ムシトリナデシコ
   

中国は、まさに「四面楚歌」に陥っている。対中輸出1位の豪州が、中国の度を外れて連発する経済制裁に対して、超大型の軍事同盟「AUKUS」で対抗してきたからだ。しかも、中国が最も苦手とする米英の攻撃型原潜技術を導入して、中国への逆襲態勢を固めた。

 

こうなると、中国は日本しかまともに話せる相手がいなくなる。中国は、その日本に対してまで尖閣諸島への侵攻作戦をちらつかせているのだ。こうなると、日本も「第二の豪州」になりかねない。中国は一段と、日本の動向が気に掛かるようになってきた。そこへ、自民党総裁選が重なったのである。

 


『ニューズウィーク 日本語版』(10月1日付)は、「岸田総裁誕生に対する中国の反応ー3Aを分析」と題する記事を掲載した。筆者は、遠藤誉氏である。

 

岸田総裁誕生に中国のメディアは大賑わい。中国共産党系の「環球網」は1日で10本近くも発信し、中央テレビ局CCTVも特集を組んだ。中には「岸田の背後には3Aがいる」という報道さえある。

 

(1)「中国は、なぜ日本の一政党の総裁選にここまで注目するのか。それは取りも直さず、米中覇権競争の中にあって、日本がどのような対中政策に出るかは、中国の今後の国際社会におけるパワーバランスに大きな影響を与えるからだ。特にアメリカにより対中制裁が成されている今、日本との技術提携や日本との交易は中国に多大なメリットをもたらす。さらに日米豪印4ヵ国枠組みQUAD(クワッド)や米英豪軍事同盟AUKUS(オーカス)などにより、アメリカは対中包囲網を形成しようと躍起になっている」

 

中国の命運を握るのは日本である。その日本を、尖閣諸島への侵攻をちらつかせて怒らせてきた。日本はいつでも、中国を軍事的に封じ込めるカギを持っている。この冷厳な事実を忘れてはいけないのだ。

 


(2)「来年は、日中国交正常化50周年記念に当たる。安倍元首相が国賓として中国に招かれた返礼として習近平国家主席を同じく国賓として日本に招く約束をしている。コロナの流行でペンディングになったままだが、それを来年には必ず果たしてもらわないと困ると習近平は思っているだろう。これら複雑な要因が絡み、日本の政権のゆくえが気になってならないものと判断される」

 

現状では、習氏の訪日計画は実現しまい。尖閣諸島へ中国海警船をはり付けている状況では、招請できる雰囲気でないのだ。

 

(3)「これら多くの情報は「見出し」を見ただけで、おおよそ何が書いてあるか想像がつくとは思うが、内容的に何を語っているのかに関して「見出し」以外の補足説明を若干行いたい

1)新内閣の外交政策は基本的には何も変わらない。日中関係がさらに悪化することはないだろう。

2)岸田は選挙期間中、中国関連の問題に強硬な態度で臨んだ。 公式Twitterアカウントで中国を攻撃し、「中国が権威主義的になっていること、日本は民主主義や人権などの基本的な価値を大切にする国であること」を宣言し、「台湾海峡の安定、香港の民主化、ウイグル人の人権などの問題に断固として取り組んでいく」と述べた。 また、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、それに関する政策を出す」と主張した」

 

1)では、岸田内閣の対中政策に変化がなく、さらなる悪化はないという予測である。腹の内は、悪化しないで欲しいという願いである。中国は豪州と敵対して厳しいブーメランを浴びた。その二の舞いになりたくないのだ。

 

しかし、米中関係が悪化すれば、日本は米国の同盟国として中国に対応しなければならないのだ。日中関係の悪化を避けたければ、中国は米中関係の改善に努力することである。

 

2)岸田氏は、総裁選中に公約をしている。首相就任とともに実行に移すはずだ。そうでなければ「公約不履行」になる。内閣に人権担当補佐官を置くと言明した。これは、中国の新疆ウイグル族弾圧問題を扱う。台湾海峡の安全化保障で、日米台が具体的な動きを見せる可能性もあろう。

 

(3)「(3しかし、これらは全て総裁選に勝つための方便であって、菅内閣でウイグル人権問題などに関するマグニツキー法は国会の議題にさえならなかった。菅内閣と基本的に変わらない岸田政権は、さらなる対中強硬策を取ることはないだろう。

総裁選の議論では、安保やエネルギー問題、年金などの社会保障問題が大きく取り上げられたが、実は誰でも知っているのは、国民の最大の関心事は「コロナにより崩壊しかけている日本経済を、どのようにして立て直し、かつコロナのリバウンドが起きないような対策ができるか」ということに尽きる」

 

3)は口約束の人気取り政策でなく、実行するであろう。直後に迫る衆院選を前に、人権担当補佐官を置かざるを得ないのだ。これは、日本が欧米と一体になって新疆ウイグル族問題に立ち向かう意思の表明である。

 

4)コロナ問題は、中国の都市封鎖と違い「ウイズ・コロナ」で乗り切れるメドがついた。10月1日からの緊急事態解除はそれを示している。日本は、9月の1ヶ月で感染者が10分の1へと急減したが、理由は二つである。ワクチン接種率の急上昇と「ワクチンパスポート」の採用である。10月に2回目接種率が7割に達し、「パスポート」が実行されれば、経済活動は平常化するのだ。心配ご無用である。

 


(5)「5)日本の最大の貿易国は中国だ。だから岸田は如何にして国民から批判されないようにしながら中国との安定的な関係を築けるかを模索するだろう。日中関係では「首脳同士の会話が必要だ」と、河野以外にも、岸田も言っている。

6)いま日本の新規コロナ感染者の数が減少傾向にあるので、コロナ対策が大きな争点になっていないが、もしコロナ防疫に成功せず、日本経済復興にも貢献できなかったとすれば自民党は来年夏の参議院選挙で国民の審判を受けるだろうから、対中強硬策などより、コロナ感染を抑えることと経済復興に成功することこそが、本当は最大の関心事のはずだ。そのためには中国は欠かせないパートナーとなる。

7)対中強硬策など、実際には強化しないので、心配には及ばない」

 


5)日中関係は、簡単に動かないだろう。日本は、クアッドの一員である。対中国政策の裏には、「日米豪印」4ヶ国の共同認識が存在する。そこから外れた対応は不可能である。日中首脳同士の話では、中国の尖閣諸島侵攻作戦に日本が、日米安保で対抗することを事前通告するくらいであろう。日本は、韓国のような負け犬みたいな真似をするはずがない。

 

6)下線で心配すべきは、逆に中国のコロナ対策だ。中国は、都市封鎖で封じ込めるという最も非効率方法であった。世界の潮流は、「ウイズ・コロナ」である。中国は、再び感染が広がったら鎖国状態に陥る。心配すべきは日本のことでなく、中国自体なのだ。お節介もほどほどにすべきである。

 

7)中国の出方次第では、日本は強硬策に出るだろう。米英豪の「AUKUS」へ加盟する道も残されている。仮に、日米英豪が最新鋭攻撃型原潜で中国海軍を取り囲んだらどうなるか。これまでの「戦狼外交」を根本から反省して、中国大陸へ軍事力を引き上げるべきなのだ。中国は、日本が対中強硬策など、実際には強化しないので、心配に及ばない」としている。本当は心から恐れている証拠である。