る時だった。日本は1970~80年代、世界トップレベルの素材・部品・装備産業の後押しに力づけられ、米国から半導体産業の主導権を奪ってきた。しかし、この覇権は米国が日本の半導体企業の輸出クォーターを規制して力を失い始めた。

(1)「その反射利益は、韓国に戻った。日本が米国の規制で力を失い始めたころ、ちょうどサムスン電子は試行錯誤を繰り返した末に世界で初めて64メガDRAMを開発した。この便りが伝えられた1992年9月25日から半導体覇権は韓国に移ってきた。日本企業が追い上げたが、チキンゲームを辞さないサムスン電子のスピード経営にひざまずいた。それから韓国は30年間、半導体宗主国の地位を享受した。第2次大転換で韓国は技術力と市場シェアを掌握した」

 

日本の半導体企業の技術者は、毎週金曜日の最終便でソウルへ飛び、日曜日の最終便で東京へ帰るという「アルバイト稼業」をしていた。虎の子の技術をサムスンへ指導していたのだ。一回の「出張」で一ヶ月分の手当を得ていた。こういう違法行為が、日本の半導体産業を潰すことになった。このアルバイトに手を染めたのは特定企業でなかった。ほぼ、主要企業の技術者が「甘い汁」を吸ったのだ。この話はウソでない。私が東洋経済編集長時代、サムスン創業者の李秉喆から直接聞いたものだ。彼は、なんら悪びれず淡々と語った。



(2)「米国と台湾が始動をかけた第3次大転換が本格化すれば、サムスン電子が過去最大の売り上げを達成したというニュースが続くという保障がない。何より台湾TSMCの疾走が脅威だ。第4次産業革命がカスタマイズ型非メモリー(システム)半導体の生産需要を触発し、当初のファウンドリー(半導体委託生産)に注力してきたTSMCは翼をつけることになった。米国に工場6カ所の建設に乗出す。さらに、脅威となるのはその間、日本・韓国企業に順に明け渡した失地回復に出るというインテルの半導体生産の本格化だ」

 

インテルは、世界最初の半導体を世に送ったメンツにかけて、主導権の奪回へ動き出す。米国バイデン政権の後ろ盾を得ている。日本もTSMCと組む方針をとっている。



(3)「インテルは半導体の宗家だった。中央処理装置(CPU)などコンピュータの核心装置生産に注力し、メモリー半導体の生産に消極的だった。だが、米中覇権戦争と第4次産業革命で高性能メモリーの需要が増え、再び直接生産に出ると宣言した。米政府が半導体インフラに500億ドルを投資して支援する。技術力がカギだが、米国の力を総動員してサムスン電子の先端技術を跳び越える超格差戦略を駆使することにした。米国が本格的に出れば、1990年代日本のように韓国も半導体の覇権を守ることが難しくなる。日本の二の舞を踏むのに5年もかからないかもしれない。政府と企業はもちろん、国民も悲壮な覚悟で半導体大転換の時代に備えてほしい」

 

下線部は、注釈が必要である。日本は、現在でも半導体製造設備や半導体素材で世界一流の位置にあるが、半導体製品で遅れをとった。韓国は、半導体製品にしか競争力がなく、ここで後退すれば、後がないというマジノ線である。韓国が、危機感を滲ませる理由である。この半導体で競争力を失えば、韓国経済そのものが「終わり」になる。韓国の浮沈がかかった「世紀の一戦」だ。改めて、韓国経済の底の浅さを認識させる。