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中国が、国産旅客機の製造に乗出しているもののエンジンなど中核部品などの4割(企業ベース)は海外製(主として米国)という。残り6割も外資系企業と提携した国内企業の部品という。金額的な部品海外依存度は、7~8割に達していると見られる。

 

現状は、米中対立の隙間で生き残っている中国の国産旅客機だが、今後の情勢変化では部品供給が滞る懸念も残る。ここまで、外国企業に依存しながら製造している国内旅客機だが、米国で型式証明を取得できずにいる。国際市場への輸出に大きな障害だ。これが、精密工業の華である中国旅客機の限界である。

 

『日本経済新聞』(10月1日付)は、「中国製の旅客機、中核部品の4割が海外頼み」と題する記事を掲載した。

 

中国旅客機メーカー、中国商用飛機(COMAC)によるジェット機の国産化が進んでいる。米欧の大手に対抗する本格機種の試験が大詰めを迎えており、早ければ年内にも初号機を顧客へ引き渡す。ただ旅客機の核を担う部品やシステムは約4割を海外勢に依存する。米中対立などの政治リスクを抱えるなか、海外輸出もハードルが高くなっている。

 

(1)「中国国際航空宇宙博覧会(珠海エアショー)で9月28日、COMACが開いた発表会。販売促進の担当幹部は、開発試験中の小型旅客機「C919」について、上記のように胸を張った。「米ボーイングと欧州エアバスだけでは需要を満たせない。我々が新しい選択肢を提供することがエアライン(航空会社)の利益にもつながるはずだ」。珠海エアショーでは機内客室を原寸大で再現したモデルを披露し、関係者にアピールした」

 


C919は世界で最も売れ行きの良いボーイング「737」やエアバス「A320」と同サイズで、米欧が牙城を築く航空機産業に切り込むための戦略機種とされている。年内に関係認証を取得する流れが明らかになった。国内三大エアラインの一つの中国東方航空も3月、調達契約を正式に結んだ。
政府と大手航空の支持もあり、早ければ年内にも第1号機を納入するもよう。中国は過去、2025年までに主要航空路線で旅客機の国産化率を10%超に引き上げる目標を掲げたことがある。C919は国産化の期待を担う。

 

(2)「国産機のビジネスの前途には課題も見え隠れする。中航証券などの資料を分析すると、C919の中核サプライヤー39社のうち4割強が米国など海外勢だ。残る6割弱も一部には外資大手との合弁企業が含まれる。胴体や翼などは中国勢が供給するが、通信や飛行制御のシステム、エンジンなど旅客機の頭脳や心臓部は米欧のサプライヤーがずらりと並ぶ。会社数ベースのシェアは4割程度だが、金額ベースでは海外依存度は一段と高まるもよう。「国産機」と呼べども、海外頼みなのが実情だ」

 

国産機と呼ぶが、中核部品は海外製である。会社数ベースのシェアは4割程度だが、金額ベースでは海外依存度は一段と高まる。エンジン・燃料システム・通信や飛行制御システムなどは全て海外製だ。金額的にはむろん7~8割に及んでいるはず。前記部門に不具合が生じれば、重大事故に繋がるからだ。

 


(3)「特に国内での開発製造が難しいとされているのがエンジン。現在は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏企業の合弁会社、CFMインターナショナルが生産するエンジンを搭載する予定だ。将来的には軍用エンジンなどを手がける中国航空発動機の系列企業が開発する「CJ1000A」の採用も検討しているが、「2030年前後の市場投入になる」(浙商証券)などと、実用化にはまだ時間がかかるとする見方が大勢だ」

 

自動車のエンジンもまともに製造できない中国が、飛行機エンジンの国産化など夢のまた夢であろう。

 

(4)「CFM製エンジンに関しては米国のトランプ前政権が20年2月、中国への供給制限を検討していたことが明らかになった。その後トランプ氏自らが中国へ提供する意思を表明し、いったんは危機が去ったようにみえるが、スマートフォン生産における半導体同様、大きな政治リスクがあることがあらためて浮き彫りになった。事業拡大に向けたもう一つのハードルが、航空当局が機体の安全性を認証する「型式証明」だ。現在は米欧当局がデファクトスタンダード(事実上の標準)を握っており、多くの国が追随するかたちをとっている。中国の航空当局も独自に認証作業をしているが、諸外国への影響力は低く原則としては国内で商用飛行が可能になるだけだ。輸出によって量産規模を押し広げられず、産業全体の成長速度を高められない」

 

米中関係が一度険悪化すれば、中国の旅客機製造は不可能になる。精密工業が米国の水準に達していない証拠である。これにも関わらず、米国の覇権を狙うと言い出した。中国は、怖い物知らずの盲滅法なのだ。

 


(5)「そのため海外で通用する認証の取得は悲願だ。C919も当初は、欧州での認証の取得に動いていたことが分かっている。しかしその後、動静は聞こえなくなっている。それだけ技術的ハードルが高いということだが直近、中国にとっては別の逆風も吹きつつある。米欧で長年続いていた航空機産業を巡る摩擦の雪解けだ。今年6月に開いた米EU(欧州連合)首脳会議では航空機産業への補助金を巡る紛争を終結させることで合意した。航空宇宙、防衛分野で急速に力をつける中国への警戒を共通認識としたことが背景にある。中国にとっては米欧に吹く隙間風に乗じて認証を得たり、国境を越えた産業連携を強化したりするのが簡単ではない地合いになりつつある。当面は主に国内市場をあてに産業を育てるしかない」

 

中国旅客機は、英米の型式証明を取得できなければ、海外の空を飛ぶことはできない。いつまでも、中国国内のみの飛行に制限される。