中国の自惚れが招いた結果である。GDP2位を誇示して、世界を席巻するがごとき「戦狼外交」を行い、新疆ウイグル族への人権弾圧によって墓穴を掘ることになった。
中国には古来、人権意識など存在しない社会である。「私」という概念は唾棄され、「我々」という意識しか許されない。悪事を働いても「単独」は不可。「共犯」であれば大目に見られるという、西側諸国ではあり得ない通念が成立している異次元社会である。
こういう価値観の相違が対立点になって、来年の北京冬季五輪で「火花」を散らすことになりそうだ。欧米諸国は、議会を中心にして外交的サボタージュを呼びかけている。選手は参加しても政府代表団はボイコットするというもの。中国政府にとって、頭痛の種が増えている。
『中央日報』(8月17日付)は、「北京五輪、経済大国越えて中国体制の優秀性を伝える宣伝の場になるだろう」と題するコラムを掲載した。筆者は、チェ・ビョンイル韓国高等教育財団事務総長である。
来年2月4日、北京冬季五輪の開幕日だ。2008年8月北京夏季五輪に続く中国の2回目の五輪だ。1回目の北京五輪が中国の経済大国浮上を世界にアピールする展示場だとしたら、近づく2回目の北京五輪は共産党が指導する中国体制の優秀性を誇示する宣伝の場として計画されている。北京冬季五輪は来年秋に予定された習近平主席の任期3期目を控えて開かれる最大のスポーツイベントだ。
(1)「中国は今、変異株を繰り返して落ち着かないパンデミックではなく、違うことに心配しなければならない状況だ。欧州連合(EU)・英国・米国の政界は北京五輪に政府代表団を派遣するのをやめよう(外交的ボイコット)と言って圧迫している。ナンシー・ペロシ米国下院議長がこれを提唱し始めた。欧州連合議会や英国議会がこれに遅れまいと同調している」
中国は権威政治体制が、民主主義政治体制よりも優れていると信じ込んでいる。この一事で、価値観が西側諸国と根本的に異なることを示している。中国は、その「間違ったルール」を世界へ自慢するというのだから、誰でも「外交的ボイコット」をしたくなるのは当然であろう。無理矢理「邪教」を押し付けられるような苦痛を迫られるのだ。
(2)「(西側諸国からは)中国政府が香港・チベット・新疆ウイグルの人権状況を改善しないなら、政府代表団を北京五輪に派遣するべきではないという決議案が次々と議決されている。新疆ウイグルと香港の人権問題を巡り、2019年から対立している西側世界と中国の葛藤は未来進行形だ。選手団の不参加ではない国家元首、高位官僚など政府代表団の不参加で終わるなら、五輪開催自体が脅威を受けるわけではない。だが、習近平が率いる中国体制に対する西側世界の外交的圧迫が中国の五輪祭典で公開的に浮上する点は中国にとっては悩みの種だ」
中国習近平氏が、自国体制を自慢して見せつけたい相手は五輪参加選手でない。各国の外交団である。その外交団がソッポを向いて不参加となれば、五輪開催の意義は半減しかねない。中国も慌てざるを得ない局面である。これが現実となれば、中国は西側諸国と修復困難な現実を自国民に見せつけることになり、習氏の威厳はガタ落ちとなろう。
(3)「2008年と2021年の状況ははっきりと異なる。2008年の西欧は、中国に対する余裕であふれていた。「世界平和を念願すると言いながら、自分と違った考えを持っていると言って暴力を行使した中国人が五輪を開催する資格があるのか」「世の中のどの民族が、よその国に行ってその国の人々と警察を暴行することができるのか」という非難が次々と出てきたが、五輪ボイコットにつながることはなかった」
2008年当時、西欧は中国に対して宥和的な視線を投げかけていた。経済が発展すれば、いずれ民主化されると期待していた。2021年の状況はがらりと変わって、西欧へ敵対する国家へと変貌してきた。僅か13年の間にこれだけの急変である。
(4)「2021年の西欧は、これ以上そのような余裕を持てなくなった。ペースは遅いが、中国が結局は西欧が考えた方向に改革されて開放されるという信頼は西欧が自らかけた呪術だったことを悟った。かえって2020年コロナパンデミックの渦巻を体験し、中国との経済の輪のせいで西欧の体制安全が脅威を受ける逆説的な状況にまで追い込まれた。コロナパンデミックによってその姿が現れた西欧民主主義の深刻で混乱した有様は、相対的に中国のデジタル権威主義体制の安定性を浮き彫りにした。西欧は冷たい水を浴びせられたかのように、中国の魔法から覚めた」
2020年のコロナパンデミックは、西欧に中国との関わりが、不利益をもたらすという意識へ変えた。これは、中国にとって取り返しのつかない大失態である。しかも、コロナ発生源であることを頑なに拒否して責任転嫁を計っている。こういう現実を見て、西欧社会は、「脱中国」を決断したのである。
(5)「この夏、中国共産党100周年を迎えて、党は中国経済の前面に登場した。デジタル革命の旗手に浮上した中国ビッグデータ企業は、彼らの生殺与奪権を握った党の威勢の前に焦りを隠せないでいる。中国市場での成否は競争力よりも党の慈悲が決めるところに変貌している。外国企業も例外であるはずがない。チャイナリスクは変数ではなく定数になった。西欧はこれ以上余裕を持てなくなった」
下線のように、チャイナリスクが変数でなく定数になったことは、中国の世界における評価を大きく引き下げる事態を招いている。中国が、世界の「災難の源泉」という認識に変わったのだ。利益を生む源泉から、厄介なお荷物に成り下がった。
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