昨日の総選挙は、事前の予想と大きく異なる現象が起った。与党(自民党・公明党)が、善戦して大きな議席減にならなかったこと。野党第一党の立憲民主党が、議席を大きく減らしたことである。小選挙区で、野党統一候補を出して自民党候補と対決する構図が、不発に終わったのである。
野党が政権につけば、共産党は閣外協力するとしてきた。だが、共産党の安保政策は、日米安保条約を認めないというものだけに、現在の米中対立激化を考える時、有権者には不安となったのであろう。
今回の総選挙は、安全保障が底流にあった。日本維新の会が、大きく議席を伸した裏には、共産党とは対照的に「硬派」であったことが、安心感を強めたのかも知れない。
『日本経済新聞』(11月1日付)は、「野党、戦略練り直し 5党 210超で候補者一本化「接戦区」多くで競り負け」と題する記事を掲載した。
立憲民主党や共産党など小選挙区で統一候補を立てた5野党は公示前と比べ、合計の議席を減らした。候補者の一本化で政権批判票の集約をめざしたが接戦区の多くで与党候補に競り負けた。来夏の参院選に向け戦略の練り直しを余儀なくされる。
(1)「289ある小選挙区のうち7割を超える213の選挙区で立民、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の5党が候補者を一本化した。そのうち野党候補が勝った割合は3割を切った。共産との連携強化によって票を上積みできた選挙区もあれば、それによって一部の政権批判票が立民から他党に流れた可能性も指摘されている。
前回総選挙の与野党別の得票数だけ見ると、野党が統一候補を出せば、自民党に競り勝てるという大前提があった。今回の総選挙では、この前提が崩れたのである。共産党という、日本の政党の中で「異質」の主張が、野党統一候補擁立でハレーションを起したと見られる。
現在の国際情勢で、日米安保を否定する共産党と共闘する野党統一候補は、かなり苦しい立場に追込まれたはずだ。これは、選挙戦略で与党から足を掬われ兼ねない点であろう。
(2)「立民の枝野幸男代表は31日の記者会見で「一票一票積み重ねていく足腰が弱い。ここを強くしないと政権にたどり着くことはできないと改めて痛感している」と語った。野党共闘についてはNHK番組で「一定の効果はあった」と強調した。日本テレビ番組では代表を退く意思があるかを問われ「ない」と明言した。「目先を変えてはまた同じ失敗を繰り返すと確信している」と述べた。共産党の志位和夫委員長も31日の記者会見で「1回だけではなく2回、3回とチャレンジしていきたい」と話した」
枝野氏の主張にも一理ある。野党の足腰が弱いことは事実だ。だが、立憲民主党内では次のような不満が高まっている。
「枝野氏は1日午前、国会内で福山幹事長と会談した。福山氏は会談後、記者団に「執行部として、結果については責任がある」と述べた。自身の対応については「腹を決めている」と語った。福山氏は、2日に執行役員会を開き、今後の対応を協議することも明らかにした。党内では、「議席減はあり得ない結果だ。枝野、福山両氏が続投することに正当性はない」(ベテラン)などとして、執行部に対する不満の声が高まっている」(『読売新聞 電信版』(11月1日付)
(3)「立民の政党支持率は選挙直前まで10%前後とふるわなかった。そこで野党として候補者を絞り込んで議席増を狙った。実質的に与野党が一騎打ちとなる選挙区は全体のおよそ半数にのぼった。なかでも共産は小選挙区の候補者を前回衆院選のおよそ半分の105人に絞り込んだ。一本化した選挙区のうち立民が共産に譲った選挙区はあるものの、共産が候補を取り下げた例がほとんどだ」
最初の野党統一候補擁立論者は、小沢一郎氏である。小沢氏は、古巣の自民党への敵愾心が人一倍強く、共産党とも手を結ぶと広言し、そういうパフォーマンスもしてきた。だが、保守的志向の強い有権者にとって、日本人の価値観へ大きく挑戦する共産党に対して、必ずしも好意的に見る者ばかりでなかった。そういう、微妙な心のアヤを読めなかった小沢氏に見落としはなかったか。
(4)「共産支持層は一選挙区ごとに数万票あるとされ、多くが立民の候補に回ったとみられる。立民は今回の衆院選を前に市民団体を介して共産、れいわ、社民と共通政策を結んだ。国民とも連合を通じて政策協定で合意した。このとき立民が政権交代時には共産から「限定的な閣外からの協力」を受けると合意したことを巡っては反発も招いた。共産が閣外とはいえ政権に協力する方針を示したのは初めてで民主党政権時も共産は野党だった。共産は自衛隊を違憲と主張し、日米安全保障条約の「廃棄」を訴えるなど他の野党と政策的な隔たりが大きい」
下線部は、重要な点を指摘している。共産党の安保論は、他の野党と異なっている。政党として、外交・安保は重要な主張になる。これを曖昧にしたまま、「選挙で勝てば良い」という小沢流主張は、理解されにくいであろう。まさしく、「野合」であるからだ。
(5)「立民、国民の支持団体である連合内からは懸念する声が出ていた。枝野氏は内政を中心とした政策協定の範囲内で共産が協力することや法案の事前審査に共産は関わらないことなどを説明し理解を求めた。与党は選挙戦で「野合だ」と批判し、麻生太郎副総裁ら自民幹部もこぞって「立憲共産党」と皮肉った。終盤戦にかけて立民が「政権交代」の訴えを強めるほど、与党側も立民が共産と連携することへの懸念を強調し始めていた」
労働組合の連合は、今回の共産党を含む統一候補者選出に強い疑念を示した。トヨタ労組は、この統一候補から離脱したほどである。日本の労働組合総本山が、こうした決定をしていたことを甘く見過ぎたのではないか。立憲民主党に突付けられた課題は大きいのだ。


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