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インドの対中防衛戦略は、クアッド(日米豪印)からNATO(北大西洋条約機構)まで幅広く網を張っていることが分かった。インドは、ここまで重層的な防衛戦略を組立てており、中国を慎重に対応させる狙いであろう。

 

インドは独立後、非同盟主義を貫いてきた。だが、中国の向う見ずな軍事的な動きを見ると、理想論ばかりに頼ることもできない現実に直面している。昨年6月、ヒマラヤ山中で中国軍の急襲に遭い、20名の兵士が犠牲になった。以後、中国への警戒心が一段と高まっている。

 

『大紀元』(8月12日付)は、「NATOと関係強化に取り組むインドと題する記事を掲載した。

 

インド海軍は、北大西洋条約機構(NATO)同盟国4ヵ国と合同軍事演習を実施することで、相互運用性の向上および海洋脅威に対抗する複合作戦の強化に取り組んでいる。これは、「共通の価値観」が脅かされているとして、インドと北大西洋条約機構の間の協力体制強化を呼びかけた北大西洋条約機構のイェンス・ストルテンベルグ事務総長により推進された動きである。

 


(1)「協力強化を目的とした今回の取り組みは、アラビア海で2021年4月25日から27日にかけて実施された仏印合同演習「ヴァルナ21」を皮切りに、7月21日から23日にかけてインド北東部のベンガル湾で実施されたインド海軍と英国海軍による「コンカン」演習で一応の完了を迎えた。インド海軍が発表したところでは、ヴァルナ演習ではインド海軍が駆逐艦1隻、フリゲート2隻、補給艦1隻、潜水艦1隻を派遣し、フランス海軍の空母、駆逐艦、フリゲート各1隻と共に訓練に臨んでいる。また、両軍隊のヘリコプターと哨戒機がフランスのジェット戦闘機に加わり、高度な防空訓練と対潜戦訓練に焦点を当てた演習も実施された」

 

インド海軍は、フランス海軍と合同演習を行っている。

 

(2)「ヴァルナ演習実施前の2021年4月中旬に仮想形式で実施されたインド政府主催の国際会議「第6回ライシナ対話」で、ストルテンベルグ事務総長は北大西洋条約機構とインドの協力関係を再確認している。同事務総長は中国に言及しながら、北大西洋条約機構とインドが共有する自由、民主主義、法の支配といった価値観が「権威主義の台頭および同盟・提携諸国とは価値観を異にする諸国」により脅かされていると発言した。同事務総長はまた、「同じ価値観と志を持って法の支配に基づく秩序を支持する民主主義のインドのような諸国とより緊密に協力することができる」とし、「インドは同地域だけでなく国際社会においてもまさに重鎮である」と述べている」

 

NATOは、インドとの協力関係を再確認している。下線部は、日本や豪州との緊密な関係をも想定していることを覗わせている。将来は、クアッドとNATOが連携する事態も予想されている。NATOが積極的になっているのだ。

 

(3)「インド国防省の発表によると、2021年6月13日に地中海に向けて出航したインド海軍のフリゲート「タバール」は、74日から5日にかけてイタリアと、7月15日から16日にかけてフランスと演習を実施している。演習には防空作戦、海上補給、通信訓練、ヘリコプターを用いた飛行甲板間移動が含まれていた。 インドのPTI(Press Trust of India)通信が報じたところでは、今回の取り組みの一環として、ジブラルタル海峡西端に位置するスペインのトラファルガー岬付近まで航行したフリゲート「タバール」は、78日にスペイン海軍とも演習を実施している。スペイン海軍は同演習で「セスナ(Cessna)」海上哨戒機と「シーキング(Sea King)」哨戒ヘリコプターを展開した」

 

インド海軍は、イタリア海軍やスペイン海軍とも合同演習している。

 

(4)「2021年7月21日、ベンガル湾で毎年実施されるコンカン演習で、インド海軍が英国の空母「クイーン・エリザベス」を中核として構成された「英国空母打撃群21(CSG21)」と共に訓練を実施した。英国のアレックス・エリス在インド高等弁務官によると、今回の英国空母打撃群を率いる展開が本格的な初航海となった満載排水量6万5000トンのクイーン・エリザベス空母が同演習に参加したことで、これは「インドとインド太平洋の安保に対する取り組みを強力に実証する事例となった」

 

英国空母「クイーン・エリザベス」が打撃群21を伴い、初の海外演習の航行を続けており、9月に日本へ寄港する。英国は今年の年末に向けて、哨戒艦2隻をインド太平洋地域に恒久的に展開する方針であることを発表した。英国は、海軍艦船の事実上の母港となる港湾について、現在のところ言及を避けている。港湾施設から見て、日本が有力視されている。