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中国の振る舞いは、200年前の清国を彷彿とさせる暴挙である。フィリピンのEEZ内の座礁船へ食糧運搬する民間船へ、中国海軍が自国領海を理由に放水銃を浴びせるという「強盗行為」を行なっている。米国からも強い抗議を受けた件だ。米比相互防衛条約を発動させるとまで怒らせたのである。

 

『ニューズウィーク 日本語版』(11月28日付)は、「中国、南シナ海で横暴続々とフィリピンのEEZ内座礁船の撤去を要求」と題する記事を掲載した。筆者は、大塚智彦である。

 

中国とフィリピンの間で領有権を巡る争いが続く南シナ海で、フィリピンが拠点として実効支配し海軍兵士が駐留している南沙諸島(スプラトリー諸島)の岩礁にある座礁船を中国側が撤去するように求めていることが明らかになった。

 


(1)「フィリピンの排他的経済水域(EEZ)にある同拠点を巡って、11月16日に食料などの物資を座礁船に補給するフィリピンの民間船舶が、中国公船により進路妨害や放水銃による放水を受けるなどの妨害を受けた。フィリピン政府が、抗議するとともにマニラにある中国領事館に抗議の活動家や漁民が押し寄せるなど両国関係が緊張する事態となっていた。中国外交部の趙立堅報道官は11月24日、南沙諸島のアユンギン礁(中国名・仁愛礁)にフィリピンが海軍艦艇を座礁させてそこに兵士が常駐し続けて「実効支配」の状況を作り出していることに不快感を示し、同座礁船の撤去を求めた」

 

中国は、不法占拠している南シナ海を自国領海と宣言し、正規のフィリピンEEZ内での行為を不法として迫害する「強盗行為」を行なっている。こういう200年前の感覚である中国が、アジア覇権を握ったらどうなるか。世も末というのが実感だろう。ともかく、野蛮国である。

 


(2)「アユンギン礁は、中国が南シナ海のほぼ全域を自国の海洋権益が及ぶ海域と一方的に主張している「九段線」に基づき領有権を主張している。これに対し、フィリピンはEEZ内の岩礁アユンギン礁の浅瀬に1999年海軍の揚陸艦だった「シエラマドレ」を意図的に座礁。兵士を常駐させることで「領有権」を国際社会に主張し続けているのだ。アユンギン礁の座礁船に常駐するフィリピン海軍兵士に定期的に食料などを補給する船舶がフィリピン本土との間を定期的に往復している。ところが11月16日にアユンギン礁に向かっていたフィリピンの民間船舶2隻が中国海警局の公船3隻に進路を妨害され、放水を受ける事案が発生した。民間船舶は放水により一部が損傷したためこの時はアユンギン礁への補給を断念して本土に戻ったという」

 

この放水銃事件で、中国は米国防相から強い警告を受けることになった。11月15日(現地時間)の米中オンライン首脳会談と同時に起こった事件だが、米国は中国に対して安易な妥協をしないというシグなるを発した形だ。



(3)「こうした中国側の「威嚇妨害」に対して、フィリピン政府は外交ルートを通じて中国側に抗議するとともにドゥテルテ大統領は22日に嫌悪感と重大な懸念を表明した。しかし、中国側は「自国の管轄圏で法を執行しただけである」としてその行動を正当化。これを受けてテオドロ・ロクシン外相は「中国はこの海域で自国の法を執行する権利はなく、今回の事態は違法行為である。中国によるこうした自制心の欠如は2国間関係を脅かすものである」と述べて中国を厳しく批判した。さらにマニラ首都圏マカティにある中国領事部が入った建物の前では11月24日に活動家や漁民による抗議活動が繰り広げられ、フィリピン国民の間で対中感情が悪化していることが明らかになった」

 

中国は、フィリピンを舐めきっている。ガツンと一発やらないから、好き勝手を許すことになったのだ。日本が、中国に対して毅然とした姿勢を取り続けること。それが、中国を対日姿勢で慎重にさせるコツである。

 

(4)「16日の中国公船による「放水事件」について中国外交部の趙報道官は、「フィリピンの船舶2隻が中国の同意を得ずに南沙諸島に侵入した」とアユンギン礁があくまで自国の海洋権益が及ぶ範囲との姿勢を強調していた。フィリピンにしてみれば自国のEEZ内のアユンギン礁に接近するのに「中国側の同意」など不必要という立場であり、両国の主張は全く相容れない状況がこれまで続いている。そうした状況のなか24日に中国は「座礁船の撤去」を求めるというさらなる要求を持ち出して事態をエスカレートさせているのだ」

 

中国は、さらに笠に着た要求を出している。フィリピンEEZ内の座礁船を撤去せよとエスカレートさせているのだ。こういう中国の行動を見ていると、絶対に許してはいけない相手であることを強く認識させられる。

 


(5)「中国は、1999年のフィリピンによる座礁船での常駐開始後も何度か補給船への執拗な追尾や妨害行為を行っているほか、2021年3月以降は南沙諸島のパグアサ島周辺やユニオンバンクと呼ばれる冠状サンゴ礁周辺海域に中国漁船200隻以上が長期間に渡って停泊を続けるなどの「示威行動」も確認されている。こうした中国の動きの活発化には、2022年5月に予定されているフィリピンの大統領選という政治的背景も関係しているのではないかとの観測がでている

 

下線部は、理解しにくい点である。なぜ、中国はフィリピン大統領選前に圧力をかけるのか。経済援助を増やして中国に親和的政権樹立を目指すならば理解可能だ。逆に、フィリピン国民から嫌われることをすれば、野党候補を有利にさせるはずである。

 

あるいは、中国の意に沿わぬ政権ができれば、もっと酷いことになると予告しているのか。となれば、台湾への圧力と同じスタイルである。いずれにしても、200年前に通用した野蛮外交の踏襲である。習近平氏は、この程度のことしか思いつかぬとすれば、米国への太刀打ちは不可能だ。へたくそな外交である。