中国は、昨年9月に習近平中国国家主席が「中国が新型コロナウイルス戦争で重大で戦略的な成果を上げた」として事実上新型コロナウイルス終息宣言した。今にしてみれば、大変なフライングであった。来年2~3月の北京冬季五輪を控えて、デルタ変異株が流行の兆しを見せているのだ。
中国製ワクチンは、デルタ変異株には効かないことで有名だ。インドネシアでは、多数の医師が中国製ワクチンを2回接種後に、デルタ変異株に感染して多数の死亡者を出した。このことから、「中国製ワクチンは効かない」という評判が世界中へ知れ渡る事態になった。WHO(世界保健機関)でも、中国製ワクチン接種者は、欧米製ワクチンを追加接種するよう通達を出す騒ぎである。
中国は現在、欧米製ワクチンの接種を認めていない。欧米が、中国製ワクチンを承認していない結果だ。この中国による「対等主義」が、とんだ災いをもたらそうとしている。中国で現在、感染拡大の兆候を見せ始めたデルタ変異株に対して、有効な欧米製ワクチンを承認していないのだ。
そこで、習近平氏は例によって強気を装いつつ、G20において次のような提案をした。
(1)「世界保健機関(WHO)のワクチン緊急使用リストを根拠に『ワクチンの相互承認を推進する』と語った。米欧が中国製ワクチンを承認することを条件に、米欧のワクチンの中国内での使用を容認する考えを示したとみられる。今年だけで20億回分以上のワクチンを海外に提供する計画も改めて示した」(『日本経済新聞 電子版』10月30日付)
欧米が、中国製ワクチンを承認すれば、中国も欧米製ワクチンを承認するというのだ。一見、強気の提案だが、中国でぜひ欧米製ワクチンを使用したいというカムフラージュである。欧米は、中国製ワクチンをこれまでも承認しなかったのだから、いまさら承認する必要性がないのだ。現状において中国は、欧米製ワクチン接種が不可能である。したがって、得意のロックダウンでしのぐしか方法はあるまい。メンツに拘らず、欧米製ワクチンを承認して、感染を防ぐ方がベターなのだ。
習氏が、欧米製と中国製のワクチン同時承認を狙う裏には、これによって中国製が世界的ワクチンであることのお墨付きを得たいのである。これによって、中国製ワクチンの輸出テコ入れを狙っているのだ。
『ブルームバーグ』(9月31日付)は、「中国ワクチン輸出減少、『mRNA』へのシフト広がる-新型コロナ」と題する記事を掲載した。
新型コロナウイルスワクチンの接種が始まったばかりのころ、無数の命を救ったのは中国製ワクチンだ。
(2)「中国がアジアと中南米、中東で接種プログラムを始める一方で、比較的豊かな国々は米国のファイザーやモデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの確保に動いていた。だが今では、かつて科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)あるいは中国医薬集団(シノファーム)の不活化ワクチンに頼っていた多く国が欧米製のワクチンを選択するようになっている。デルタ変異株に対する中国製の効果を巡る懸念が広がり、欧米勢によるmRNAワクチン囲い込みも緩んでいるためだ」
有効性から見て、中国製ワクチンは欧米製に敵わないという現実がある。中国製ワクチンしかない段階では、購入したが欧米製ワクチンが登場して、中国製ワクチンの役割が終わったのだ。
(3)「こうした変化はすでに中国の通関統計に示されているようだ。中国のヒト用ワクチン輸出は2020年12月から着実に増えていたものの、今年8月は19億6000万ドル(約2190億円)と、7月の24億8000万ドルから21%急減した。香港城市大学のニコラス・トーマス准教授は、ワクチン接種が初めて可能になったときは「人々は基本的に手に入るワクチンの接種を受けた」が、「接種が進むにつれ、医療従事者だけでなく一般の人々もワクチン間の違いについて多くを知るようになった」と指摘。「人々は予防という点で全てのワクチンが同じではないことに気付いた」と述べた」
下線のように、中国製ワクチン輸出高は8月に前月比で21%もの急減である。中国当局が、輸出市場拡大の手段として欧米製ワクチンと同等の扱いを求めていることは明らかだ。習氏は、欧米製ワクチンの国内使用と中国製ワクチンの輸出テコ入れの両面を狙ったのだ。
(4)「シノバックはブルームバーグへの書面による回答で、同社のワクチン「コロナバック」は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)において入院や集中治療、死亡を効果的に防いできたとコメント。シノバックの広報担当者は、一部の国は入院リスクの高い高齢者にまず接種し、後に比較的若い人々が別のワクチンの接種を受けたと説明し、「このことはコロナバックの有効性評価に加味すべきだ」と主張した。シノバックによると、タイなど多くの国が「人口に応じ接種回数を最大化するため複数のサプライヤーからワクチンを購入」している」
中国製ワクチンが、これまで役割を果たしたことは事実だが、初期の「火消し役」であったことも明らか。それ以上ではない。
(5)「中国製ワクチンから距離を置き始めているか、欧米製のワクチンで「ブースター」と呼ばれる追加接種を行う国には、シンガポールやトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)も含まれる。香港では、保健当局が欧米製ワクチンをブースターとして用いた場合、中国製ワクチンの効果が上がるか検証中だ」
欧米ワクチンが、「ブースター」として選ばれている。中国製ワクチンの役割は終わった。


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