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米英豪は9月に、軍事同盟「AUKUS」を結んだ。三国同盟である。歴史上、三国同盟と言えば次の例が思い出される。いずれも「きな臭い」ものである。

 

1)ドイツ・オーストリア・イタリア三国間に結ばれた秘密軍事同盟(1882年成立)。フランスへ対抗するためであった。イタリアは1915年、第一次世界大戦中にイギリスやフランスへ接近して破棄。

2)日本・ドイツ・イタリア三国間に結ばれた軍事同盟(1946年成立)。第二次世界大戦への引き金になった。

 

これら二例は、いずれも世界情勢が緊迫化している中で結ばれた。今回のAUKUSはどうであったか。米英豪の仮想敵国が中国であることは明白である。ただ、先に挙げた二例は侵略目的である。AUKUSは、防衛という全く逆の目的である点に注意しなければならない。中国の台湾侵攻を諦めさせるには、AUKUSという世界最強の潜水艦部隊をもって対抗することを予告したのである。

 


『中央日報』(11月4日付)は、「米国を助けてこそ紛争が減って安全になると判断したオーストラリア」と題するコラムを掲載した。筆者は、イ・ベクスン国防大学招聘教授、元オーストラリア大使である。

 

米国・英国・オーストラリアの3国首脳は今年9月にオンライン首脳会議を開催し、会議末に3国軍事同盟である「オーカス(AUKUS)」を発足させると発表した。

 

(1)「オーカス同盟がどの国を狙っているかは問うまでもない。オーストラリアがなぜこのような電撃的な行動に出たのかを知るために時計の針を少し戻して見てみる必要がある。オーストラリアと中国の葛藤は最近になってさらに激化しているが、その前兆は2017年末オーストラリアが「外国干渉禁止法」を立法するころから始まった。この法はオーストラリアで中国の影響力がこれ以上大きくなることを遮断するのが目的だった」

 

中国は、豪州へスパイなどを送り込み政治的影響力を高める露骨な動きが露見した。

 


(2)「最近、数年間の中国の動向を見守っていたオーストラリアは、戦略的決断を下したとみられる。中国の進む先が、自由民主国家であるオーストラリアのアイデンティティとあまりにもかけ離れているため、2014年に締結した中国との戦略的協力パートナー関係をこれ以上維持することはできないという結論に達した。中国と距離を置くといっても衰退しつつある米国とはどのような関係を結ぶかという質問は依然として残る」

 

豪州は、安全保障で中国と距離を置く決意をしたが、米国へ全面依存することが現実的かを検討した。

 

(3)「戦略的な熟考の末、オーストラリアは衰退する米国一国で同盟国の安全保障を守っていくのは難しいと考えた。それならばということで、米国を助けて共に国際秩序を維持することが自国に有利だという判断を下したとみられる。米中の覇権競争が激しさを増す中で米国を助ければオーストラリアが米中紛争に巻き込まれるリスクが高まる点もよく認識している。しかし結局、米国一国で中国から守ってもらうように任せるよりは、同盟国が米国を助けるときに紛争の発生する確率が減少して自国の国益に符合するという結論に達した

このパラグラフは重要である。豪州は、米国一国に安全保障を依存するより、豪州自らも米国の同盟国として対等の立場で協力して戦うことを選んだ。

 


(4)「変化する中国を見て、オーストラリアは米国を助ければ中国から報復される可能性も予想していた。だが、中国の経済報復もオーストラリアの主権を守って同盟を維持するための費用とみなすことに対して、オーストラリア内部では論争がほぼない。オーストラリアは、同盟関係に「タダ乗りはない」という事実をよく知っているため、同盟に伴う費用も覚悟している。それが、同盟から放棄されるよりはましだと判断しているためだ。オーストラリアは「同盟の放棄」と「同盟の関与」の危険性の間で戦略的計算を綿密に行ったとみられる」

 

同盟に、「タダ乗りはない」。そうであれば、同盟に伴うコストを覚悟して、同盟国として共に戦う決意を示す。こうすれば、同盟から捨てられるという「同盟の放棄」はない。「同盟の関与」によって同盟を共に担保することだ。豪州は、こういう決断を下した。

 

(5)「オーストラリアは、このような国際秩序を維持していく努力を一人でするより、他の中堅国と連携するほうが望ましいと考えた。そのため力を合わせる対象国として、日本・インド・韓国・インドネシア4カ国を2017年外交白書に摘示した。その後、韓国との協力が期待に沿えなかったためかオーストラリアはベトナムを戦略的協力対象国に追加して関係を強化している。オーストラリアとベトナムは2013年習近平国家主席就任以降、中国が攻勢的対外政策を展開すると警戒心を高めて、中国からもたらされる危険を減らすために「カウンターバランシング(釣り合いを取る)政策」で対応している」

 

韓国は、豪州の呼びかけ(「同盟の関与」)に応じなかった。中国への「二股外交」が邪魔している。現在は、日本、インド、インドネシア、ベトナムの4ヶ国が豪州と連携を強化した。すでに、日本、インドとは、「クアッド」関係国として深い協力関係を結んでいる。



(6)「オーストラリアは最近、米英とオーカス同盟を締結することによって中国にさらなる一撃を加えた。第2次世界大戦以降、米国中心主義の時代に米国は「ハブ・アンド・スポーク体制」という二国間同盟を構築してきたが、オーカス同盟は過去にはあまり見られなかった3国同盟体制なので目を引く。外交史を振り返ってみると3国同盟が登場する時点には国際情勢が不安で戦争の影がちらついていたことから、そのような側面で懸念が先立つ。そしてこの同盟に参加した3国はすべてアングロサクソン国家であり海洋国家だ。アイデンティティがほぼ同じ3カ国が一つになるということは本当に信頼性のある国だけで手を握る流れが優勢なことを予告する」

「AUKUS」は、アングロサクソン国家として中国の侵攻作戦を食止める決意を表明した。三国同盟は、開戦でなく戦争抑止という新たな役割を担っている。韓国は、中国の本音部分を嗅ぎ取り、開戦抑止へ向けて取り組むべきである。中国の鼻息をうかがう惨めな姿から脱却することだ。