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中国は、アフガンに対して経済的に言えば、地下資源へ大きな魅力を感じている。だが、政治的な影響が新疆ウイグル自治区に及ぶことを極度に警戒するという複雑な関係にある。新疆ウイグル自治区では、100万人もの人々を強制収容所に入れて、「思想改造中」とされている。タリバンが、中国によるウイグル族から信仰を奪う大胆な振る舞いを、最終的に認めることはないだろうとも予想される。

 

こうしたアフガンには、インドやパキスタンも大きな利害関係を持っている。インドは、パキスタンや中国と対立しているだけに、アフガンをめぐる関係国の構図は複雑である。中国の勝手に描く「アフガン未来図」では、事態が進まないだろうと見られるのだ。

 


『ロイター』(8月25日付)は、「アフガン巡る三つ巴戦略ゲーム、中国とパキスタンとインド」と題する記事を掲載した。事態は複雑であるので、コメントはつけない。

 

アフガニスタンはアジア内陸部に位置する地政学上の要衝で、19世紀には英国とロシアが勢力争いを繰り広げ、20世紀は米ソ角逐の舞台になった。そしてイスラム主義組織タリバンが政権を掌握した今、新たな大国際戦略ゲームの主導権を握ったのはパキスタンだ。そのパキスタンと友好関係にある中国も、この地域で足場を固める機会を虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 

アフガニスタンはアジア内陸部に位置する地政学上の要衝で、19世紀には英国とロシアが勢力争いを繰り広げ、20世紀は米ソ角逐の舞台になった。そしてイスラム主義組織タリバンが政権を掌握した今、新たな大国際戦略ゲームの主導権を握ったのはパキスタンだ。そのパキスタンと友好関係にある中国も、この地域で足場を固める機会を虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 

パキスタンとタリバンの結びつきは深い。パキスタン政府は、米国が支援するアフガニスタンの民主政権に抵抗するタリバンを支援している、と批判を浴び続けたが、これを表向き否定してきた。しかし先週、タリバンが首都カブールを制圧するとパキスタンのイムラン・カーン首相は、アフガンの人々が「奴隷の鎖」を断ち切ったと称賛。タリバンが政体を決めるための協議を続ける中で、複数のメディアがこの話し合いに何人かのパキスタン当局者が関与していると報じた。

 

このゲームにはもう1つ、インドというプレーヤーが存在する。パキスタンと歴史的な敵対関係があり、中国とも1年余りにわたる国境紛争を抱えるインドは、崩壊したアフガンの民主政権の重要な支え手だっただけに、タリバンが支配するアフガンでパキスタンと中国が影響力を強める事態に不安を高めつつある。

 

もっとも中国側の言い分では、タリバンに近づく主な狙いは、反中国を掲げてアフガン内に避難場所を求める恐れがある東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)から、新疆ウイグル自治区を守ることだ。四川大学で南アジア問題を研究するチャン・リ教授は「パキスタンはインドに対抗する手段としてアフガンの利用を考えているかもしれない。だが中国にとってそれは必ずしも当てはまらない。中国の主要な関心は、タリバンが包括的で穏健な政治体制を構築してテロが新疆と地域全体に広がらないことだ」と述べた。

 


インドのセンター・フォー・ポリシー・リサーチのブラフマ・チェラニー教授(戦略論)は、中国はタリバンがアフガンを統治する上で必要とする2つの要素、つまり外交的な承認と、のどから手が出るほどほしいインフラ整備・経済支援を「えさ」としてぶら下げていると指摘。「機を見るに敏な中国がこの新たな突破口を手掛かりに、豊富な鉱物資源を有するアフガンに戦略的な浸透を図り、パキスタン、イラン、中央アジア諸国にも深く食い込もうとするのは間違いない」と話した。

 

ニューヨークのイサカカレッジで教鞭を執る政治評論家のラザ・アフマド・ルミ氏は、アフガンの政変に失望するインドの姿に、パキスタン国内では快哉の声が満ちあふれていると話す。インドとパキスタンは1947年の分離独立以来、3回の戦争を経験。「ソーシャルメディアやテレビ画面で大喜びするパキスタン人の様子が伝えられているのは、(アフガンに対する)インドの影響力喪失とつながっている面が大きい。なぜなら従来の政治サークルは(アフガン元大統領の)ガニ氏とインドの緊密な関係を脅威とみなしていたからだ」とルミ氏は説明する。

 


インドの元アフガン駐在大使ジャヤント・プラサド氏は「わが国の現在の立場は、現実に適応するというものだ。われわれはアフガンで長期間のゲームに参加しなければならない。(アフガンと)直接国境は接していないが、この地に利害関係がある」と強調した。複数のインドの外交筋によると、過去1年間でタリバンがアフガンの有力な政治勢力として復活し、ドーハで米国を仲介者とする協議が始まるとともに、インドの外交当局もタリバンとの接触に乗り出したという。

 

外交筋の1人は「われわれはすべての関係先と協議している」と述べたが、協議の詳細には触れなかった。インド国内では、米国さえタリバンと交渉を始めた段階でなおもインドがガニ政権に全面的に肩入れし、足を洗うのが遅れたとの批判が出ている。

 

それでも、中国への過度の依存を避けようとしているタリバンにとって、インドは経済的な関係を築く魅力的なプレーヤーになり得る、とこの関係筋は分析する。インドはアフガン34州の全てに開発プロジェクトを保有しており、そこには同国がカブールに建設した国会議事堂も入っている。

 


元ロイター記者のミラ・マクドナルド氏は、タリバンの政権掌握はインドにとって一歩後退だが、決して「ゲームオーバー」ではないと強調。「これは過去の再現にはならない。2001年9月11日の米同時多発攻撃の以前に比べれば、誰もがアフガンにおけるイスラム過激派を野放しにすることにずっと慎重になるだろう。さらに、相対的に考えれば今のインドはパキスタンより経済力ははるかに強い」と、インドが持つ優位性を描写する。タリバン幹部の1人はロイターに、貧困化しているアフガンに必要なのは米国、ロシアと並び、イランを含むこの地域の諸国からの支援だと語った。

 

以上の記事にコメントをつけない。結論は、中国一国でアフガンを動かす力がないということである。このことを強調したい。