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「大国を治むるは、小鮮を烹るがごとし」という。小魚を煮るときは型崩れしないように弱火でじっくりと。大国の統治も料理と同じだと老子は説いたのである。現代風に言えば、小魚である「リトアニア」が、台湾との国交を決めて中国が振り回されているのだ。中国は、リトアニアへ経済制裁したくても、リトアニアの対中国輸出は全体の1%に過ぎない。まさに、「箸にも棒にもかからない」状態である。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「中国、対リトアニア『制裁』で苦慮、欧州への影響拡大懸念か」と題する記事を掲載した。

 

中国が、台湾と急接近する欧州の小国リトアニアへの対応に苦慮している。同国で台湾の代表機関が開設されたのに反発し、中国は外交関係を格下げしたものの、断交などの踏み込んだ措置は見送った。背景には、リトアニアに追随する動きが欧州で広がることへの警戒がある。中国による対立国への経済的な圧力の限界も浮き彫りになっている。

 

(1)「中国外務省の趙立堅副報道局長は11月下旬の記者会見で、「あしき前例をつくった。代償を払わなければならない」とリトアニアに警告した。中国が激怒した直接の原因は、11月に台湾がリトアニアに開いた事実上の大使館となる「台湾代表処」にある。欧州に置く代表機関で初めて名称に「台北」ではなく「台湾」の採用を認め、台湾を不可分の領土とする中国が駐リトアニア大使の召還を8月に発表するなどして反対していた」

 

中国は、「戦狼外交」で他国を脅してきたが、リトアニアの方が一枚上手である。リトアニアは、中国と「一つの中国」で外交関係を結んできたが、新たに台湾と国交を結んで、「一つの中国」を反古にしたのだ。

 

リトアニアにも言分がある。台湾は民主主義国であるが、中国から圧迫されて気の毒な立ち場である。かつて、リトアニアは旧ソ連の支配下で辛酸をなめさせられた。台湾へ同情するとしている。だが、リトアニアの目的はこれだけでない。台湾から半導体企業を誘致したいのだ。具体的に、「商談」を始める雰囲気になっている。

 

(2)「中国による報復措置は、現段階では政治的なメッセージの意味合いが大きい。リトアニアとの外交関係を格下げし、大使を送らず代理大使にすると11月に決めた。中国共産党系メディアの環球時報が可能性を指摘していた断交には踏み切らなかった。リトアニアへの圧力を巡る混乱もうかがえる。11月に領事業務の一時停止を発表した在リトアニア中国大使館は、ウェブサイトに載せた発表を公開後まもなく削除した。8月にもリトアニアと結ぶ貨物列車の運行を中国が一時停止すると欧州メディアが報じた後で、中国の鉄道運行会社が環球時報などへのコメントで打ち消した経緯がある」

 

「大国」中国は、「小国」リトアニアを制裁しても、EU(欧州連合)から強い反発を受けるリスクが大きいのだ。こうなると、中国は打つ手がない。EUは、人権擁護で結束している。中国は、リトアニア制裁で大火傷になりかねないのだ。

 

(3)「背景には、欧州との対立が先鋭化するのは避けたい中国の考えがある。欧州連合(EU)は人権問題で中国を非難しつつも、中国と経済関係が深いドイツのメルケル首相が対中外交をけん引してきた。同氏の退任でEU内の力のバランスが変わりかねず、中国は「欧州との関係を全体的に安定させる必要がある」(北京の国際関係学者)。EU加盟国のリトアニアへの報復を小出しにしながら、ほかの国々の反応を見極めているとみられる」

 

前述の通り、リトアニアは台湾から半導体企業の誘致で前向きの回答をえている。EU全体も、半導体ビジネスを盛り立てたいところだけに、心情的にも台湾へ傾斜している。こういう状況下で、中国がリトアニアへ報復すれば、大きなブーメランを浴びることは必至だ。

 

(4)「リトアニアと台湾は、バイデン米政権が9~10日に開く「民主主義サミット」にも招待された。この時期のリトアニアへの制裁は、参加国の結束を強めてしまうとの懸念も中国にはありそうだ。リトアニアは強気の姿勢を崩さない。11月末には同国を中心とするバルト3国の議員団が訪台して台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談し、対中国を念頭に関係強化で一致した」

 

リトアニアは台湾と並んで、12月9~10の米国主宰の「民主主義サミット」へ招待されている。これは、リトアニアにとって米国の支援を受けられる資格を得たようなもの。中国は、ますます迂闊に手を出せなくなっているのだ。

 


(5)「リトアニアでは2020年12月に人権擁護などを重視する連立政権が発足した。旧ソ連による武力併合を経て1990年に独立回復を宣言(91年にソ連が承認)した歴史を有し、強権国からの圧力への警戒が強い。輸出額に占める中国向けの割合が20年に約1%と経済の中国依存が低く、「失うものがほとんどない」(米政治専門サイトのポリティコ)点も厳しい対中姿勢を裏打ちする。3日には少なくとも同国の5社の製品が中国の税関を通らなくなっていることが明らかになったが、大きな影響はないとみられる」

 

リトアニアは、ソ連崩壊直前の1991年2月にソ連から独立した。それだけに、自由への希求は極めて強い国家である。中国から威嚇されても、平然と受け流す強靱さを持っている。韓国に見倣わせたいほどである。